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バハムート宇宙を行く  作者: 珈琲ノミマス
二度目の目覚め
65/463

黒き忠誠の刃

【投稿予告】追加のお知らせ


今回、投稿したエピソードは短めでしたので、

同じ時間帯に、もう一本のエピソードも投稿いたします。

「最初の仕事だ。……気づいているよな。消してこい」


 バハムートの低い声が静かに告げられる。


「――はい。仰せのままに」


 応じた声は、もはやかつての獣のものではなかった。従順でも、抑圧でもない。魂から湧き出た忠誠が、言葉に宿っていた。その瞬間――ホエールウルフだった存在が、黒き残像を引きながら疾走する。標的は、すでに定まっていた。


 背後。ひそかに追跡していた者――ハンターたち。


 一昨日、クロに「休んでいる」と言われたことを、侮辱と受け取った者たちがいた。あくまで勝手な被害意識。それでも彼らの中では、傷つけられた“プライド”という名の炎がくすぶっていた。


 昨日、クロにぶつかり、逆に転ばされた者もいた。面子が潰された。周囲の嘲笑が耳に残っていた。


 ――だから、集まった。


 目的は、ただ一つ。クロへの“制裁”。


 自分たちの矮小な誇りを守るため、数を頼みに牙を剥いた。だが、その目論見は――あまりにも脆く、儚く、滑稽だった。


 目にしてしまったのだ。


 ホエールウルフを圧倒し、その攻撃を受けながらも一切の損傷を見せない漆黒の巨体。そして、それを操る少女――クロ。


 極めつけは――クロの機体よりも巨大なホエールウルフと、互角以上に戦う姿を見てしまったことだった。あの時点で、すでに戦意など残っていなかった。


 だが――見てはならなかった。


 クロの機体が、血を流していた。それは傷ではない。儀式のように、自ら裂いたものだった。


 そして――ホエールウルフが、“何か”に変わった。


 その瞬間を、目にしてしまった。


 だから、消される。逃げる前に、もうすべてが終わっていた。


 警告も、威嚇もない。ただ、気づいた時には――“それ”が、目の前にいた。


 黒き獣。かつてホエールウルフと呼ばれた存在だったものが、獰猛に、冷酷に、機体へと迫る。


 次の瞬間――仲間の一機が、牙で噛み千切られる。機体の装甲ごと、頭部が無惨に引き裂かれた。


 別の一機は、鋭い爪で斬り裂かれた。中枢を断たれ、制御も叶わぬまま虚空を漂い、爆ぜる。


 重すぎる質量が、突如として一機へ叩きつけられる。避ける間もなく、身体ごと吹き飛ばされ、壁のような隕石に叩きつけられ、バラバラになる。


 残ったのは――ただ一人。


 けれど、その者に向けられたのは、もはや牙でも爪でもなかった。


 黒き焔。かつてのホエールウルフだったものが吐き出したのは、名を持つ技――


「……フレア」


 触れた瞬間、すべてが終わる。熱もなく、音もなく。ただ、存在そのものが消えていく。


 声もなく、叫びも残らず。その最後の一人も、塵となった。


 こうして――目撃者は、完全に消えた。


 数日後。ハンターギルドの報告端末には、数名の行方不明者の名が静かに登録される。


 死の記録はない。ただ、帰ってこなかったという事実だけが、そこに残された。

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― 新着の感想 ―
是非も無し。
瞬殺&全て塵でないと 圧縮通信とかアーカイブメモリーとかで 情報漏れリスクとかないのかな?と思うなど
消されたわ。 容赦ない(・∀・)
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