晴れの日と雷と晴「おじさん」
学校帰りの、小中学生がいる。
最近、子供達は、俺ら大人を、軽くバカにしていると思う。
むしろ、世の中を舐めていると思う。
平気で優先席に座るし、挙句の果て、老人が乗ってきても譲りもしない。
バスが混んでいるというのに、詰めもしないで、後から乗る人が乗りにくくなっている。
道に広がって、大声で話す。それが青春だとでも思っているのか。迷惑だよ、迷惑。
(あっ、あんな所にゴミがあるな)
誰だ…?ちょっと言ってやらないといけないな。
言うべきことは言わないと。
「ねぇ、そこに空き缶あるよね?捨てたら?」
「…ねぇ!」
無視だ。やっぱり舐めている。
「おーい、空き缶あるけど」
「?」
「捨てないの?落ちてるけど」
「私じゃないんですけど」
言い返してくるか…これも、最近の子供の特徴だ。
「あんたみたいな子供がやったんだよ、こんなの。だから捨てたら?」
まず、なんでこんなことをするのかが分からない。捨てればいいだけだろ。
「なんでこんな事するかなー」
「知りません、私はこんなことしないので」
「はぁー、そういうのいいから、なんでこんなことしたの?」
「………」
黙ったな、反省しているのだろう。
「だから!なんでこういうことするの!?」
「分かんないです。」
くっ…
「はぁ?舐めてんの?どーせ捨てるのが面倒なんだろ?飲んだジュースの缶くらい捨てろよ」
「さっきも言いましたけど、私が捨てたんじゃないです。」
「嘘言うなよ、俺は見てたんだよ、アンタが捨てるのを」
ホント、口答えばかりだ。
俺がこんぐらいの時は、大人の言うこと聞いてばかりだったのに
「いつ見たんですか?明らかに、捨てられてから時間が経っていると思いますが。」
「うるさいなー!なんでそんな口答えするんだ!普通お前ぐらいのやつは、何も言ってこないぞ」
なんだ?まだ行ってくるか?なぜかこの子の顔から怒りを感じる。
「もう行きますね」
(えっ)
「…おい!逃げるなよ!」
もうダメだな、この町は。
俺が育ったこの町。変わってしまった。変えられてしまった。
…この子なら、話が分かりそうだ。
表情、雰囲気から覇気を感じる。
「おい、あの空き缶、お前のだろ。捨てなよ」
「えっ、えっとあの…私じゃないです!」
(…)
悲しくなる。こんなにも伝わらないと。
言い方だろうか。確かに、高圧的だった…
しかし、しっかりと伝えるには…
「すみません、あの空き缶、あなたが捨ててみてはいかがですか?」
「え?」
大人か。背が高めの、男だ。
「なぜですか?子供たちが捨てたのに」
「本当ですか?それをあなたはご覧に?」
「…みてないですけど、でも、言うべきことは…」
「言うべきではなく、言いたい。では?私にはそう見えましたよ」
「確かに、子供の仕業かもしれません。ですが、確証もないのに、頭ごなしに怒鳴りつける。それ、大人のすることでしょうか?」
「もし、伝えたいのなら、行動で見せるというのはいかがでしょう?」
「行動?」
「あの空き缶、子供たちの前で拾ってみせるのです。少なくとも、この後来る子供たちには、素敵な大人に映ると思いますよ」
…確かに、行動。
言葉でなくても、伝える事はできる…かもしれない。
「分かった。やってみます」
「はい、ぜひ」
制服を来た子供がやってきた。3人程で歩いている。
「ほら、今です」
缶を拾った。
「突然すみません!もしかして、ゴミ拾いしてくれていますか?」
ん?何をこの人は…
「えっ、あなたが…」
この男性が拾えと言ったのに…
「ありがとうございます!あなたのおかげで、綺麗です。素敵ですね!」
大きな声だな…
「…ほら、見てますよ、子供たち」
さっきまでとは比べ物にならないほど、小さな声でそう言った。
見えなくなるまで、3人組は行ってしまった。
「それでは、失礼しますね。ゴミ拾い、本当に素敵なことです」
今度は、小声でもなく、大きな声でもなかった。
あれ、俺は何をするつもりでここに。
とりあえず、この空き缶は持ち帰ることにしよう。




