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不毛の標的  作者: 慈架太子


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深淵の守護者:覚醒する前世の理

アビス・キメラがその巨躯を震わせ、紫色の電撃を口端から漏らしながら咆哮を上げる。だが、ツカサは動じない。


前世の記憶から引き出した魔法の理論。それを具現化させる。 ツカサが指先を突き出すと、超高温に圧縮された火炎の弾丸――**「ファイアバレット」**が放たれた。


「ガアァッ!?」


弾丸は空気を焼きながら一直線に飛び、キメラの獅子の頭、その眉間に正確に突き刺さった。肉が焼ける嫌な臭いと共に、キメラの頭部が大きくのけ反る。不意の魔術攻撃に、怪物の動きが完全に止まった。


アレスが驚愕の表情で叫ぶ。 「ツカサ! 本当に魔法を……!?」


キメラは眉間を焼かれ、狂乱しながら前脚を振り回している。視界が塞がり、隙だらけの状態だ。


調整を終えたばかりのハルバードが、手の中で唸りを上げている。 185cm、100kgの剛腕。そして今、ツカサの体には全属性の魔力が満ちている。


のけ反ったアビス・キメラの無防備な首筋に向け、ツカサは100kgの自重と全筋力の満身の力でハルバードの柄に叩き込んだ。


空気を断ち切る鋭い風切り音。調整されたばかりの重心が、ツカサの豪腕から放たれる破壊力を一点に集約させる。


「おおおおぉぉぉッ!!」


調整された斧刃が、キメラの分厚い鱗と筋肉を強引に食い破った。前世の記憶から引き出した魔法の残滓が、無意識のうちに刃を加速させ、摩擦熱で傷口を焼きながら通り過ぎる。


ドォォォォンッ!!


衝撃波が周囲の木々を揺らし、獅子の頭が胴体から完全に断絶された。 巨躯が力なく地面に崩れ落ち、地響きと共に土煙が舞い上がる。


静寂が戻った森の中で、ツカサは返り血を拭いもせず、一撃の余韻を味わうようにハルバードを握りしめていた。


戦闘終了

「……嘘でしょ。あの巨体を、一撃で……」


アレスが剣を下げ、呆然とした様子でキメラの残骸とツカサを見比べている。彼女が囮になる隙すら与えない、圧倒的な蹂躙だった。


キメラの死骸からは、魔力が霧散するように薄い光が立ち昇っている。




ツカサはハルバードを傍らに突き立て、目の前の空間に意識を集中させた。


「……あるはずだ。どんな重量物も、どれほどの巨体も収める、物理法則を無視した亜空間が」


前世で親しんだ知識を理論の柱とし、魔力で「入り口」を固定する。何もない空間に、ツカサの100kgの巨躯すら吸い込みかねないほど深い、闇に似た「穴」を強くイメージした。


すると、目の前の空間が波紋のように歪み、音もなく漆黒の亀裂が口を開けた。


「……成功だ。『アイテムボックス』……」


ツカサがキメラの巨躯に手を触れ、空間へ押し込むように念じると、数トンはあるはずの肉塊が吸い込まれるように消失し、亜空間へと格納された。


隣で見ていたアレスは、もはや驚きを通り越して、開いた口が塞がらない様子だ。


「……ツカサ。あんた、いや、ツカサ。……全属性の攻撃魔法、一撃でキメラを沈める剛腕、おまけに……伝説の『収納魔法』まで使うのか?」


彼女の声は震えている。もはや一介の冒険者の枠を遥かに超えていることに、彼女も気づき始めているようだ。


キメラがいなくなった空間には、奴が守るように居座っていた「古びた石碑」が姿を現した。石碑の表面には、ツカサの記憶にある「文字」とは異なるが、なぜか意味が流れ込んでくるような不思議な紋様が刻まれている。




石碑に刻まれた複雑な紋様を見つめた瞬間、脳の奥底でパズルのピースが組み合わさるような感覚が走った。


前世の知識と、この世界の理が融合し、**「言語理解」**のスキルが覚醒する。意味をなさなかった記号が、突如として明確な「言葉」としてツカサの意識に流れ込んできた。


