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バハムート宇宙を行く  作者: 珈琲ノミマス
お掃除開始。クロの清掃大作戦!

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中央会議室と無遠慮な解析班

 エレベーターが音もなく目的の階層に到着する。


 扉が左右に開かれた瞬間、そこには広大なフロアが広がっていた。天井は高く、白を基調とした壁面が四方を囲んでいる。中央には、灰色の巨大な円形テーブルが鎮座しており、その周囲に均等に配置された椅子が整然と並んでいた。


 そのほかには、何もない。


 まるで実験室のように無駄を削ぎ落としたその空間は、静寂と冷たさに満ちていた。


「到着しました。ここがこの施設の中央会議室です」


 ジュンが一歩先に出て、クロたちを振り返りながら案内する。


「この部屋なら、全ての企業の技術・実証データにアクセスが可能です」


 そう言いながらジュンは中央のテーブルに近づき、その表面に軽く指先を触れた。


 すぐに反応があった。テーブル上に配置された複数の端末接続部が淡い黄色の光を放ち始め、中央には立体的なホロディスプレイが展開される。白い壁面にも連動するように映像が投影され、次々と試射場や機動兵器の実験映像、施設内部のライブフィードなどが浮かび上がる。


「各企業のロックがかかっていない情報だけが参照可能ですが……」


 ジュンが説明を続けようとしたそのとき。


「……聞いてませんね」


 小さく溜息をついたのはジュンだった。


 なぜなら、クロの背後にいたアヤコたちはすでに勝手に動き出していたのだ。


 アヤコが先に一歩前に出ると、明るい声で軽く言った。


「よし、誰も止めないし、じゃあ遠慮なく!」


 各自が自分の端末を、黄色く光るエリアに次々と設置していく。テーブル上の光は、それぞれの端末を認識すると黄色から青へと変わり、個別のホロキーボードが浮かび上がる。操作パネルの立体投影がそれぞれの目の前に展開され、独立した作業画面が立ち上がっていく。


「うわっ……これ、良いね~!」


 アヤコが感嘆の声を漏らしながら、周囲をうろうろと歩き回る。テーブルの下を覗き込み、壁の周辺を確かめるように見て回るが、目当てのものは見当たらない。


「でもケーブル……繋げないな~。ソケットどこ?」


 声色は高く、明らかに楽しげだった。目を輝かせながら、アヤコはテーブルの端を指先で探るようにしてまさぐる。


「そんなのは、テーブルの一部を解体すればいい話じゃねぇか」


 無遠慮な口調で言ったのはシゲルだった。すでに自身の端末を操作しながら情報を呼び出し、並行して手元のデジペンでテンポ良くメモを取っている。手書きの情報が次々とホロに浮かび上がっていく中、ちらりとテーブルの構造に目をやり、当然のように言い放った。


「いえ、しないでください!」


 ジュンが即座に反応し、急ぎ足でシゲルの端末が置かれている位置に駆け寄る。


 テーブルの縁に手を伸ばし、小さな突起に指を掛ける。そこをスライドさせると――カチリという音とともに、隠しパネルのようなカバーが開き、内部からソケットユニットが姿を現した。


「縁の突起をスライドさせれば、内部からケーブルポートが展開されます。各種コネクタや変換アダプターも対応可能ですので、そこから繋いでください」


 そう説明するジュンの端末に軽く操作が加えられると、天井の一角が静かに開き、中から一機のドローンが音もなく降下してくる。


 ドローンはアヤコの前でふわりとホバリングし、手にしていたボックスをそっと床に置くと、再び上昇しながら天井の格納部へと戻っていった。


 アヤコはそのボックスを開ける。中には、規格ごとに仕切られた変換アダプターがぎっしりと収納されており、目を丸くしてからジュンを見上げた。


「これで繋げてください。食事や飲み物なども、同様に注文すればドローンが運んでくれます」


 淡々と説明を続けるジュンだったが、次の言葉にはわずかに棘が含まれていた。


「……あと、堂々とメモを取るのはどうかと思いますが」


 その目線は、すでに作業を始めているシゲル、ウェン、スミスへと順番に向けられる。


 シゲルは相変わらずホロの上にペンを走らせ、今表示されている設計図の一部に赤字でコメントを書き込んでいた。隣のウェンも、ホロキーボードとデジペンを器用に使い分けながら、視界に映るデータをテンポ良く書き留めていく。


 スミスもまた、無言で静かに、だが的確に要点を絞った手書きメモを作成していた。


「まあまあ、大目に見てよ。それに、きちんと解析するって」


 アヤコが軽やかな口調で言いながら、変換アダプターの詰まったボックスを抱えて自分の席へと駆け戻る。その背中には、悪びれた様子は一切ない。


「その過程で、データを吸い上げるんですよね?だったら今、メモを取らなくてもいいのでは?」


 ジュンがわずかに語気を強めて問いかけるが、アヤコはさらりと肩をすくめて見せた。


「それとこれは別。うん、まぁ……すぐ終わる予定!」


 そう言って笑うと、ポケットからデジペンを取り出す。スライドする動きでペン先が現れ、それが起動すると同時に、アヤコは楽しげな表情でホロキーボードに向かい、リズムよくメモを取り始めた。


 ジュンはもう一度、深くも浅くもない息をついて目を伏せる。止めても無駄だと悟ったその表情は、どこか諦めと慣れが混じっていた。

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