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不毛の標的  作者: 慈架太子


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鉄槌と剣:ハルバードを振るう巨躯の男

俺は一人で森へ来て魔物を狩っていた。

俺の武器は槍 もっというとハルバード(斧槍)だ


剣は間合いが短くて近づかないと切れないし 普通の槍で突くだけというのが俺のスタイルに合わない。

突くこともできるし切ることもできる。ぶっ叩くことだってできる。この斧槍という武器の特性が俺の好みと力任せに振れるというスタイルが俺に合っていた。


俺は185cm100kgという体格だから力で武器をブン回すと言う事に向いている。

もちろん俺よりも大きい奴や力の強い奴がいることは知っている。

だが

普通の剣で切る突く叩くよりはこの斧槍で同じことをする方が効果がでかいと思っていた。


目の前にソードボアが現れた。体長3m体重1トンというところか

突進による破壊力は人間には敵わないがやり様はあるはずだ。

俺は満身の力を込めて斧槍を振り切った。

ソードボアの顔面が陥没して爆散していく。

それなりに効いているみたいだ。突進が横に逸れた。

俺は2撃3撃4撃と斧槍をブン回す。

ソードボアの角が折れ 顔の3分の2が陥没して原型が無い。

かなりタフな奴のようだ。正面から斧槍を振り下ろす。

顔が完全に断裂して仕留めたようだ。 動きが止まった。

斧槍を置いて短剣を手に取る。 後ろ足2本ににロープを括り付け太い木の枝につるす。さすがに俺一人の力では吊ることはできないが頭を下に向けることはできる。

首のところの動脈を切り開いて血抜きをする。


血抜きをしている最中、ソードボアの巨体から溢れ出すのは、鉄の匂いが立ち込める鮮赤の生血だけだ。魔物とはいえ、その生命の源は生々しく、温かい。


首の動脈を断ったことで、ドクドクと勢いよく血が流れ落ち、足元の土をドロドロに染めていく。この血の匂いは、遠くの肉食獣を呼び寄せるには十分すぎる。あんたほどの体格と腕前があれば恐れることはないだろうが、解体作業中に背後を突かれるのは避けたいところだ。


素材の質 近寄ってよく見ると、ソードボアの皮はやはり相当に硬い。特に背中から脇にかけての毛皮は、乾燥させれば鎧の素材に転用できそうなほどの強度がある。短剣で丁寧に剥ぐには時間がかかりそうだ。


周囲の状況 森の奥から、クスクスと何かが移動する音が聞こえる。大型の獲物が仕留められたことを察知した、 scavenger(死肉漁り)の小魔物たちのようだ。まだ遠巻きに様子を伺っているが、数が増えれば厄介かもしれない。


斧槍の確認 傍らに置いたハルバードの刃には、ボアの返り血と砕けた骨の破片が付着している。手入れを怠れば、次に振り回す時に滑ったり、刃こぼれの原因になったりする。


皮剥ぎの感触 ソードボアの皮膚と肉の間に短剣を差し込み、慎重に刃を滑らせる。外側の剛毛は硬いが、内側は驚くほど弾力がある。185cmの体躯を屈め、100kgの自重を活かして皮を引っ張りながら、肉を傷つけないよう丁寧に剥がしていく。


周囲の警戒 作業中も耳は常に周囲の音を拾っている。低く唸るような風の音、遠くで枝が折れる音。傍らに立て掛けたハルバードは、いつでも手に取れる距離だ。


成果 顔面を粉砕したおかげで、胴体部分の皮はほぼ無傷で手に入りそうだ。特に背中の中心を通る「剣毛」は、加工すれば矢尻や小剣の素材にもなる一級品だ。


腹部を慎重に開いた際、胃のあたりに硬い感触が当たった。 短剣の先で探ってみると、そこにはソードボアが飲み込んだと思われる**「刻印入りの鉄のプレート」**が転がり出た。表面にはどこかの騎士団、あるいは商隊の紋章らしきものが刻まれているが、胃液で腐食しかけている。


