第一話:指名依頼は波乱の予感っ
2ヵ月前、狐火7人全員がSランク冒険者になった。
冒険者ランクはE〜Sまであり、
才能がない人の限界はBランク冒険者とされていて、
才能がある人でもAランクが限界とされている。
というもの、Sランクになるためには1人で竜を討伐する必要があり、
フローリゼル王国では一世紀(百年)に10人。
だいたい1000万人に1人しか現れないとても希少な人材なのである。
そんな中たった4年で7人全員がSランクになったこの世代は、
後に奇跡の世代と言われるようになることを今はまだ知らない…
それは私がちょうど家に帰ったときだった。
「ルナー」
そう、私を呼ぶ声が聞こえた。
「どうかしたの…?ルア」
さっき私を呼んだのは私の双子のルアだ。
何故かさっきから神妙な趣をしている。
「ルナ…。 別に断ってもいいんだけど…。
ギルドマスターからルナに対して指名依頼があるからギルドマスター室に来いって言ってたんだけど、ルナが指名依頼受けたくないならこっちで断っとくから。」
私達は狐火という冒険者ギルドを立ち上げて約4年ようやく全員がSランクになれたというのに私がこの依頼を断ったからと言って関係が悪くなるのは避けたい。
そしてルアも分かっているのだろう。
指名依頼でギルドマスター室でしか伝えられないこと…。つまり、王族か王族の傍系が絡んでいる話というのは検討がついているのだろう。
私は王様とも話したことがあるが、腹の読めない性格で苦手意識を持っている。
さっき、ルアが“別に断ってもいいけど”って言ってたのは嘘だろう。私が「断りたい」と言いやすいように言ったのだろう。
何故嘘を言ったのか、私にはわからない。だけど、今それを聞いたところでルアは困ってしまうだろう。まるで療養中の人に余命僅かと告げる人みたいに。
なら私は自分の心に仮面を被ろう。ルアが心配しないためにも、ね。
「大丈夫、大丈夫っ、私は指名依頼を受けるつもりだから。
そう言ったら善は急げ!今から行ってきます!」
そう笑顔を仮面に貼り付けながら、心無い言葉を言った。
〜*…〜*…〜*…
「やっほ〜!ギルマス!」
「おぉ、ようやく来たか。
一応聞くがお主本当にルナか?」
紫色の洋服に狐の仮面、見た目はどっからどう見てもルリとそっくりに見える。
久しぶりに会ったがやはり喋り方も似ている。
妹想いのルアならルナのフリをして紛れてくるかもしれない。そうなると少し厄介だ。
「も〜、私がそんな風にしてみんなに迷惑をかけたくないっていうのは知ってるでしょ。」
読心術もあるのか。優秀な人材だな。狐火から引き抜きたいが、そんなことしたら後が大変だ。
そして、読心術も使えるとならば本物のルナなのだろう。
ルナの性格は利になるかならないかで考えている冷たい奴だ。だが、仲間にいたら物凄く心強い。本当に不思議な者だこれほどの力がありながら、狐火の影にいて、鏡のように人のことを一瞬で真似することができる力がある。だから、二つ名は鏡影だ。
それに対してルアは人のことを愛し、困っている人を見捨てず、元気で活発な性格と相まって、人を惹きつける才能がある。極め付けは希少性の高い光魔法。ついた二つ名は聖光の人徳者。
本当に極端な双子だ。
「で…単刀直入に聞くね。私に指名依頼って何?」
「まず、この国には2つの公爵家があることは知っているよな?」
質問を質問で返すなんて。でも答えるかぁ。
「ベル家とエリヌス家だよね。」
「あぁ、それで王様の一人息子の王太子殿下の婚約者候補として有力となっている。そして、3年前にエリヌス家で見つかった魔法鉱山を手に入れるためにも、エリヌス家と婚約するのが一番なのが、ベル家が異議を申し立てていて、王妃の実家だからと国王様も強く言えないまま、現在になっていったんだ。」
魔法鉱山とはとても希少な鉱山で世界に5つしかなく、この国でも1つしかない。
今ので大体予想がついたけど、、、一応聞くか。
「それが指名依頼となんの関係が?」
「今から指名依頼の内容を言おう。依頼主は国王様とエリヌス家の当主様で、ロベリア嬢の護衛をお願いしたい。もちろんのことながら、緊急時でないとき以外は誰かに言うことは禁止だ。」
予想した通りだ。ベル家に命を狙われている可能性があるから、私に守ってもらいたいって言うことか。でも、私にも気になることがある。
「ルアには話してもいいかな?」
「あぁ、ルアならいいがそれ以外の狐火のメンバーにいうことは避けて欲しい。」
もともと、私がいなくてもそもそもそんな影響はないだろう。
私の基本的な仕事はみんなの考えるようなみんなでクエストをやって、仲間とレベルアップするような感じじゃなく、ルアの影武者見たいのをしている。
元々はルアの邪魔をして会議に出られないようにしてくる刺客者が一定数いて、その時に私が大通りでルアの格好をして刺客者を引きつけようとしたのがことの初まり。
この世界では1人につき得意な魔法属性と能力があるの。
もちろん生活をする上で使用する程度の魔法はこの世界にいる誰しもが使えている。
まずは魔法属性。火く水く土く風、基本属性く氷・雷く光・闇
一人一つの属性しかないが、最低限の生活できる魔法は使うことができる。
普通は一人一つまでなのだけど、とある理由で私だけが光魔法と闇魔法が使える。
いや、あともう一人だけ使える人がいたな。
話を戻そう。
私は冒険者をやっているときは闇魔法を。ルアが光魔法の使い手なので影武者をしているときには光魔法と使い分けている.
