雨、咲かせる「宵音」(2)
あまねさんに連れられてたどり着いたのは、渡り廊下だった。
「ここで、写真を撮ろうと思ってたんだ。」
「いいですね」
「そうだ、今週のテーマが、学校から見える外の景色で、宵音ちゃん、撮ってみる?」
え!こんなちゃんとしたカメラ、使ったことな…
「いいんですか?撮ってみたいです。」
勝手に口が動いていた。
「うん。宵音ちゃんから見る、この景色、私は見てみたいな。」
なんだろう、不思議とこの人だと、よく喋ってしまう。
あまねさんは、首から下げていたカメラを、渡してくれた。
「ありがとうございます」
「好きな角度から撮ってみて。」
やっぱり、この位置からかな…
(わぁ、なんだかこの景色を、独り占めしているみたい。)
カシャ
撮れた。スマホで撮るのとは、やっぱり違う。
見たものを、そのまま切り取ったみたい。
「見せてもらってもいい?」
「はい」
「わあ」
「すごい。素敵な構図。額縁に収まっているみたいで、まさに、日常を切り取ったっていう感じ。」
自分の撮った写真に、自分じゃない誰かが向き合ってくれる。
(嬉しいな)
素直に、そう思った。
「ありのままの日常を、飾りすぎることなく切り取っていて、それでも、綺麗。すごい好きだな。」
「ありがとうございます。」
「上手く言葉に出来ないけど、すごく素敵。」
全然。充分すぎるぐらい、嬉しい言葉。
自分の写真に感想を貰える。
それだけで本当に嬉しいのに、感動してもらって。
こちらこそ、もっと上手に、自然に、言葉にしてお礼を言いたい。
その後、校舎の至る所を、二人で周って、私も、撮らせてもらった。
「そろそろ戻ろうか」
「はい。」
「どう?写真楽しかった?それか、趣味だったりするのかな?」
「スマホで撮るぐらいで、カメラで撮るのは、あまりやったことがないです。」
「そうなんだ、とても素敵な写真ばっかりだったよ。そんな写真が私のカメラに収まってるの、嬉しい。」
「ありがとうございます。」
また、こんな言葉。とっても嬉しいのに、「ありがとう」しか出ない。
もっと上手く、口から言葉が出たらいいのに。
不思議とよく話せる相手とはいえ、多分先輩だし、多少緊張もしている。
そんなことを考えていたら、部室についた。
「ああ、あまねちゃんおかえり、そういえば、名前を聞き忘れてた、名前聞いてもいい?」
「神田宵音です。一年二組です。」
「そうなのね、よろしく。」
「宵音ちゃんにも、写真を撮ってもらいました。」
「そうなの!見てもいい?」
「はい。」
「わあ、素敵。特に渡り廊下のはすごい好き。」
「私もです。」
嬉しい、2人も、私の写真を、好きと言ってくれる。
「額縁みたいになってて、すごく構図がおもしろい。額縁というので、飾ってはいるんだけれど、あくまで写しているのは日常。そんな日常を邪魔せず、むしろいいスパイスになっていて、素敵。」
すごい、数学の先生だけど、こんなにも言葉にできて、それを伝えくれる。
感情が、溢れそう。
「ありがとうございます。」
今回は、「嬉しいです」って付けようとしたけど、言葉が詰まった。
「じゃあ、今日は解散ね、また来週。」
「先生さようなら」
「はい、気をつけてね」
「宵音ちゃん、帰ろうか」
「はい。」
「宵音ちゃん、入部はまだだったね、もし入部するとき、来週また来て、そのとき登録しよう。」
「ありがとうございます、写真部、すごく楽しかったです。」
あっ、あまねさんは、あっちなんだ。
「じゃあ、またね」
「さようなら」
いい人たちばっかりだな…写真部入りたいし、カメラも欲しいなぁ…
貯めてたお金で足りるかな…
来週、活動があるみたいだから、その日ちゃんと入部しよう。