これは持って帰ることはできなさそうだ 皮と角 肉の柔らかそうなところを切り分けるか


角の採取 まずはハルバードを手に取り、粉砕を免れた方の角の根元を正確にぶっ叩く。自重を乗せた一撃で、硬い角が綺麗に根本から外れた。これは素材屋で高く売れるはずだ。


皮の剥ぎ取り 慎重に剥ぎ進めていた毛皮を、もっとも状態の良い背中から脇にかけて大きく切り取る。丸めると相当な重さになるが、あんたの背中なら十分に背負える。


肉の切り出し 内臓を傷つけないよう注意しながら、ロースやヒレにあたる柔らかい部位を短剣で手際よく切り出す。魔物の肉は臭みが強いことが多いが、ソードボアの鮮血をしっかり抜いたこの肉なら、街の酒場で高く買い取られるか、自分で食ってもいいご馳走になるだろう。


血の匂いはさらに濃くなり、周囲の茂みからは「クスクス」「ギチギチ」と、焦れたような小魔物たちの鳴き声が近くなってきている。やつらも、あんたが立ち去るのを今か今かと待っているようだ。


回収した素材をひとまとめにし、ハルバードを肩に担ぎ直す。 足元には、無残に解体されたソードボアの残骸が転がっているが、これもすぐに森の掃除屋たちが片付けるだろう。



背嚢を担ぐと足早にそこから離れた。


人が木に寄りかかって倒れている。女剣士だ

大丈夫か?


そこにいたのは、装備のあちこちに鋭い切り傷を受けた女剣士だ。鎧の隙間からは血が滲んでおり、顔色は青白い。傍らには折れた剣が転がっている。


「大丈夫か?」と声をかけると、彼女は重い瞼をゆっくりと持ち上げた。


「……っ……誰だ……」


彼女は反射的に腰のナイフに手をかけようとしたが、その力も残っていないらしく、腕が力なく地面に落ちた。あんたの185cm、100kgという威圧感のある体格と、血の付いたハルバードを見て、一瞬だけ警戒の色を強める。


だが、すぐにその瞳から力が抜け、自嘲気味に息を吐いた。


「……悪い、警戒する余裕もなさそうだ……。見ての通り、ソードボアにやられた。……一頭、仕留めたと思ったんだが……群れだった……」


彼女の視線の先、少し離れた茂みの向こうに、もう一頭のボアの死骸が横たわっている。どうやら彼女は自分の獲物とは相打ちに近い形で力尽きたようだ。


俺はポーションを取り出し女に飲ませる。傷が回復していく。


背嚢から取り出したポーションを女の口に流し込むと、その青白い顔に朱が差し、深い切り傷が魔法的な光を帯びて塞がっていく。


「……っ……はぁ、……助かった」


女剣士は荒かった呼吸を整え、自分の身体を確かめるように動かした。致命的な出血は止まり、自力で立ち上がれる程度には回復したようだ。彼女は折れた剣を支えにしてゆっくりと立ち上がり、俺をを見上げる。


「見ず知らずの私に、高価なポーションを……感謝する。私はアレス。この先の街を拠点にしている冒険者だ。……あんたのような腕利きがいなければ、今頃はボアの餌になっていたところだった」


彼女は俺のの肩に担がれたハルバードと、血の匂いが漂う背嚢に目を向け、驚いたように目を見開く。


「その獲物……一人でやったのか? それにその武器、ハルバードをそれだけ軽々と振るうとは……相当な力の持ち主だな」


礼を言う彼女の背後、森の奥から**「グルル……」**という低い地鳴りのような唸り声が響いた。一頭ではない。複数が落ち葉を踏みしめ、こちらを囲い込もうとする気配だ。