希少度は基本属性く氷・雷く光・闇
ルアの能力は武器創成でその能力は私と同じなのでよりバレることはなかった。
ルアと私は同じ髪色だけど、目の色は私は青と紫のグラデーションで、ルアは金色の瞳。
私とルアは目の色を隠したらどっちかわからない。しかも、私は人のことを真似するのは得意な方だった。だから、狐の仮面で顔を隠して、そのまま成り行きでルアの影武者になったの。
だから別に断る必要はない。むしろ引き受けたほうが有利に交渉を進めることが今後あるかもしれない。狐火に利があることなら引き受けるのが正解なのだろう。
もんもんと考えているとギルマスの顔がいつになく真剣になった。
「どうか引き受けてもらいたい。」
私が断れないこと知ってて『引き受けてもらいたい』とか言ってて、本当に嫌な人。こんな大人にはなりたくない。
だがそれなりに立場が強い方、媚を売ったほうがいいのかもしれない。
明るく、無垢な少女の仮面を被ろう。それが適切かもな。
すぅーと息を吸い、そのまま明るく、元気に言う。
「もちろん、引き受けますっ!」
だが、ギルマスは気づいていた。
なんせルナが8歳のときから会っているのだ。
弾け飛ばすように明るい笑顔だがコイツにはその顔の裏、仮面の下に隠されている顔が絶対あるはずだ。まぁ、そんな顔を見せることはまずないだろうがな…。
だが、俺も伊達にギルマスをやっている。せめてもの祈りは捧げてやる。
「ふんっ」と鼻を鳴らした後、自信満々な顔で言う。
「いい返事が聞けて良かったよ。君が入学を無事に成功させれるように祈ってやるよ。」
ギルマスが本当に祈っているかは知らないし、どうでもいい。
だけど私にも譲れないものがある。
私は今日も仮面を被る。嘘がウソだとバレないようにするために。
あれから数日が経ったとある日のギルマス室での出来事。
「ふふふ、アナタ私に隠してることあるでしょ〜っ」
そうギルマスに子供らしくいたずらっぽく声をかけたのは、先見の予言マーガレット・ネフライトであった。
彼女の能力は未来を予知する能力で救われたことは数知れず、今回も未来を見てルナに指名依頼があることを知ったのだろう。
「相変わらず元気そうででなによりだ。」
もうバレてしまったかと苦笑気味に返事をしながら、頭を掻くギルマス。
すると思い出したような顔をしてマーガレットに手紙を渡す。
「そういやちょうどいい。これをルナに渡してくれないか?」
うーんとじっと考えるように見つめた後、マーガレットは言う。
「もちろんですものっ!」
そう言った後、付け加えるように、
「ルナになにかあったら、マーガレット怒っちゃうもんねっ」
言いたいことを言いきったのかスッキリとした顔で転移魔法でルナの家にいくのであった。
可愛らしく言っているが、言葉の意味を考えると笑えなさすぎる。ギルマスは冗談だと一瞬思ったが、マーガレットはあまり冗談を言うタイプではないため、怒るというのは本当のことなのだろう。
問題が起きないのが1番なんだがな…
〜*…〜*…〜*…
「お久しぶりねっ」
「こんにちは、マーガレット様。」
この夕日のように煌めく髪に翡翠のように綺麗な瞳。社交界で有名になるほどの美貌だ。
幼い喋り方のためか人にあまり警戒されにくく、私も喋り方を真似しているほど、喋り方にはには尊敬をしている。
「もうっ敬語はやめなさいよ〜っ」
それに加えて親しみやすい性格。人気が出るのも納得の人格だ。
「なにか用があって来たの…?」私がそう言うと「実はそうなのっ…………」と話し始めた。
「マーガレットってば、意図せずに未来を見ちゃうことがあるでしょーう。だから、マーガレットにだけ特別にっ教えてもらったのっ!
