雨の先は「晴美」
今日も朝から部活…大好きなテニスだけど、ちょっと大変だなー。
朝は雨音ちゃんと行きたいけど、しょうがないよな。
中学に入って、私がテニス部に入ってから、雨音ちゃんとの朝は、貴重なものになった。
小学生の頃は、毎日一緒だったけど、中学になると、毎日とまではいかない。
これが、成長というやつかな。
とりあえず頑張るか。目の前の事に、集中することにした。
「お願いします!」
(あー終わったー)
1時間弱の練習。
朝は本当に大変だけど、朝から運動は、やってしまえば、気持ちがいい。
「晴美ちゃん!おつかれー」
「深加ちゃんおつかれ!」
同じクラスの深加ちゃん。さっぱりしてて、仲良くしてくれる。
「朝大変だよねー、私朝きつくてさー」
(一緒だ)
「一緒、朝練ない日は、いつも一緒に行く友達待たせちゃってさ」
「ええーやばー」
私たちは校舎へ入り、教室を目指す。
「今日確認テストやるって言ってたよねーなんもしてない」
「え!テスト!?そうなの!?…あ、」
雨音ちゃんだ、外をみている。たしかに、いい景色だよなー。天気もいいし。
私は席に着いて、用意をした。
(雨音ちゃん…なんかただ景色を見ていただけじゃない気がするような…)
今日は午後練ないし、一緒に帰りたいなー
お昼まで、いつも通りの授業が進んだ。
(やっとお昼だー)
「晴美ちゃん、手、洗いにいこー」
「いいよ!」
彩喜ちゃん。いい笑顔をする子。
お昼だし、雨音ちゃんいないかなー。昨日会えてないし。
「お腹すいたな〜」
結局、雨音ちゃんは見つけられず、お昼が終わった。
その後も授業が進み、学校での1日が終わった。
「さようならー」
「はい、さようならー」
まだ、雨音ちゃんのクラスはやってるな
(その前にちょっとトイレ…)
トイレからでると、もう雨音ちゃんのクラスは、誰もいなかった。
急いで、外へ向かう。
(スポーツしててよかったー)
荷物があっても、ある程度身軽に走れる。
あれ?雨音ちゃん?
今、校門を出た気がする。
(走れー!)
「雨音ちゃん!」
いたー!なんか久しぶりに見た気もする。
「雨音ちゃん見つけた!探したよ!」
「ごめん、私も探していたんだけど、見つからなくて。」
「あははっ!なんだ、一緒だね」
「なんだか晴美と話すのが久しぶりな感じがする。」
「私も。昨日、一日話さなかったぐらいだけどね。」
「一緒に帰ろう!雨音ちゃんと話したいこと沢山あったんだ!」
「うん。ありがとう。」
「雨音ちゃん、私ねー今度部活で海の方まで行くんだーそれで、別の学校と試合するんだけど、その学校が羨ましくてさ。海が近くっていいなー毎日海が見えるんだろうなー。」
(あれ…?聞いてる?あっ!一方的に話しちゃった…)
「楽しみなんだけど、ちょっとめんどくさいなー、遠いし」
「ごめん、ちょっと考えごとしてて、海に行くんだっけ?」
あれ…泣いて…る?でも、笑顔。だけど目元が…
「、えーっ!部活で海に行くんだよ!」
とっさに出たのが、これだった。
「ごめん、海、いいじゃん。暑くなって来たし。」
「それもそうだね!テニスの試合なんだけど、海に入れたらいいなー」
ずっと、この笑顔。
いつもとは違う…表情が変わらなくて、絵を貼り付けたみたい。
ちょっと、心配
「雨音ちゃんのお話も聞きたいな!」
直接心配するより、こんな感じの方がいい。
そう思った。泣いてるの、隠そうとしてたし…
「え?私?そうだな…」
「私は、私は今晴美と話せて、すごく嬉しいな。」
え!嬉しい!
「私もー、なんだか照れる。」
こんなふうに、あんま言われることがあまりない。とっても嬉しい。
「そうだ雨音ちゃん。あの公園行こうよ!あそこで、今日はもう少しお話しよう?」
まだ、雨音ちゃんには、何かが引っかかってる気がする。
お節介かもしれないけど、私は放っておけない。
「分かった。」
すぐ近くの公園、すぐ到着した。
「いつもの象ね!」
象の像。いつもそんなこと思っちゃう。
「お菓子があるともっといいんだけどねー」
「最近は、あんま遊んでないけど、よく遊んでたよね。」
「そうだねー、中学入って、あんまり遊ばなくなっちゃった。」
「あっ、小学生の子も遊んでる。あの子たちも、大きくなったら遊ばなくなっちゃうのかな。」
ちょっと、自分に重ねちゃって、寂しい気持ち。
「なんだか寂しいね。晴美がそんなこと言うの。珍しい。」
「私だって寂しい気持ちになることあるよー!なんなら、たった一日雨音ちゃんに会わなかっただけだけど、寂しかったし。」
めちゃくちゃ本音。
「私も。」
「雨音ちゃんも?なんだか嬉しい。」
私だけ、寂しかったんじゃないんだ…なんか、安心。
それから、結構な時間、二人で話した。
「あっ、なんだか暗くなってきたね。帰ろうか。」
「そうだね。」
そういえば、雨音ちゃんの話を聞くつもりだったのに、
ほとんど私が話しちゃった。
上手くいかないなーホント。
「久しぶりにこんなに沢山話したかもー、ありがとう雨音ちゃん!」
ごめんねー聴いてもらうばかりで…
「こっちこそ、本当にありがとう。」
雨音ちゃんの顔だ…咄嗟にそう思った。
(良かったー)
家まで繋がる坂道に着いた。
「雨音ちゃん、また明日ね!」
「また明日、ありがとね、晴美。」
良かったー、元気になったかな?まあ、あの笑顔が、作られたものじゃないのは、分かる。
自信を持って言える。私の、大好きな笑顔。
雨音ちゃんにつっかえた物が取れたかは、はっきりしないけど、また明日、太陽が昇れば、分かるはず。
「ただいまー」
「おかえり晴美、遅かったね?」
「雨音ちゃんと遊んでたー」
「そう?お菓子あるよ」
「ありがとう!」