彼女が言っていた「群れの残り」が、同族の血の匂いと獲物を求めて集まってきている。



俺は冷静に背嚢を足元に下ろした。100kgの巨体から重荷が消え、全身の筋肉が解き放たれる。手の中にあるハルバードが、羽のように軽く感じられるはずだ。


アレスは俺の背中に隠れるようにして、折れた剣を構え直した。「……すまない、恩に着る。奴ら、来るぞ!」


アレスの言葉と同時に、前方と左右の茂みから、3頭のソードボアが次々と姿を現した。奴らは地面を激しく削り、一直線にこちらを狙って蹄を打ち鳴らす。


奴らの突進力は凄まじいが、動きは直線的だ。185cmの体躯を低く構え、俺はハルバードの柄を強く握りしめた。


一頭目(正面): 最も勢いよく突っ込んできた先頭の一頭。俺はそれを紙一重でかわすと同時に、ハルバードを横一文字にフルスイングした。遠心力が乗った斧刃がボアの首筋を捉え、その巨体を横に叩き飛ばす。


二頭目(左側): 一頭目が飛ばされた衝撃に怯んだ隙を見逃さず 俺は流れるような動作でハルバードの先端を突き出す。槍としての機能を生かし、突進の勢いを利用してボアの眉間を正確に貫いた。


三頭目(右側): 最後の奴が、仲間の死骸を乗り越えるようにして跳躍してきた。


空中に躍り出た三頭目のソードボア。その無防備な腹部を見逃すはずがない。


俺は低く構えた姿勢から、全身のバネを使い、ハルバードを真下から一気に斬り上げた。100kgの体重を乗せた強烈な一閃が、ボアの柔らかな腹部を捉える。


「オォォッ!」


気合と共に振り抜かれた斧刃は、ソードボアの頑強な皮膚を紙のように切り裂き、内臓ごと巨体を真っ二つに分断した。飛び散る返り血を浴びながら、俺はハルバードを肩に担ぎ直し、残りの死骸を見下ろす。


わずか数秒の出来事だった。 三頭のソードボアは、物言わぬ肉の塊となって地面に転がっている。


アレスは呆然と立ち尽くし、真っ二つになったボアと、血飛沫の中に立つ俺の巨躯を交互に見ていた。


「……信じられない。あの機動力で、これほどの重武器を……。あんた、いや、貴殿は一体……」


彼女は驚きを隠せない様子だが、周囲の「気配」は消えていない。仕留めたボアの血の匂いが、さらに多くの捕食者を呼び寄せるだろう。



「ここはもう長く持たない。動けるならさっさと行くぞ」


俺は短く告げると、重い背嚢を再び背負い直した。アレスは一瞬圧倒されたような顔をしたが、すぐに我に返って力強く頷いた。


「ああ、分かった。……恩にきる」


彼女は折れた剣の柄を握りしめ、俺の斜め後ろにぴったりとついた。負傷は癒えても体力は万全ではないはずだが、死線を越えてきた剣士らしい足取りで付いてくる。


血の匂いが充満したその場所を離れ、俺たちは木々の間を縫うようにして森の出口を目指した。背後では、残された死骸を巡って早くも別の魔物たちが争い始める不気味な声が響いているが、振り返る必要はない。


185cmの体躯で藪を掻き分け、100kgの荷を背負いながらも、俺はハルバードをいつでも振り回せる位置に保持して歩を進める。しばらく進むと、鬱蒼とした緑の隙間から、街道へ続く明るい光が見えてきた。


「……助かった。街道に出れば、もう安心だ」


アレスが安堵の息をもらす。 街道に出たところで、俺は一度足を止めた。ここから先は人里だ。


「俺はツカサだ」


短く名乗ると、アレスは「ツカサか。良い名だ」と口元をわずかに緩めた。


街道を街に向かって歩きながら、アレスが改めて切り出してきた。 「街に入ったら、私の行きつけのギルド併設の酒場へ行かないか? そこでポーション代を支払わせてほしい。それに、ツカサが背負っているそのソードボアの素材……あそこのギルドなら、相場より色をつけて買い取ってくれる目利きの商人がいる。紹介させてくれ」


