偽りの神域:心臓を砕く四人の足跡
「……アレス、リナ。出発だ。標的は『聖騎士の国』、奴らより先にその『心臓』とやらを拝んでやる」
俺は二人を抱え、爆音を置き去りにするほどの速度で北へと飛んだ。雲を切り裂き、国境の峻険な山脈を越えた先――そこには白銀の装甲を纏った騎士たちが守護する、質実剛健な宗教国家が広がっていた。
1. 聖騎士の国への潜入
俺たちは都から離れた森に降り立ち、認識阻害をかけたまま城下町へと足を踏み入れた。だが、そこで奇妙な光景に出くわした。
「……あ、あの! 離してください! 私はただ、この街の結界の歪みを指摘しただけで……!」
教会の兵士たちに囲まれ、必死に抗弁している一人の女がいた。古びた、しかし高度な魔力回路が刺繍された魔導師のローブを纏い、片手にはボロボロの古文書を抱えている。
「黙れ、異端の魔女め! 聖なる結界にケチをつけるとは、黒幕の回し者に違いなかろう!」
「ツカサ様、あの子……悪い人には見えません。それに、魔力の質がすごく澄んでいます」 リナが不安げに俺の袖を引く。
「……アレス、やれ。掃除のついでだ」 「了解! ちょうど肩が凝ってたのよ!」
アレスが突風と共に乱入し、兵士たちの槍をウォーハンマーでまとめて叩き折った。俺は「重力波」で追っ手を足止めし、呆然としている女魔導師の腕を掴んで路地裏へ引き込んだ。
2. 新たな同行者:魔女セレン
「助かった……のかしら? でも、あなたたちもかなり『異常』な魔力を持ってるわね」
女はセレンと名乗った。彼女はこの国に代々伝わる「古代魔導」の継承者だが、その知識が「神の奇跡」を否定するものとして、教会から追放されていたのだという。
セレンの知識: 彼女は街の地下に眠る「心臓」の正体が、古代の魔力増幅炉であることを知っていた。
「黒い法衣の連中が地下に潜り込んだのを見たわ。今の騎士団じゃあいつらには勝てない。……私を地下へ連れて行きなさい。案内してあげる」
これで、185cmの俺、相棒のアレス、見習い神官のリナ、そして知識担当の魔女セレン。奇妙な四人組が完成した。
3. 地下深くの「心臓」へ
セレンの案内で、俺たちは大聖堂の地下、迷宮のように入り組んだ古代遺跡へと侵入した。
「……ツカサ、聞こえる? ずっと奥の方から、不気味な鼓動が響いてくるわ」 アレスが警戒して武器を構える。
「ああ。リナ、感覚強化を維持しろ。セレン、術式の解析は任せる。……奴らはすぐそこにいる」
迷宮の最深部、巨大な歯車と魔力ラインが脈打つ空間。そこには、すでに「黒い法衣」の集団が、脈動する機械の心臓に「石碑」を差し込もうとしていた。
「……話し合いの時間は終わりだ。一気に片付けるぞ」
俺は185cmの巨躯を極限まで沈め、全身の細胞に魔力を叩き込んだ。
1. 電撃戦:刹那の断罪
「アクセル・フルスロットル」
世界が静止した。黒い法衣の連中が「石碑」を心臓の挿入口へ触れさせる、その数ミリ手前。俺は一歩でその懐を奪い、重メイスを水平に一閃させた。
「(一人……二人……五人)」
物理法則を無視した超高速の旋回。法衣の男たちの首が、何が起きたか理解する間もなく空中に舞う。石碑が床に転がる音すら、俺の加速した聴覚にはスローモーションに聞こえた。
2. 術式上書き:理論と聖性の融合
「セレン、リナ! 今だ、術式を書き換えろ!」
俺の声で「停止した時間」から復帰した二人が動く。 「解析完了! 術式構成、第13層から第28層をバイパス、私の魔力で上書きするわ!」 セレンが古文書を広げ、幾何学的な数式を空間に投影する。
「汚れた意図を、清らかな光で塗り潰します……! 『グランド・ピュリフィケーション』!」 リナが最大出力の浄化を流し込む。敵の残した「闇の起動コード」が、セレンの論理とリナの聖性によって、俺たちが制御可能な「安全装置」へと塗り替えられていく。
3. 心臓の破壊:未練の断絶
「……だが、こんな火種を残しておけば、また同じことが繰り返されるだけだ」
上書きが完了し、心臓の鼓動が安定したのを見計らって、俺はアレスに合図した。 「アレス、最大出力だ。この『心臓』ごと、古代の遺物を歴史から消去する」
「了解! ……あんたの無茶には慣れっこよ! 『メテオ・ストライク』!」
アレスが跳躍し、全魔力を込めたウォーハンマーを心臓の中央へと叩きつけた。同時に俺は、周辺の空間を「重力崩壊」で内側へと押し潰す。
ドォォォォン!!
