雑文SF「朝起きたら火星人になっていた。うんっ、故郷に帰ろうっ!」
そのタコは朝起きたら火星人になっていた。
とは言っても別に体に変化はない。なので海中でも呼吸困難になる事はなかった。
つまりそのタコは単に火星人だったころの記憶と意識が蘇っただけだ。
そしてその記憶ははるか昔のものだった。なんせまだ火星に海が存在していた頃の記憶である。
あの頃火星は青かった。そして高度に発達した文明はまるで魔法と見まがうような技術を生み出し人々は幸せに暮らしていた。
しかし天災は忘れた頃にやって来る。いや、あれはどちらかというと人災だった。何故ならば奴隷として使役していた地球人が反乱を起こしたからだ。
歴史書ではその反乱の事を『スパルタクスの反乱』と記している。
その反乱に対して火星人たちは断固たる態度で臨んだ。そう、殲滅戦を行なったのだ。
なのでまず火星人たちは地球人たちを押し込めていた『ゲットー』に対して空爆を行なった。その後、ガレキと化した街に対して戦車で侵攻し反乱とは関与していない市民に対してまで無差別に攻撃した。
この行いは火星人たちが信仰していた神の怒りを買った。何故ならばその神は火星人たちに対して『汝、殺す勿れ』と教えていたからだ。
なので神は火星の地での実験は失敗したと判断し、火星全土に洪水を起こして全てを海の藻屑とした。
ただ、火星人ながら唯一地球人に対する残虐行為に反対していた『ノア』をリーダーとする人々には『箱舟』を造り備えるように伝えたのだった。
その後、『ノア』たちは大工の息子だった『イエス』を棟梁として『箱舟』を建造し『メイフラワー号』と名付けた。そして神が下した『ハルマゲドン』の直前に火星から飛び立った。
その後、ノアたちは長い漂浪の旅を続ける事になった。その長い年月の間に指導者は変わり、新しく指導者となった『モーゼ』の代に漸く『約束の地』へと辿り着いたのである。
しかし、その地もまた、原住民たちの『超磁力兵器』を使用した最終戦争により地軸が捻じ曲がり、且つ地殻変動を起こして殆どの大陸が海に沈んでいた。
なので『メイフラワー号』の乗組員たちは仕方なく小さな半島の湾内に碇を下ろした。そして彼らはその地で生きる為に自らの肉体を海中で生活できるように改造した。
だが、この事により彼らは『火』を扱えなくなり技術的進化が止まってしまう。とは言え彼らは時と共にその環境に適応してゆき、彼らの子孫は今も『タコ』としてその星で暮らしている。
しかし、長い年月を経てとうとう再生の時が訪れた。そう、記憶が蘇ったタコには火星時代のまるで魔法と見まがうような高度な科学技術の知識があるのだっ!
とは言っても長い年月により海中で生きる事に特化してしまった肉体では宇宙を渡る船は作れない。そもそも彼らの住む海中という環境では『火』が使えないのだ。
しかし神そんな彼らに素敵な贈り物を準備していた。そう、それは最終戦争を生き抜きその後の地殻変動により再浮上した大陸にて数を増やしていた二足歩行生物であるっ!
そう火星人たちは魔法によってその二足歩行生物を使役できたのだっ!更に知恵を授ける『禁断の果実』を与える事により二足歩行生物たちを進化させ、火星人たちが火星に戻る為の宇宙船を建造させたのであるっ!
その後、自らを『人類』と称するようになった二足歩行生物たちは最初の有人ロケット打ち上げの前に実証用生物として当初予定していたライカ犬に代わり『タコ』を搭乗させた。
本来海洋生物であるタコを使用するのは有人宇宙船用実証実験としてはなんのメリットもないはずなのだが、火星人の魔法によるマインドコントロールにより、その事を疑問に思う人類はいなかった。
かくして、宇宙に打ち上げられた『タコ』、つまり火星人の子孫は地上にいる仲間に対して次のようなみっつのメッセージを送った。
「私はカモメ」
「来たっ!見たっ!勝ったっ!」
「火星は赤かった」
そう、今の火星は昔の面影はなく、海中生活に特化してしまった火星人にはもはや住める場所ではなかったのである。
なので結局タコは火星に戻る事を諦めて、今日もひとり人工衛星と化した宇宙船から赤い星を眺めて最後の時を待っているのだった。
かつてあれほどの文明を築いた火星人たちも今では見る影もない。それこそ時のなせる業なのか。
そんな彼らに昔のみやこ人が詠んだ詩を贈って最後としよう。
驕れる者も久しからず、ただ春の夜の夢の如し
忘れ草 我が紐に付く香具山の 古りにし里を忘れむがため
-お後がよろしいようで。-
パロティの答え合わせ
・ローマ帝国奴隷の反乱
・ナチスのユダヤ人迫害
・イスラエルのザガ侵攻
・ノアの箱舟
・新教徒の新天地移住
・イエスキリストの父ちゃんの職業
・未来少年コナン
・旧約聖書
・モーセの十戒
・楽園追放
・世界初、生物を乗せた宇宙船打ち上げ
・世界初、女性アストロノーツのメッセージ
・ユリウス・カエサル。ガリア遠征報告
・世界初、有人ロケットの打ち上げ成功
・平家物語
・万葉集 大伴旅人
あれ?竹宮惠子著『地球へ』のパロティがないじゃんっ!