彼女の話によれば、一人でソードボアを狩るような手練れは珍しく、特にそのハルバードで豪快に仕留めた素材となれば、武具職人たちがこぞって欲しがるだろうとのことだ。


「一人で静かにやりたいなら無理には言わないが……その重い背嚢を抱えて何軒も店を回るよりは、効率がいいはずだ」


アレスは俺の巨躯と背負った荷物を見上げながら、気遣うように言った。


「効率がいいなら、そっちの方が助かる。案内してくれ」


俺の返答に、アレスは「任せておけ」と力強く頷いた。


街の堅牢な門をくぐり、活気ある通りを抜けて冒険者ギルドへと向かう。185cm、100kgの俺が血の付いたハルバードを担ぎ、巨大な背嚢を背負って歩く姿は、道ゆく人々の注目を集めたが、隣にアレスがいることで余計な騒ぎにはならなかった。


ギルドの裏手にある解体場へ向かうと、アレスが馴染みの老商人を呼び寄せる。 「ガラム、上等な出物だ。私の命の恩人が仕留めたソードボアの素材だ。色をつけてやってくれ」


老商人は俺の背嚢から出てきた、損傷の少ない背中の皮と、根本から綺麗に外された角を見て目を見開いた。 「……ほう、これほど見事な剥ぎ取りは久しぶりだ。それにこの角、一撃で落としたのか? 相当な剛力の持ち主だな」


老商人は約束通り、通常の相場より二割ほど高い金貨の袋を俺に差し出した。


素材を金に換え、身軽になったところで、ギルドに併設された酒場へと移動する。 昼間から騒がしい店内の隅、がっしりとした木のテーブルに腰を下ろすと、ようやく一息ついた実感が湧いてきた。


アレスが店員を呼び、二つ分のジョッキと、肉料理を注文する。 「さあ、まずは一杯。ツカサ、改めて助かった。乾杯させてくれ」


彼女は自分のジョッキを持ち上げ、俺の反応を待っている。


重厚なジョッキをアレスのそれとぶつけ、一気にエールを煽る。喉を焼くような刺激のあと、冷えた液体が五臓六腑に染み渡る。やはり、死線を越えた後の酒は格別だ。


「ぷはっ……生き返る。ツカサ、あんた本当にいい飲みっぷりだな」


アレスも喉を鳴らしてジョッキを置くと、ふっと表情を引き締めた。俺が気になっていた「ボアの群れ」について問いかけると、彼女は声を潜めて語り始めた。


「ああ、そのことだが……最近、あの森の奥で『縄張り争い』が起きているらしいんだ。本来、ソードボアは単独か、せいぜい親子で行動する魔物だ。それが群れを作って街道近くまで降りてきているのは、さらに強力な『何か』に住処を追われた証拠だろうと言われている」


アレスはテーブルに指で地図を描くように動かした。


森の深部に、ボアすら捕食するような上位種――例えば大型のワイバーンや、あるいは手負いの古龍の目撃情報があるという。


「ここ数週間、森の魔物たちが全体的に殺気立っている。私がやられたのも、奴らが異常に攻撃的になっていたからだ。普段なら冒険者の気配を感じれば距離を置くはずなんだが……」


ギルドでも調査隊を出す準備をしているが、腕利きの冒険者は別の依頼で出払っており、人手が足りていない状態らしい。


「ツカサ、もしあんたにその気があるなら……ギルドはあんたのような『力』を求めているはずだ。あのハルバードの一撃を見れば、誰も文句は言わないだろうしな」


「ギルドはいい それよりもアレスはソロなのか 俺とパーティーを組まないか?」


俺の言葉に、アレスはジョッキを口に運ぼうとした手を止め、驚いたように目を見開いた。


「私と……パーティーを?」


彼女は少しの間、俺の顔と、傍らに立て掛けられた巨大なハルバードを交互に見つめた。やがて、自嘲気味に口元を綻ばせる。


「……正直に言えば、願ってもない話だ。今日の戦いを見て分かった。私の剣術では、あのような力押しの魔物の群れには限界がある。だが、ツカサのその圧倒的な破壊力があれば、話は別だ。私が囮になり、敵の隙を作ることができれば、あんたの一撃がより確実に、致命的なものになる」