石碑には、この森の異変と、アビス・キメラがここにいた理由が記されていた。


「深淵の門、此処に封じたり。門の鍵は、強き魂を持つ者の血と、理を越えし者の意思によりてのみ開かれん。守護の獣が倒れし時、変革の刻が始まる……」


どうやらこの場所は、単なる魔物の住処ではなく、何か巨大な封印の地だったようだ。キメラを仕留め、ツカサが「アイテムボックス」や「言語理解」を覚醒させたことが、この地の何かを動かし始めている。


「……ツカサ? その石碑に何て書いてあるの? あんた、まさかそれも読めるのか……?」


アレスが不安げに、だが信頼の入り混じった目でツカサを見つめている。


石碑が淡く発光し始め、足元の地面から微かな振動が伝わってきた。キメラを収納したことで「守護」が失われ、封印の機構が反応しているようだ。





「理屈は後だ。こいつも持って行く」


ツカサは振動する石碑に手をかけ、アイテムボックスの広大な亜空間へと意識を繋げた。


「消えろ」


短く念じると、台座から引き剥がされるような地響きと共に、古びた石碑はその姿を消し、ツカサの空間内へと収まった。守護獣に続き、封印の核までをも失ったその場所は、急激に魔力の均衡を崩し、周囲の空間が微かに軋み始める。


「……石碑ごと!? ツカサ、あんたのその魔法、底が見えないわね……」


アレスは驚愕しつつも、崩落の気配を感じ取って素早く俺の隣へ駆け寄った。


石碑が消えたことで、地響きは収まるどころか、森の深部全体が鳴動し始めている。封印されていた「何か」が漏れ出しているのか、空が不自然に暗く淀んでいく。


「アレス、行くぞ! ここはもうじき荒れる」


ツカサは傍らのハルバードを掴み、100kgの巨体を翻して走り出した。アイテムボックスのおかげで、キメラと石碑という膨大な重量を抱えながらも、その動きは驚くほど軽い。


アレスも風の魔法で脚を強化し、ツカサの背中に必死に食らいついてくる。



背後で巨大な樹木が倒れる轟音を聞きながら、二人は猛スピードで森を駆け抜けた。やがて、昨日ソードボアを狩った地点を通り過ぎ、街道の光が見える場所まで辿り着く。


そこでようやく足を止め、振り返ると、森の深部にはどす黒い雲が立ち込め、雷鳴が轟いていた。


「……ふぅ、死ぬかと思った。……ねぇツカサ、あの石碑、街に持っていって大丈夫なの? ギルドに見せたら、間違いなく国中の学者が黙っていないわよ」


アレスは肩で息をしながら、ツカサが「隠し持っている」石碑の行方を案じている。





ツカサは足を止め、真剣な面持ちでアレスに向き合った。185cmの巨躯から発せられる威圧感というよりは、何か重大な決断を共有しようとする者の静かな迫力がある。


アレスは、ツカサのその雰囲気を察して、乱れた息を整えながら真っ直ぐに見返した。


「……何、ツカサ。改まって」


ツカサは、アイテムボックスに収めた石碑と、自分に目覚めたばかりの力のことを念頭に置きながら口を開く。


「あの石碑の内容は、おそらく今の俺たちが不用意に触れていいもんじゃない。ギルドには『手強いキメラを仕留めた』という報告だけにするつもりだ。石碑のことは、俺とあんた、二人だけの秘密にしたい。……いいか?」


「俺は、前世……いや、自分でも驚くような知識と力を手に入れた。だが、この世界で一人で動くにはまだ知らないことが多すぎる。アレス、改めてあんたの力を貸してほしい。ただのパーティー以上の、信頼できる『相棒』としてだ」


「あんたを危険な秘密に巻き込むことになる。もし嫌なら、今ここで石碑のことは忘れて、キメラの報酬だけ山分けして別れてもいい。……どうする?」


アレスは少しの間、黙ってツカサを見つめていた。やがて、彼女はふっと小さく笑い、自分の右手を差し出した。


「……今更、別れるなんて選択肢はないわ。あんたに命を救われ、あんな規格外の戦いを見せられて……ここで降りたら一生後悔する。ツカサ、あんたが何者で、その力がどこへ向かうのか。一番近くで見届けさせて。秘密は守る。私は、あんたの『相棒』だ」