古代の機械心臓が、耳を貫く轟音と共に結晶化して砕け散った。供給源を失った地下遺跡が、地鳴りを立てて崩落し始める。
俺は崩れゆく天井を左手で「重力固定」して支え、右手でセレンとリナを抱え上げた。 「アレス、出口を作るぞ! 突き破れ!」
「任せなさいッ!!」
アレスの一撃が天井を粉砕し、俺たちは崩落する大聖堂の地下から、月の光が降り注ぐ地上へと脱出した。
「……はぁ、はぁ……。なんて無茶をするのよ、あなたたちは……。でも、これで巨神兵器の再起動は阻止できたわね」 セレンが眼鏡を直しながら、呆れたように笑う。
だが、俺が「アイテムボックス」から取り出した合体石碑は、まだ不気味に熱を持ち、さらなる「北」を指して震えていた。
「……いや、まだ終わっていない。心臓を壊しても、奴らの『王』とやらが眠る本体が残っている」
「……チッ、騎士団のお出ましだ。アレス、リナ、セレン。俺の背後にいろ」
崩落した大聖堂の残骸の向こうから、白銀の甲冑を鳴らし、数百の聖騎士たちが松明を掲げて押し寄せてくる。その先頭には、一際巨大な魔力を放つ聖騎士団長が剣を抜いて立っていた。
「大聖堂を破壊し、国の『心臓』を冒涜した大罪人どもめ! 全員捕らえよ、抵抗するなら殺しても構わん!」
「ツカサ、どうする? 全員叩き伏せて強行突破する?」 アレスがウォーハンマーを握り直し、好戦的な笑みを浮かべる。
「待って、今は無駄な争いをしている場合じゃないわ! 私の解析によれば、北の監獄の『王』はもう目覚めかけている。ここで足止めを食らったら終わりよ!」 セレンが叫ぶ。
1. 聖騎士団との対峙:圧倒的威圧
俺は一歩前へ出た。185cmの巨躯から、これまで抑えていた魔力を一気に解放する。空気が物理的な重圧となって騎士たちを襲い、最前列の馬たちが恐怖に嘶いて後退した。
「……目を開けてよく見ろ。お前たちが守っていた『心臓』は、すでに黒い法衣の連中に侵されていた。俺たちが壊さなければ、今頃この国は影に呑まれて全滅していたはずだ」
「くっ……何をデタラメを! 構わん、突撃せよ!」
騎士団長の号令と共に騎士たちが動こうとした瞬間、俺は「重力魔法」を地面に叩き込んだ。彼らの足元の土が瞬時に隆起し、巨大な壁となって進路を塞ぐ。
「……追ってくるなら容赦はしない。リナ、セレン、アレス! 飛ぶぞ!」
2. 休息と補給:空上の作戦会議
俺たちは騎士たちの罵声を引き裂き、一気に夜空へと舞い上がった。北へ向かう雲の上、俺は「土魔法」で浮遊する小さな足場を作り、束の間の休息を取ることにした。
「セレン、解析を頼む。この石碑が指し示す『北の監獄』……そこにある『王』の正体は何だ?」
セレンは手に入れた石碑の拓本と、自身が持つ古文書を照らし合わせ、震える指で魔法の図式を空中に描いた。
「……分かったわ。あれはただの兵器じゃない。数千年前、地上の魔力を吸い尽くして枯渇させようとした『魔力捕食体』……。もし完全に目覚めれば、この大陸全土の魔力が吸い取られ、魔法も、命も、すべてが干死ぬことになる」
「……リナ、お前はもう『ただの神官』じゃない。その浄化の力、最後にはあれを止める鍵になるはずだ。休めるうちに休んでおけ」
「はい……! ツカサ様、私、逃げません。皆さんと一緒に、最後まで戦います!」
アイテムボックスから取り出したドラゴンの肉を焼き、四人で最後の食事を摂る。静かな夜空だが、北の空だけは不気味な紫色の雷鳴が轟いていた。
3. 最終決戦へ:忘却の監獄へ乗り込む
「……準備はいいか。ここから先は、前世の地獄すら生温く感じる戦いになるぞ」
夜明けと共に、俺たちは大陸の最北端、万年雪が降り積もる絶望の地へと到達した。そこには、天を突くような黒い塔――「忘却の監獄」がそびえ立っていた。
塔の周囲には、これまでとは比較にならない数と密度の「黒い影」が蠢き、最上階からは世界を喰らうような咆哮が響き渡る。