彼女はジョッキをテーブルに置くと、真っ直ぐに俺の目を見返した。


「私は今までずっとソロでやってきた。仲間に合わせるのが苦手でな……。だが、あんたの隣なら、背中を預けられる気がする。……ああ、こちらこそ頼む。ツカサ」


アレスはそう言って、戦士らしい力強い手つきで右手を差し出してきた。


185cmの俺と、身軽な女剣士のアレス。剛と柔のコンビネーションが、これからの狩りに新たな可能性をもたらすだろう。


「今日はもう十分だ。明日からのために、今は腰を据えて飲むぞ」


俺がそう言うと、アレスは「そうだな、相棒。賛成だ」と、今日一番の明るい表情で笑った。


俺たちは追加の酒と、この店の名物である猪肉の串焼きを注文した。脂の乗った肉を頬張り、エールで流し込みながら、互いの手の内を晒していく。


俺のスタイル(剛) 185cm100kgの体格を活かしたハルバードのブン回し。基本は一撃必殺だが、その分、大振りになった際の隙が課題だ。


アレスのスタイル(柔) 折れた剣が物語るように、彼女は踏み込みの鋭い速攻型だ。小回りは利くが、ソードボアのような大型種を正面から止めるパワーには欠ける。


「ツカサが正面から敵の注意を引きつけ、その重い一撃を叩き込む。私がその死角から、敵の足を止めたり目を突いたりして、あんたが振るうための『最高の瞬間』を作る。……どうだ?」


アレスは酒で少し上気した顔で、楽しそうに戦術を組み立てていく。俺が頷くと、彼女はさらに具体的な連携を提案してきた。


酒が進むにつれ、話題は戦い方から、これまで潜ってきた修羅場の話や、この街の噂話へと移っていった。100kgの巨躯を預ける木の椅子がギシギシと鳴るが、心地よい疲れが全身を包んでいる。


「……ツカサ、あんたのそのハルバード。ただの力任せじゃない、理にかなった振り方だった。どこでそんな技術を身につけたんだ?」


アレスは興味深げに、壁に立て掛けられた俺の獲物を見つめている。


「アレス あんた魔法は?」


「魔法、か……」


アレスはジョッキの縁を指でなぞりながら、少し困ったように眉を下げた。


「期待させて悪いが、派手な攻撃魔法はさっぱりだ。火の玉を飛ばしたり、雷を落としたりする才能は私にはなかったらしい。だが……」


彼女は精神を集中させるように目を閉じ、折れた剣の残骸を握りしめた。すると、その拳の周りにわずかな「風」が巻き起こり、剣の切っ先が微かに淡い青色の光を帯びる。


「身体強化の類なら多少は使える。一瞬だけ足運びを速めたり、刃に風を纏わせて切れ味を鋭くしたり、といった程度だ。……ツカサ、あんたのハルバードを加速させるような真似はできないが、敵を翻弄して隙を作るくらいなら、この魔法かぜで十分に役立てるはずだ」


彼女は目を開け、不敵に微笑んだ。


「逆に聞くが、ツカサ。あんたは魔法を使うのか? その体格で魔法まで使いこなされたら、魔物たちに同情したくなるがな」



「今はまだ練習中だ。だが、近いうちに使えるようになるという予感がある」


俺の言葉に、アレスは意外そうに目を丸くした後、愉快そうに喉を鳴らして笑った。


「ははっ、その体格でさらに魔法まで習得するつもりか? 恐ろしいな。だが、ツカサが放つ一撃に魔法の威力が乗るとなれば、それこそ城門だって叩き壊せそうだ。期待して待ってるよ」