昨日あんたと魔法の話をした後 夢を見た。 どうやら俺は転生者らしい 前世の記憶をもって この世界に転生してきた。魔法が使えるようになったのもアイテムボックスが使えるようになったのも前世の記憶を思い出したからだ。


アレスは差し出した手をツカサが握り返すと、その大きな手の熱に驚いたように目を瞬かせ、それから覚悟を決めたように強く握りしめた。


「前世の記憶……。正直、信じられないような話だけど、さっきの魔法やアイテムボックスを見せられた後じゃ、疑う方が難しいわね。分かったわ、ツカサ。その『記憶』と『力』、私が全力で支える」


彼女は周囲を一度見渡し、まだ淀んでいる空の下、森の出口へと促した。


「今はまず街へ戻りましょう。ギルドにはキメラの討伐だけを報告する。石碑のことは、二人でじっくり調べるための静かな場所が必要よ」




「魔法を……私が?」


アレスは歩みを止め、驚いたように目を見開いた。自分の手のひらをじっと見つめ、それからツカサの巨躯を見上げる。


「昨日も言った通り、私には才能がないんだ。風の魔力を少し纏わせるのが精一杯で、火の玉一つ作れやしない。……でも、もし、ツカサの言う『前世の知識』とやらで、私にも道が開けるっていうなら……」


彼女の瞳に、剣士としての向上心と、相棒に並び立ちたいという強い光が宿った。


「……使いたいわ。もっと強く、あんたの隣にいても恥ずかしくないくらいに」


街道の脇、大きな木の下で足を止める。ツカサは前世の「科学」や「イメージ」の理論を使い、アレスに魔法の深淵を説き始めた。


単に「風を吹かせる」のではなく、気圧の差や空気の断熱膨張をイメージさせる。


体外に放出するのではなく、体内の特定の回路を通すことで、魔法の強度を何倍にも引き上げる理論。


185cmの大きな手でアレスの肩や腕に触れ、魔力の流れを直接導いてやる。


「……っ、何これ。今まで感じてた魔力と全然違う。もっと、こう……熱くて、鋭いものが流れてる感じ……!」


アレスの周囲の風が、今までのような「微風」ではなく、木々をなぎ倒さんばかりの鋭い「真空の刃」となって渦巻き始めた。


アレスが集中して細い指先を向けると、数メートル先の岩が、見えない刃に切り刻まれたように一瞬で細分化された。


「できた……。ツカサ、私、本当に魔法を……!」


彼女は自分の力に驚き、それから弾けるような笑顔でツカサの手を握った。



俺の言うとおりにやってみてくれ 「火 水 風 土 光 闇 雷」




「分かった。あんたを信じて、やってみる」


アレスは深く息を吐き、ツカサの言葉をなぞるように、一語一語、噛みしめるように呟き始めた。


「……火」 彼女の指先に、今まで見たこともないような鮮烈な紅蓮の種火が灯る。


「……水」 火が消えると同時に、空中の水分が凝集し、透き通った水の球体が浮かぶ。


「風……土……光……闇……」 言葉を重ねるたびに、アレスの周囲を異なる属性の魔力が渦巻いていく。ツカサが教えた「イメージ」の固定と、前世の論理的な魔法体系が、彼女の中に眠っていた魔力の回路を強引に、かつ正確に開いていく。


「……そして、雷!」


パチリ、と青白い火花がアレスの指先で弾けた。 彼女は自分の手を見つめたまま、小刻みに震えている。全属性の萌芽――それはこの世界の常識では、一生をかけても辿り着けない「賢者」の領域だ。


「ツカサ……これ、凄いわ……。ただ言葉にしただけなのに、魔力が勝手に形を成そうとしてる……。あんたが言っていた『イメージ』って、こういうことだったのね」


アレスの瞳には、ツカサへの畏敬の念と、手に入れた力への高揚感が混ざり合っている。


185cm、100kgの剛腕に全属性の魔力を宿すツカサ。 そして、そのツカサから直接「真理」を授けられ、全属性の適性を開花させ始めたアレス。


もはや二人は、ただの冒険者パーティーではない。世界の理を書き換える「変革者」としての第一歩を踏み出した。



「アイテムボックス」も教えてやる 亜空間になんでも入る場所を イメージしろ さっき キメラや石碑を入れた場所をイメージするんだ




「アイテムボックスまで……。本当にいいの、ツカサ? そんな秘中の秘を……」


アレスは戸惑いを見せたが、俺の真剣な眼差しに応えるように、覚悟を決めて目を閉じた。


俺は彼女の肩に手を置き、魔力の波長を同調させる。 「いいか、目の前の空間に『穴』を開けるんじゃない。そこにあるはずの『別の部屋』へアクセスするんだ。重さも、大きさも関係ない。ただそこに在り、自分だけが触れられる広大な空間を……強くイメージしろ」