「……ツカサ。私、あんたに出会えて退屈しなくて済んだわ。……暴れさせてもらうわよ!」 アレスが最高の笑みを見せる。
「……アレス、リナ、セレン。俺の背後から離れるな。一気に更地にする」
塔の周囲を埋め尽くす「黒い影」の軍勢を前に、俺は185cmの体を深く沈め、両手にこの世界の理を書き換えるほどの魔力を集束させた。前世の気象学と、この世界の風魔法を融合させた、広域殲滅形態の同時発動だ。
究極の気象魔法・四連連鎖
「サイクロン。タイフーン。ハリケーン。トルネード。」
俺の周囲から、四つの異なる性質を持った暴風が同時に解き放たれた。
サイクロン & タイフーン: 巨大な渦が塔の周囲を包囲し、数千の影たちを地上から強引に吸い上げる。大気を圧縮し、真空の刃が軍勢を細胞単位で切り刻んでいく。
ハリケーン: 上空から猛烈な下降気流が叩きつけられ、逃げようとした影たちを氷の礫と共に粉砕し、大地に沈める。
トルネード: 塔の入り口を塞いでいた巨大な魔物たちを、一撃で空の彼方へと弾き飛ばし、道そのものを「削り出した」。
「……すごっ、なんて規模なの……! 風魔法の概念が壊れるわ……!」 セレンが防御障壁を維持しながら、呆然とその光景を見つめる。
轟音と暴風が収まった時、塔の周囲には塵一つ残っていなかった。数万の影の軍勢は、文字通り「消滅」し、雪原には俺たちが歩くための綺麗な一本道だけが残された。
「……ふぅ。リナ、セレン、足元に気をつけろ。アレス、先頭は任せたぞ」
「了解! ……全く、あんたが先に掃除しちゃうから、私の出番が減っちゃうじゃない!」 アレスはそう言いながらも、頼もしそうにウォーハンマーを担ぎ、真っ先に塔の門へと踏み込んだ。
崩壊を免れた塔の内壁を、俺たちは「飛行魔法」と「アクセル」を併用して一気に駆け上がる。
「……ツカサ様、上から……すごく重い、悲鳴のような音が聞こえます……」 リナが震えながらも、俺に教わった感覚強化で「王」の居場所を指し示した。
最上階の円形広場。そこには、天を覆うほどの巨大な魔力の塊――実体化し始めた「魔力捕食体」の王が、漆黒の玉座に鎮座していた。
影たちが集まった不定形の巨人。その胸部には、アイテムボックスの中にある石碑と呼応するように、最後の欠片が埋め込まれている。
「……あれが本体よ! あの胸の核を破壊しない限り、無限に再生を続けるわ!」
「……アレス、リナ、セレン。これが最後の仕事だ。一瞬で終わらせるぞ!」
俺は185cmの巨躯を弾丸のように加速させ、捕食体の「王」へと肉薄した。
1. 一点突破:外殻パージ
「重力崩壊!」
王の巨体を包む漆黒の魔力外殻を、超高重力の圧縮によって無理やり剥ぎ取る。ドロドロとした影が悲鳴を上げて四散し、胸部に埋め込まれた「核」が剥き出しになった。
「今だ! アレス、叩き込め!」
「待ってました! 根こそぎ消し飛びなさいッ!! 『天破崩神』!!」
アレスが渾身の魔力を込めたウォーハンマーが、核に直撃する。凄まじい衝撃波が塔を揺らし、核に亀裂が走った。
「セレン、魔力拘束! リナ、浄化で再生を止めろ!」
「任せて! 幾何学結界・第零階位展開!」 「光よ、すべてを元あるべき場所へ……! 『聖域の福音』!!」
二人の魔法が重なり、王の再生能力が完全に沈黙した。
2. 亜空間送還:世界の果てへ
「……この世界には、お前の居場所はない。塵一つ残さず連れて行ってやる」
俺は両手を広げ、王の巨体そのものを包み込むように巨大な「亜空間の門」を顕現させた。それはアイテムボックスとは異なり、事象の地平線の彼方へと繋がる完全な虚無だ。
「『終焉の牢獄』!!」
核を砕かれ、浄化された王は、抵抗する術もなく「無」の引力に吸い込まれていく。影の残滓も、不気味な石碑の欠片も、すべてがこの世界から隔離され、次元の狭間へと消え去った。
3. エピローグ:静寂の空へ
暴風と咆哮が止み、塔の最上階には、ただの冷たい北風だけが吹き抜けた。