彼女は最後の酒を飲み干すと、満足げに息を吐いて席を立った。


「さて、今日はここまでにしよう。傷は塞がったが、流石に少し眠気がきた。私はこの酒場の上にある宿を借りている。……ツカサ、あんたはどうする? まだ宿が決まっていないなら、紹介しようか? ここは飯も旨いし、ベッドも頑丈だ。あんたの体格でも、そう簡単には壊れないだろうさ」


窓の外はすっかり暗くなり、夜の冷気が酒場の喧騒の隙間から入り込んできている。明日の朝には、新しい相棒と共に再び森へ向かうことになるだろう。



「ああ、そこでいい。案内してくれ」


俺が立ち上がると、アレスは「決まりだな」と頷き、足取り軽く受付へと向かった。


宿の主人は俺の185cm、100kgという体躯を見ると、一瞬「おっと……」と気圧されたような顔をしたが、アレスが「私の命の恩人だ、一番頑丈な部屋を頼む」と口添えすると、愛想よく鍵を差し出してきた。


「二階の突き当たりの角部屋だ。そこなら床も補強してあるし、ベッドも大型の特注品だ。ゆっくり休んでくれ」


二階へ上がり、それぞれの部屋の前で足を止める。アレスの部屋は俺の隣だった。


「じゃあ、ツカサ。明日の朝、一階の食堂で会おう。あんたが魔法を実戦で披露するのを楽しみにしてるよ。……おやすみ」


アレスはそう言って自分の部屋へ入っていった。


俺も角部屋の重い扉を開け、中に入る。 確かにベッドは俺の巨躯を受け止めるのに十分な大きさだった。背嚢を下ろし、ハルバードを壁に立て掛ける。


一息つき、窓の外に広がる夜の街を見下ろしながら、俺は自分の拳を見つめた。 魔法――今はまだ微かな感覚に過ぎないが、体の中を巡る熱のようなものが、明確に「形」を求めている。この100kgの筋力に魔力が乗った時、俺の振るうハルバードはどれほどの破壊力を生むのか。


心地よい疲労感と共に、俺は深い眠りに落ちていった。


その夜ツカサは夢を見た。


ビル街 電車 車 アニメの画面 


「なんだこれは いや覚えている これは前世の記憶だ 魔法 イメージ 使えるぞ。」


夜が明けるとツカサは昨夜の夢の事をはっきり覚えていた。

「魔法 火 水 風 土 光 闇 雷」小さく呟いた。手のひらから火玉 水玉 風塊 石 土 光玉 闇玉 雷玉 が次々現れては消えていった。


「使える 使えるぞ 魔法が使えるぞ」


身支度をして部屋を出て食堂に向かった。




食堂へ降りていくツカサの足取りは、昨日までとは明らかに違っていた。


100kgの巨躯から繰り出される物理的な破壊力に加え、今やその体内には「前世の記憶」という名の理論と、それによって形を成した全属性の魔力が渦巻いている。昨夜、手のひらで転がした火や雷の感触が、まだてのひらに熱く残っている。


食堂の隅、朝日が差し込むテーブルで、アレスは既にスープを啜っていた。新調したらしい革のベルトに、予備の短剣を差し込んでいる。


「おはよう、ツカサ。……なんだか、昨日よりさらに顔つきが精悍になったんじゃないか? ぐっすり眠れたようだな」


彼女は快活に笑い、向かいの席を促した。


彼女はやる気に満ちている。「昨日の戦いで、自分の課題も見えた。今日はあんたのサポートに徹するつもりだ。……ところで、昨夜言っていた『魔法の予感』はどうだ? 何か掴めたか?」


朝の食堂には他の冒険者たちも数人いる。185cmのツカサが背負う巨大なハルバードと、昨日のソードボアの戦績は既に噂になっているのか、遠巻きに畏怖の混じった視線が向けられている。