「……広大な、場所……。何でも受け入れてくれる、闇の、先……」


アレスが集中を高めると、彼女の目の前の空間が、まるで水面に石を投げ込んだ時のように細かく波打ち始めた。そして一瞬、パキンと空気が弾けるような音がして、小さな、だが確かな「虚空の裂け目」が姿を現した。


「……できた。繋がったわ、ツカサ! 私の中にも……場所がある!」


彼女は興奮した様子で、道端に転がっていた手頃な石を拾い上げると、その裂け目へと押し込んだ。石は吸い込まれるように消失し、彼女が念じると再びその手に戻ってきた。


「凄い……これなら、どれだけ重い素材も、予備の武器も……全部持ち歩ける。魔法だけじゃなく、こんな利便性まで……。ねぇツカサ、あんたの世界では、誰もがこんな神様みたいな力を持ってたの?」


アレスは、まるで未知の玩具を手に入れた子供のような、純粋な驚きと喜びに満ちた顔で俺を見上げている。


これでアレスも全属性の魔法、そしてアイテムボックスを手に入れた。185cmの巨漢と、風のように動く女魔導戦士。もはやこの付近の森で敵うものはいないだろう。



さあ 練習だ ファイアバレット



「いいわ。やってみる!」


アレスは力強く頷くと、少し距離を取って立ち、右手を前方に突き出した。ツカサの教えをなぞるように、ただの「火」ではなく、一点に凝縮され、加速する弾丸を強くイメージする。


「……ファイアバレット!」


放たれたのは、昨日の彼女が使っていた微々たる魔力とは比較にならない、鋭い熱線の弾丸だった。赤く輝く魔力の塊が空気を切り裂き、少し先の立ち枯れた巨木に吸い込まれる。


ズドォォンッ!!


着弾と同時に、巨木の幹が内部から爆発したように弾け飛んだ。木っ端が周囲に降り注ぎ、着弾点は真っ赤に焼けている。


「……っ、嘘。私……本当にやったの……?」


自分の手を見つめるアレスの指先からは、まだ微かに陽炎が立ち昇っている。かつて剣一本でボアに苦戦していた彼女が、今や一撃で大木を粉砕する火力を手に入れたのだ。


「ツカサ、見た!? 今の、本当に私の魔法……! 凄い、こんなに……こんなにイメージ通りに力が形になるなんて!」


アレスは興奮を隠しきれない様子で、ツカサの胸元に飛び込まんばかりの勢いで駆け寄ってきた。




「ウォーターバレット ウィンドバレット ストーンバレット ソイルバレット ホーリーバレット ヒールバレット ダークバレット サンダーバレット」



ツカサの指示に従い、アレスは次々と魔力の弾丸を放っていく。前世の知識に基づいた「物理法則」のイメージが、彼女の魔力を洗練された兵器へと変えていった。


「ウォーターバレット!」 指先から放たれた超高圧の水弾が、残っていた大木の幹を深くえぐる。


「ウィンドバレット!」 真空の塊が空気を切り裂き、周囲の葉を塵に帰す。


「ストーン、ソイル!」 地面から隆起した岩塊と土の弾丸が、凄まじい質量兵器となって標的を粉砕する。


「ホーリー、ヒール……!」 浄化の光が周囲の澱んだ空気を晴らし、ヒールの温かな光が、特訓で少し赤くなったアレスの指先を一瞬で癒やした。


「ダークバレット……そして、サンダーバレット!」 光を吸い込む闇の弾丸が空間を歪ませ、最後に放たれた青白い雷撃が、標的だった木々を完全に消し炭に変えた。


特訓を終えて

アレスは肩で息をしながらも、その瞳はかつてないほど輝いている。


「はぁ……はぁ……。ツカサ、信じられないわ。全属性……本当に全部、私の意思で動かせた。まるで、世界そのものが私の味方になったみたい。……これだけの力、今まで誰も教えてくれなかった。前世の記憶って、魔法の真理そのものなのね」