「……終わった、のよね? 私たち、本当に世界を救っちゃったの?」 セレンが崩れ落ちるように座り込み、リナは杖を抱きしめて涙を浮かべていた。
「救った覚えはない。ただ、静かな生活を邪魔するゴミを掃除しただけだ」
俺は空を見上げた。一年前、この世界に来た時から、俺が望んでいたのは「誰にも邪魔されない平穏」だった。
「ツカサ! ……本当、あんたって最後まで可愛げがないわね。でも、おかげで最高の景色が見られたわ。……さあ、これからどうする? 私たちはどこへだって行けるわよ」
アレスが俺の隣に並び、いたずらっぽく笑う。
「……とりあえず、世界を救うなんて大義名分はもうお終いだ。俺たちは俺たちの生活に戻るぞ」
俺は、崩壊しかけた「忘却の監獄」から、呆然とするリナとセレン、そして満足げなアレスを抱え、一気に南の温暖な森林地帯へと飛び去った。
数千キロを数時間で走破し、辿り着いたのは、手付かずの自然が残る深い森だ。
「さて、まずは寝床だ。リナ、セレン、ぼーっとするな。ここからは『実戦形式のレベリング』だ」
俺は「土魔法」で地面を整え、四人がゆったり過ごせる石造りのコテージを瞬時に作り上げた。魔力を遮断する結界を張り、外からはただの岩山に見えるように細工する。
「リナ、お前は索敵だ。セレン、お前は魔法の精密射撃。あそこの茂みに隠れている『フォレスト・ボア』を、肉を傷つけずに仕留めてみろ」 「ええっ!? い、今からですか!?」と叫ぶリナに、俺は「アクセル」で音もなく背後に回り込み、獲物を追い込む。
「ほらリナ、腰が引けてるわよ! セレン、数式を唱える前にトリガーを引くイメージ! やりなさい!」 アレスの容赦ない檄が飛び、森にリナたちの悲鳴と爆音、そして笑い声が響き渡った。
最高の晩餐
日が暮れる頃には、リナとセレンは泥だらけになりながらも、自分たちで狩った獲物を誇らしげに抱えていた。
フォレスト・ボアの香草岩塩焼き、森のキノコをたっぷり使ったクリームスープ、そして「アイテムボックス」から取り出した秘蔵のワイン(元教会の略奪品)。
リナは魔力の効率的な循環を覚え、セレンは前世の「流体力学」を応用した新術式の基礎を掴み始めていた。レベルにして、以前の数倍は跳ね上がっているだろう。
「……ふぅ。ツカサ様の特訓は地獄ですけど、あのご馳走を食べると、全部許せちゃう気がします……」 リナが幸せそうに頬を緩め、セレンも「……確かに、この合理的な強くなり方は癖になるわね」と眼鏡の奥の瞳を輝かせる。
俺は185cmの背中を、自作の木の椅子に預け、焚き火を見つめた。 隣には、酒を飲みながら笑っているアレス。その前には、切磋琢磨し合うリナとセレン。
「……ツカサ、これよ。これこそが、私たちの旅の『正解』だったのかもね」 アレスがそっと肩を寄せてくる。
「……ああ。騒がしいが、悪くない」
「……リナ、セレン。飯を食ったらさっさと寝ろ。明日は早いぞ」
俺は焚き火に薪を放り込み、森の深淵を見据えた。 「感覚強化」の術式を広域に展開すると、この森のさらに奥、古びた大樹が密集するエリアに、これまでの魔物とは一線を画す濃密な魔力の反応があった。
「あの気配……ただの野良じゃないわね。何かを守っているか、あるいはあの場所自体が魔力の溜まり場になってるのかしら」 アレスが愛用のウォーハンマーを傍らに置き、鋭い視線を闇に向ける。
「いいか、リナ。恐怖を魔力に変えろ。セレン、理論に溺れず直感を信じろ。……行くぞ」
道なき道を「重力制御」で浮遊しながら進む。リナは俺が教えた通り、周囲の空気の微細な震えを察知し、伏兵の魔物を事前に言い当てるまでに成長していた。
森の主、体長5メートルを超える「エルダー・ベア」が姿を現した。その皮膚は魔力を帯びた鋼のように硬い。
「リナ、足止め! セレン、関節を狙え!」 リナが「ホーリーバインド」で巨体の動きを封じ、セレンが「高圧水流」で一点を貫く。トドメを刺さずに残した獲物を、アレスが「……はい、仕上げよ!」と一撃で沈めた。