そのついでにルナに説明書?を渡してって頼まれちゃったのっ」
嘘だ。本当はギルマスに脅したついでに受け取ったもの。だが、そんな素振りは一つも見せずにいる。そんなマーガレットの姿にルナも思わず騙されている。
「わざわざ持って来てくれてありがとう。」
ギルマスと頻繁に会うとあらぬ事を疑われる可能性があるから、マーガレットに手紙を託したのかな?
そう思いながら説明書を読み始めた。
そこに書いてあったのは主に3つだった。1つ目はこの護衛任務はエリヌス家のご令嬢には教えてはいけないこと。2つ目はなにか問題があれば王太子殿下もお守りすること。3つ目はこの護衛任務は基本的には教えてはいけないこと。
たぶん1つ目はエリヌス家のご令嬢を心配させないようにするためなのだろう。2つ目は何か問題があったら押し付けますって言ってるのと一緒だ。本当に嫌になる。3つ目はこんな依頼他の人に知られたら護衛なんかできなくなる。これは妥当かな。
私が真剣に考えながら、この手紙について考察していると。
思わず気が緩んでしまうほどの笑顔でこう私に声を掛ける。
「久しぶりに会ったんだし、お話に花を咲かせるのもいいんじゃないかしらっ?」
「じゃあ、お茶を用意しますね」
ルナは知らない。お茶を用意しようとしている裏側でマーガレットがイタズラを考えている事を。
ほんっとうに相変わらず可愛げがない子ね…。表情も動かなくて、感情がわからない子だわっ。
でも、マーガレット知ってるのっルナの弱点をねっ!
「わきばらくすぐりっ!」
必殺技みたいにかっこよく言っているが、意味を考えと見ると子供の戦いかと思うぐらいにどうでもいい事だが…ルナなら別だ。
幼少期からの知り合いの中でもごく僅かにしか知らない情報で、希少性は◎なのである。
瞬間ルナはあひゃひゃと笑い出した。
それでも、実際は脇腹をくすぐっているのでは無く、手の動きだけで笑わせているんだ。
なんとも馬鹿らしい話に聞こえてくるがこれでもルナには効くのだ。
「ふぅー、スッキリしたわねっ。もう少し普段から笑っても良いんじゃないの?
そっちの方がぜったい可愛いのにっ……。」
ルナが8歳の頃からあっていたマーガレットにとって、ルナは姪のように可愛い存在であり、同時に双子のルアと違って表情があまり動かないルナを心配していたのだ。
はぁはぁと息切れをしているルナに「長居する予定だったけど気が変わったわっ」そう言い、転移魔法で消えていくのであった。
マーガレットと入れ替わりにルアが家に帰って来た。
ルアに今日あった事を話すか。
「ルア、指名依頼はエリヌス家のご令嬢の護衛だった。」
私がそう言うと、やっぱりかという顔をしていた。私と同じようにルアにもある程度貴族との繋がりもあるため大体は予想していたことなのだろう。
「で、ルナはその依頼を引き受けたの?」
そう聞かれるとすぐに私は答えた。
「引き受けたよ。」
今この瞬間に冷たい空気が漂った気がする。
だが、そんな空気を吹き飛ばすように、偽りの顔でルアが言う。
「それがルナの選択なら私は応援するのみ。」
下手な演技。大根役者みたいに下手な演技。
ずっとルアの隣にいた私には演技をしていることぐらいわかる。
だけど…だけどっ…私にはわからない。なんでだろう?もっと聞きたいこととか、知りたいことがあるはずなのに、なのに何故私に聞かないの??
私には今のルアの気持ちがわからない。言っていることは応援している言葉なのに顔は無理に作り笑顔にしているのが造作にわかる。チグハグだ。
周りの人ならこう言うだろう。
『何故、今のルアちゃんの気持ちがわからない???????』
毎回典型的で同じ言葉をみーんな言う。同一人物かと思ってしまうほどに。
『ーーーーーー・・・キミたちは良い研究材料になるよ…』
、、、嫌なことを思い出した。
もういいや、別に。
他人の感情を読み取る事に欠けている私が理解できるわけないのに。考えるだけ無駄だ。部屋に戻ろう。
ルナが自分の部屋に行く姿を、ルアはただただ黙って見つめるのであった。