彼女は自分の両手を見つめ、それからツカサの185cmの巨躯を見上げ、誇らしげに笑った。


「これで、あんたの隣に立っても足手まといにはならないはずよ。……むしろ、あんたに驚かれるくらい、もっと磨いてみせるわ」




「しばらく狩りをしていかないか? キメラは少し放置する」




「そうだな。キメラのような大物をいきなり出すと、街で余計な騒ぎになりかねない。まずは新しい力と連携を馴染ませるのが先決だ」


ツカサの提案に、アレスは「賛成よ」と力強く頷き、新調したばかりの長剣を抜いた。


「アビス・キメラがいなくなったことで、森の生態系も混乱しているはず。住処を追われていた他の魔物たちが戻ってくるか、あるいは別の強者が場所取りを始めるか……。どっちにしろ、練習相手には事欠かないわね」


二人は街道へは戻らず、あえて魔物の気配が濃い中層エリアへと足を踏み入れた。


ツカサは前世の知識を応用し、魔力の波長をレーダーのように広げる。 「左前方、30メートル。大型の気配が二つ。……いや、三つだ」


茂みを割って現れたのは、三頭の**「アーマード・ベア」**。 硬質な毛皮と岩のような皮膚を持つ巨体だが、今の二人にとっては絶好の的だった。


「アレス、右の二体を受け持て。バレットを試せ」 「了解! ツカサは真ん中をお願い!」


彼女は「ウィンドバレット」を脚部に纏わせ、瞬きする間にベアの死角へ回り込む。 「サンダーバレット!」 放たれた雷撃が、一体の頭部を貫き、脳を焼き焦がす。もう一体には「ストーンバレット」を放ち、重圧でその場に縫い止めた。


正面のベアに対し、ツカサは100kgの筋力でハルバードを振り上げる。 「……火属性付与(エンチャント:フレイム)」 刃が超高温の熱を帯び、赤く輝く。振り下ろされた一撃は、ベアの硬い皮膚をバターのように切り裂き、胴体を一刀両断にせしめた。


アイテムボックスには、アーマード・ベアの毛皮、ソードボアの肉、その他森の希少な薬草などが次々と放り込まれていく。


「ふぅ……。魔法を使うと、今までよりずっと効率がいいわ。それにツカサ、あんたのハルバードに属性を乗せる戦い方……あれ、凄まじいわね。一撃の重みが物理の限界を超えてる」


アレスは額の汗を拭い、充実した表情でツカサを見上げた。




「武器に付与するのもいいが、次は身体強化を試せ。魔力を体内の細胞一つ一つに行き渡らせるイメージだ。爆発的な筋力と反応速度が手に入るぞ」


俺の言葉に、アレスは「細胞……? よくわからないけど、体の内側を魔力で満たせばいいのね」と頷き、集中を高める。 彼女の細い体が、内側から溢れ出す淡い光に包まれた。


「……っ、凄い。体が羽みたいに軽い……いえ、それ以上に、力が漲って抑えられないくらいだわ!」


アレスが軽く地面を蹴ると、一瞬で数メートル先まで移動した。前世の知識に基づく「効率的な魔力循環」は、この世界の一般的な身体強化を遥かに凌駕している。


「よし、その調子でさらに奥へ行くぞ。魔力密度が上がっている……強いのが来るぞ」


さらに深く進むと、空気は粘り気を帯び、周囲の植物は魔力を吸って異常な色彩を放っていた。そこで待ち構えていたのは、このエリアの主――**「古龍の末裔、ロック・ワイバーン」**だった。


全身が岩石のような鱗で覆われた飛竜。その巨体は、先ほどのキメラすら凌ぐ。


身体強化を施したアレスは、もはや人の目では追えない速度でワイバーンの周囲を駆け抜ける。「サンダーバレット」を連射し、岩の鱗の隙間を的確に射抜いていく。


俺は185cm、100kgの体に「土」と「風」の複合強化をかける。重さを増したハルバードを、風の加速で振り抜く。 「……爆砕一閃エクスプロージョン・スラッシュ」 ハルバードがワイバーンの太い脚に直撃した瞬間、物理的な衝撃と火属性の爆発が同時に発生し、巨体を横倒しにさせた。


