快晴、傘はいらないけれど「国語の先生」
時間は…あと5分か。
今日も、予定通りの授業。
教員になって、4年目。
仕事にも慣れてきて、授業も、手こずることは、あまりない。
予定通りに進む、安定的だ。
文字言葉にすれば、いずれは飽きそうな内容に聞こえるだろう。
飽き性な人なら、特に。
しかし俺は、この仕事には退屈していない。
退屈など、できるような仕事じゃない。
俺はそう思っている。
教員の仕事は、授業だけじゃない。
なんなら、授業は、仕事のほんの一部だったりする。
日々の生活で、ハプニングを起こす生徒がいたり、自分が引き起こすハプニングだってある。
本当に、「退屈」とは、程遠いだろう。
(黒板はこのくらいにして、あとは板書の時間を取ろう。)
みんな、ちゃんと書いてるな…ん?
あの子…ああ、木村か。木村雨音さん。
今日も、黒板には耳を向けて、窓の奥を見ている。
彼女はよく、よそ見をしていることが多い。そして…
(気づいたな)
焦っているのが、動作と、表情に出ている。
しかし、もう時間だ。
「はい、では次回はこの続きからでお願いします。」
(頑張れー!)
こんな生徒もいる。
寝ている生徒がいたり、綺麗な字でノートにまとめる生徒、聞いているようで、多分聞いていない生徒、色んな色を使ってノートを彩る生徒。
本当に沢山の子がいる。
授業の様子だけじゃない。
日々の様子からも、個性が出ている。
誰一人として、同じ子はいない。
これも、俺がこの仕事に退屈しない理由。
一番の理由だ。
(あっ)
鐘が鳴った。
「号令お願いします」
「起立」
あー、雨音さんの表情が。
霧がかっているように見える。今日はいい天気なのに。
「ありがとうございました。」
1人の生徒がやってきた。この子は、中村さんだな。
「中村さん、日直?黒板消すよね?」
「ああ、はい。」
「もうちょっとだけ待ってあげてーあと、5分ぐらい」
「わかりましたー」
「ありがとう」
次は…1組だな。