雨、咲かせる「宵音」
晴れてるな…
今日の授業はあんまり好きじゃない。
渡り廊下に行こう。
授業と授業の間の、ほんのわずかの落ち着き。
渡り廊下に行かないと、1日なんて、乗り越えられない。
そういえば、この間は、人がいたな。
雨の中、濡れるのに、なんだか嬉しそうだった人。
(あ、誰かいる)
あの景色の良さに気づいた人が出てきたのかな…
まあ、そんなことは気にしていられない。
今日を乗り越えるために、渡り廊下は私に必要だし。
いつも通り、人の往来をこちら側から観察する。
「もしかして、ここの景色、好きなの?」
(えっ?私?)
目の前の女子生徒は、言葉を重ねた。
「ごめん、急に話しかけて、私、あまねっていうんだ。ここの景色が好きで、たまに来る。」
まさか話しかけられるなんて…あまねさん。いい名前。
「私も、この景色が好きで、よく来るんです。人や車、私が学校にいる間、同じ時間を違うことをして生きている人っていうか、景色になんだか惹かれて…」
伝わったかな…
顔こそ見れなかったけど、初対面にしては、舌が回った気がする
「よく分からないですよね、すみません」
伝わらなくても、こんなにも初めての相手に話すことができた。それだけで十分。
「分かるよすごく。誰かの日常を、私の日常から眺める。干渉せず、少し引いた目でみる、なんかいいんだよね。」
「そうそう!」とは、言えなかった。
珍しく口の動いた私に、満足していたから、喋る気がなかった。
「そうですね。」
やっとでたのが、ロボットみたいな雰囲気の、これ。
「もうすぐチャイム鳴るから、じゃあね」
「はい」
こんなにも、私は人と話せたのかという驚きと、私の気持ちを共有できた嬉しさ。
分かってもらえた嬉しさ。色んな気持ちが混ざってる。
少し急いで、教室に戻った。
―数時間後―
今日の授業が終わった。
「さようならー」
いつもならこのまま帰るけど、今日は寄りたいところがある。
この前とある教室を通った時、写真部と書かれた紙が貼ってあった。
(活動してたらいいな)
スマホで、写真を撮ることに、最近ハマっている。
そういうこともあって、写真部が気になっていた。
例の教室に着いた。
これ、勝手に入っていいのかな…ってか、今日活動してるの?でも、中で話し声するし…
堂々と、自分の知らない世界へ飛び込む。
そんなことは得意じゃないし、むしろ苦手。
(でも、ここまで来たんだから…)
ガラガラ
(わっ!…あれ?さっきの?)
「さっきも会ったよね?ここは、写真部の部室だよ。」
「あの…ちょっと写真部気になってて」
「そうなの?嬉しい。じゃあこっちきて」
部室に案内してもらった。たしか、あまねさん。
「先生、写真部が気になってるみたいで」
あっ、数学の伊藤先生。あんま話したことないけど…
「そうなの?じゃああまねちゃんと行っておいで。あまねちゃん、お願いできる?」
「分かりました。じゃあ、一緒に行こうか。」
「はい」
あまねさんと、一緒に行動することになった。
どこかへ向かってるみたいだけど…どこ行くんだろう。
「写真部は、基本的には、学校内で写真を撮って活動しているんだ。」
「一年生かな?名前、聞いてもいい?」
「はい、一年二組の、神田宵音です。」
「ありがとう、宵音ちゃん、ね。」
あまねさんに連れられてたどり着いたのは、渡り廊下だった。