断末魔の叫びと共に、ロック・ワイバーンが沈む。 アレスは着地し、乱れた髪を払いながら、自身の手に宿る余韻に震えていた。


「ツカサ……私、今なら何にでも勝てる気がするわ。この身体強化、剣技の次元が一つ上がった……」


アイテムボックスには、今や伝説級の素材が並んでいる。


ロック・ワイバーンを仕留めた地響きに呼応するように、地中から巨山が競り上がる。全身を茶褐色の堅牢な鱗で包んだ、この森の真の主、アースドラゴンだ。


「ツカサ、下がって! さすがにこいつは――」


アレスの警告を背に、ツカサはハルバードを構え直す。100kgの巨躯に「加速」の魔力を流し込み、一点突破の理論を構築する。


「……ここだ」


ツカサはハルバードを鋭く突き出した。狙いは眉間。 185cmの剛腕から繰り出される突撃に、圧縮された魔力を乗せて叩き込む。


ドォォンッ!!


衝撃が奔る。ハルバードが命中したドラゴンの頭部だけが、内側からの魔力暴走によって爆散した。脳を直接粉砕された巨体は、断末魔の叫びを上げる暇もなく、ズシンと地響きを立ててその場に崩れ落ちた。


胴体は無傷。鱗も、肉も、貴重な心臓も、全て完璧な状態で残されている。


「……信じられない。あの強固なドラゴンの鱗を貫いて、急所だけを正確に……」


アレスは剣を鞘に収め、圧倒的な実力差にため息を漏らした。


ツカサは崩れ落ちたアースドラゴンの巨躯に触れる。


「……アイテムボックス」


念じると同時に、山のようなドラゴンの死骸が音もなく吸い込まれ、ツカサの亜空間へと収納された。これだけの巨体でも、アイテムボックスの容量にはまだ余裕がある。


「完璧だわ。肉も鱗も最高級の状態で手に入った。ツカサ、これ一つで小国が買えるくらいの価値があるわよ……」


アレスは肩の力を抜き、ようやく少しだけ笑みを見せた。




アレス 今日はここで野営をしないか? ドラゴンの肉を食わせてやる




「ドラゴンの肉、か……。おとぎ話の中だけの食べ物だと思ってたわ」


アレスは驚きながらも、どこか期待に満ちた表情で頷いた。 「いいわね。街の騒がしい酒場より、今はツカサと静かにこれからのことを話したい気分よ」


ツカサは街道から少し外れた、見晴らしの良い高台の広場を野営地に選んだ。


ツカサは「アイテムボックス」から、手際よく道具と食材を取り出していく。


「ファイアバレット」の出力を極限まで絞り、一瞬で薪に火を灯す。アレスも真似をして、指先から小さな火種を飛ばして手伝った。


最高級部位であるロース肉をハルバードの刃で厚切りにし、前世の知識を活かして下処理を施す。 「魔法ヒートで低温調理し、表面を強火で一気に焼き固める……」


外はカリッと、中は肉汁を閉じ込めた極上のレア・ステーキ。さらにアイテムボックスに保管していた香草と塩、そして「水魔法」で浄化した清潔な水で、完璧な食卓が出来上がった。


焚き火を囲んで

「……何これ、信じられない。口の中で溶けるのに、力が体の底から湧き上がってくるみたい!」 アレスはドラゴンの肉を一口食べ、そのあまりの旨さに頬を押さえて感動している。


夜の森の静寂の中、パチパチとはぜる焚き火の音が響く。185cmの巨躯を岩に預け、ツカサもまた、前世の記憶と今持てる力を噛みしめていた。


「ツカサ……あんたのおかげで、私の世界は今日一日でひっくり返ったわ。魔法に、アイテムボックス、それにドラゴンまで……」


アレスは火影に照らされた顔を上げ、真剣な眼差しを向けた。


「ねぇ、一つ聞かせて。あんたの『前世の記憶』にある知識……それを全部使って、あんたはこの世界をどう変えるつもり?」


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