「……ふぅ、ふぅ……。ツカサ様、今の……今の私、ちゃんと動けてましたか!?」 息を切らしながらも、リナの表情にはかつての弱気な神官の面影はなく、戦士としての精悍さが宿り始めていた。
「及第点だ。セレン、今のは熱力学の第二法則を意識しすぎたな。もっと魔力の放出を『爆発』させるイメージを持て」 「……厳しいわね。でも、確かにその方が効率的だわ」
俺たちは仕留めたエルダー・ベアの希少部位を手際よく解体し、再び拠点へと戻った。
「……少し風向きが変わったな。狩りは中断だ。この森の地下に眠る、別系統の古代文明を調べるぞ」
俺はセレンが差し出した石板の破片を手に取り、その組成を分析した。北の塔のような「捕食」の意志は感じられない。むしろ、周囲の自然と調和するような、凪いだ魔力の波長だ。
1. 特訓の継続:歩く要塞
「だが、その前にリナ。お前の近接防御があまりに甘い。移動中も特訓だ」
俺は「重力魔法」を使い、リナの周囲にだけ3倍の重力をかけた。 「ひえっ!? 体が……地面にめり込みます……!」
「その状態で、俺が放つ『低出力の衝撃波』をすべて杖の面で受け流せ。一歩でも軸がぶれたら、今日の晩飯は抜きだ」 リナは歯を食いしばり、重力に抗いながら必死に杖を振る。アレスも横で「ほら、足腰! 踏ん張るのよ!」と、わざと進路に小石を蹴り飛ばして嫌がらせ……いや、高度な訓練を加える。
2. 周辺村落への接触:森の番人
森を数キロ進むと、大樹の根元に隠れるように作られた小さな隠れ里が見えてきた。 「……ツカサ、あそこ。ただの人間じゃないわね」 アレスが鋭く指摘する通り、現れたのは長い耳を持つ「森のエルフ」たちだった。
俺は185cmの巨躯を威圧感のない程度に抑えつつ、里の長に接触した。 「……旅の者か。その石板の欠片……どこで手に入れた」
長の話によれば、この森の地下には「星の記憶」を司る古代の書庫が眠っているという。北の監獄が「負」の遺産なら、ここは「正」の知識が蓄積された場所。だが、最近その入り口が「不浄な魔力」によって封印され、エルフたちも近づけなくなっていた。
3. 古代遺跡の調査:深緑の書庫
「……案内しろ。俺たちがその封印を解いてやる」
エルフの長の案内で辿り着いたのは、巨大な滝の裏側に隠された鏡面のような石の扉だった。セレンが目を輝かせ、瞬時に術式を解析し始める。
「ツカサ、これよ! 演算速度が追いつかないほど複雑な多重構成……! でも、あなたの魔力供給があれば、一気に中枢まで上書きできるわ!」
「……アレス、入り口を固めろ。セレン、俺の腕を掴んでいろ。リナは前に出ろ、お前の試験だ」
轟音と共に石の扉が開くと、そこには青白い燐光に満ちた、地下とは思えないほど広大な空間が広がっていた。
1. 遺跡の踏破:演算ブースト
「セレン、解析を始めろ。魔力(電力)は俺が供給する。……『魔力バイパス・コネクト』」
俺はセレンの肩に手を置き、前世の「並列演算ユニット」の概念を魔力で再現した。俺の膨大な魔力がセレンの脳を加速させ、遺跡が仕掛けてくる古代の暗号を次々と解読していく。
「すごい……! 数式が勝手に組み立てられていくわ! ツカサ、右の壁の術式を反転させて! 次は床の重力バランサーを上書き!」
俺たちは、物理的な罠が作動するよりも速く、遺跡のシステムそのものを掌握しながら奥へと突き進んだ。
2. リナの実地試験:聖性の解放
「リナ、止まるな! 闇の精霊どもが来るぞ。……俺もアレスも手は出さない。お前の『光』だけで道を切り拓け!」
通路の奥から、ヘドロのような闇を纏った「忘却の精霊」たちが這い出してきた。リナは恐怖で一瞬立ちすくんだが、俺に鍛えられた足腰は崩れない。
「……はいっ! 私はもう、逃げません! 『聖域の夜明け(アポカリプス・レイ)』!」