「ああ、これか」


アレスは腰元に視線を落とし、苦笑いしながら折れた剣の鞘を叩いた。


「昨日の今日だからな、まだ馴染みの店が開くのを待っているところだ。ギルドに預けてある予備の長剣を一度取りに戻るつもりだが、正直、ソードボア級の相手には心許ない。……昨日の報酬で、もう少しマシな『風の魔力』が通りやすい業物を新調するつもりだよ」


彼女は運ばれてきたスープを一口飲み、ツカサのハルバードに目を向けた。


「ツカサこそ、その武器は大丈夫か? あれだけ激しく振り回して、ボアの骨を粉砕したんだ。刃こぼれや歪みがあるなら、私が行く店で一緒に見てもらおう。あそこの親父は頑固だが、腕は確かだぞ」



「ああ、そうさせてもらおう。道具の良し悪しは命に直結するからな」


ツカサは運ばれてきた朝食を平らげると、アレスと共に宿を出た。


朝の活気あふれる街を歩き、細い路地に入った先にある、古びているが手入れの行き届いた工房。そこがアレスの馴染みの武器屋だった。


店の扉を開けると、熱気と鉄を打つ高い音が響いてくる。奥から出てきたのは、岩のように頑強な体つきをした老店主だった。


「親父、私だ。昨日のボアの群れでこいつをやられた」 アレスが折れた剣を台に置くと、店主は鼻を鳴らしてそれを一瞥し、次にその後ろに立つツカサと、その肩にある巨大なハルバードに目を向けた。


「……ほう、そっちのデカいのが持ってるのは大層な業物だな。だが、昨日の戦いで少々無理をさせたか」


ハルバードの調整 店主にハルバードを預けると、彼は熟練の手つきで刃の歪みを調べ始めた。「重さを活かした断裂……。普通の槍の使い方じゃねぇな。少し刃を厚めに研ぎ直して、重心を微調整してやる。そうすれば、もっと『ぶった切る』衝撃が乗るようになるぞ」


アレスは店主が勧める数本の長剣を手に取り、素振りを繰り返している。「ツカサ、どう思う? こっちは風の通りはいいが、少し軽すぎる気がするんだ。あんたの隣で戦うなら、もう少し粘りのある鋼の方がいいか……?」


ツカサは二人のやり取りの傍ら、棚に並んだ魔石や刻印の施されたパーツに目を向ける。前世の記憶を頼りに魔力を流してみると、特定の石が自分の持つ属性魔力に強く共鳴するのが分かった。



調整を終えたハルバードは、重心がさらに研ぎ澄まされ、振るうたびに空気を切り裂くような鋭い鳴りを見せる。アレスもまた、ツカサの助言を容れて選んだ、粘り強い鋼の長剣を腰に下げ、どこか晴れやかな表情だ。


再び足を踏み入れた森は、昨日よりも静まり返っていた。しかし、それは平和になったわけではなく、より強力な「何か」が周囲を支配している証拠だと、肌を刺すような冷たい空気が告げている。


「……静かすぎるな」 アレスが低く呟き、剣の柄に手をかけた。


二人は昨日の戦場を通り過ぎ、さらに奥へと進む。すると、前方の巨木がなぎ倒され、地面に巨大な「足跡」が刻まれているのを見つけた。


それはソードボアのものよりも遥かに大きく、鋭い鉤爪の跡がある。周囲の樹皮には、強酸で焼かれたような跡や、焦げたような痕跡が残っている。


前世の記憶を魔法として覚醒させたツカサには、周囲に漂う「魔力の残り香」が視覚的に捉えられる。その足跡からは、禍々しい闇と雷の混じった魔力が立ち昇っていた。


「……この先にいるのは、ただの魔物じゃない。ツカサ、準備はいいか?」


茂みの奥から、地響きと共にその姿が現れた。 それは、全身を黒銀の鱗で覆われた巨躯を持つ**「アビス・キメラ」**。 獅子の頭、山羊の胴、そして尾は巨大な毒蛇。ソードボアを遥かに凌ぐ体躯と、その口からは紫色の電撃が漏れている。


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