リナが掲げた杖から、これまでの訓練とは比較にならないほど密度を高めた純白色の光が放たれた。不浄な魔力が光に触れた先から蒸発し、精霊たちは悲鳴を上げることすら許されず霧散していく。
「……ふん、合格だ。魔力のロスが減ったな」
3. 知識の獲得:世界の真実
最深部。そこには巨大な水晶の記録媒体が鎮座する「星の書庫」があった。 俺がその中心に触れると、前世のホログラム映像のような光景が脳内に直接流れ込んできた。
世界の成り立ち: この世界は一度「魔力の枯渇」で滅びかけていた。それを防ぐために、古代人は異世界から「異物(魂)」を呼び寄せ、世界のバランスを維持するための「調整者」に仕立て上げてきた。
俺の正体: ツカサ、お前がこの世界に呼ばれたのは偶然ではない。世界が自浄作用として求めた「最強の抑止力」そのものだ。
禁忌の知識: 北の塔の「王」は、かつての失敗作。そして、この世界の神を自称する存在が、実は高度な「管理システム」に過ぎないという事実。
「……なるほどな。神だの運命だのと言いながら、結局はただの欠陥プログラムの修正か」
俺は情報のすべてを「アイテムボックス」の空き領域にキャッシュとして保存した。
「……ふん。調整者だの抑止力だの、勝手な役割を押し付けやがって。俺の人生をプログラミングしたつもりなら、その大元ごとデバッグしてやる」
俺は185cmの体を揺らし、書庫の最深部で不気味に輝くゲートを見据えた。この先にいるのは、この世界の「神」を気取っている管理システムだ。
「アレス、ついてこい。……リナ、セレン。ここから先は神殺しの領域だ。足手まといになるなら置いていくが、どうする?」
「ツカサ様が行くなら、地獄の果てまでお供します! 私をここまで育ててくれたのは、神様じゃなくてツカサ様ですから!」 リナが涙を拭い、白金の杖を強く握りしめる。
「管理システムをハッキングして壊すなんて、魔導師として一生に一度のチャンスだわ。見逃すはずないじゃない」 セレンが眼鏡を指で押し上げ、不敵に微笑んだ。
「……決まりね。さあ、あんたを駒扱いしたツケを払わせに行きましょうか、ツカサ!」 アレスがウォーハンマーを肩に担ぎ、俺の隣に並ぶ。
神域への侵入:デバッグ開始
俺たちはゲートを潜り、物理法則が崩壊した「高次元の演算空間」へと足を踏み入れた。そこは数式と光の幾何学模様が延々と続く、無機質な白い世界。
『――警告。イレギュラーを確認。調整者「ツカサ」の反逆を検知。排除シーケンスを開始します――』
空間から無数の「光の刃」が降り注ぐ。だが、今の俺にはそれらが単なる「攻撃命令のコード」にしか見えない。
コードの切断: 「『ディメンション・スラッシュ』」 俺は前世の「論理演算」の知識を乗せた手刀で、飛来する光の刃を構成する数式そのものを切断し、無力化する。
アレスの剛腕: 「物理反射設定なんて、私がぶっ壊してあげるわ!」 アレスが重力魔法で強化された一撃を空間そのものに叩き込み、管理システムの「防御壁」に巨大な亀裂を入れる。
セレンとリナの妨害: セレンがシステムの演算にウイルス的なノイズを叩き込み、リナが聖なる光でシステムの「命令権」を浄化(上書き)していく。
最深部:システム中枢
ついに俺たちの前に、この世界の理を司る巨大な水晶体「マスター・コア」が現れた。
『――理解不能。なぜ与えられた平和を拒み、安定を壊そうとするのですか。あなたは世界を守るために召喚されたはずだ――』
「平和だと? 誰が決めた平和だ。俺はただ、自分の意志で、自分の好きな奴らと、静かに飯を食いたいだけだ。……お前の作った『箱庭』は、もう必要ない」
俺は右手に「亜空間」の力を凝縮し、左手に「全属性の魔力」を収束させた。
ラスト・デリート: 「俺の存在そのものがバグだと言うなら、そのバグでお前を上書きしてやる」
世界の解放: コアを破壊し、魔力を世界中の生命へと返還する。
「……これで本当のお別れだ、神様ごっこ」




