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バハムート宇宙を行く  作者: 珈琲ノミマス
お掃除開始。クロの清掃大作戦!

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技術礼賛とシゲルの評価

誤字脱字を修正しました。

ご連絡ありがとうございます。

 ウェンの説明は、そこで止まらない。


 マガジンキャッチを押してマガジンを抜き取り、作業台に置く。リアサイトの下にあるボタンを押しながらスライドを引き、弾が装填されていないことを確認すると、そのままチャンバー内部を見せるようにして、身振りを交えながら語り始めた。


「バレルは高強度の圧縮特殊合金を使った特注品で、ちゃんとライフリングも刻んであるよ。それに、クロには前に説明したと思うけど、弾頭に細かいスリットを刻むためのマイクロレーザー、提案の時より増やして六方向から刻み込む仕様にしたの。これで着弾した瞬間に、確実にスラコンが破裂する」


 ウキウキとした様子で内部を示しながら話すウェンは、説明を進めるほどに熱を帯びていく。


「しかもね、ローターの発電効率がいい部材が手に入ったから、全体にかなり余裕が出たんだ。反動で生じるブローバックの運動を、そのままローターに噛ませてる。だから小型モニターも搭載できた。ここ、グリップセーフティの部分」


 そう言って、クロの目の前に突き出すように銃を差し出す。


 クロは自分の手にしているリストレイントに視線を落とし、示されたモニター部分に指で触れる。小さな画面に、残り弾数とバッテリー残量、そして現在セーフティが有効であることが表示された。


「……リボルバーと、同じ感覚ですね」


 その一言に、ウェンは大きく頷き、嬉しそうに声を上げる。


「でしょ! 操作感はできるだけクロのリボルバーに寄せてあるんだよ」


 勢いはさらに増す。


「それからトリガー。壊れにくくて、ゴミが入りにくいようにホールレスのカスタムトリガーを使ってる。ここ、トリガーの上の切り替えで、単発、三点バースト、フルオートを切り替えられるし――」


 そう言ってから、わざとらしく一拍置き、撃鉄部分をこれでもかと見せつける。


「それで、この一見いらなさそうな撃鉄。今回はちゃんと役割を持たせてあるんだ」


 以前、クロに「要らない」と言われた箇所。そこを指し示しながら、ウェンは身を乗り出す。


「リボルバーの時はいらないって言われたからさ、今回はちゃんと必要な役割を持たせたの。トリガーを引くと撃鉄が引かれて、最後まで引き切ると放出バルブを叩く。それで弾丸を射出して、同時にブローバックがかかって、すぐに次が撃てる状態になる。その動きの中でチャンバーに次弾が装填される仕組みなんだ」


 そう説明をひとしきり終え、ウェンは最後に、少し残念そうに肩をすくめながら、搭載できなかったギミックについて語った。


「本当は薬莢も排出したかったんだけど、弾自体に薬莢がないから今回は断念。でもそのおかげで、ジャムる心配はほぼゼロなんだけどね」


 言い終えたウェンの顔は、作り手としての誇りと、抑えきれない興奮で明るく輝いていた。


 その隣でスミスは、口を挟むことなく、少しだけ複雑そうな表情を浮かべながら説明を聞いている。アヤコは、熱量全開で語り続ける親友の横顔を見つめながら、――もしかして自分も、解説に夢中になるとこんな感じなのだろうか、と内心でほんの少しだけ反省していた。


 クロはその空気を受け止めるように静かに息を吐き、手にしていたリストレイントのマガジンキャッチを押す。乾いた小さな音とともにマガジンが外れ、彼は中から弾を一つ取り出した。


 灰色の外郭を持つ球体の弾。掌の上で転がすと、見た目以上に密度を感じさせる重みが指先に伝わる。以前説明を受けた九㎜弾型とはまったく異なる形状に、クロは訝しげに目を細めた。回転で安定させる前提が、そもそも違う。表面の感触や重量バランスを確かめるように、何度か掌の上で転がしてみせる。


 すると、その反応を待っていたかのように、ウェンが自信満々に言う。


「それ、アヤコが設計した専用の特殊形状弾なんだ。前に見せた九㎜の銃弾型が本当は理想だったんだけど、電力供給量が想定より上がったからね。外殻の強度を上げても、確実に破裂させられるようになった。それで球体に変更したんだ」


 ウェンは弾を指さしながら続ける。


「球体にしたことで圧縮強度も上がってるし、内容量はそのまま。形状がコンパクトになった分、マガジン内の搭載数も増やせた。九発だったのを27発までアップしてる」


 クロは弾をそっとマガジンに戻し、軽く頷いた。


「……それなら、問題ないですね」


 短い言葉だったが、そこには十分な納得と信頼が込められていた。


 ――だが、その空気を破ったのは、クロではなかった。


 満足そうに胸を張るウェンへ向けて、シゲルが低く声を投げる。


「ウェン。よく考えたがな……この玩具は、何だ?」


 玩具。その一言に、侮蔑や軽視の色はない。むしろそこに滲んでいたのは、作る側の人間だからこその視点だった。


「玩具って、じいちゃん!」


 アヤコが反射的に声を荒げる。だが、シゲルの真剣な眼差しを真正面から受けた瞬間、言葉が喉で止まった。冗談でも挑発でもない――そこに“裏”があることを察し、アヤコは口を閉ざす。


 シゲルはアヤコから視線を外し、今度はウェンをまっすぐに見据えた。


「クロが望んだ非殺傷って点は、よく分かってる」


 一拍置き、続ける。


「だがな……これじゃ、実戦じゃ使えねぇ」


 その断定に、作業場の空気が一段沈む。


「どこがですか?」


 ウェンは一歩も引かず、真正面から睨み返した。反抗というより、自分の仕事を否定されたことへの純粋な反発だ。


 シゲルは答える前に、一度だけスミスへ視線を送る。スミスは何も言わず、静かに頷いた。


 それを了承と受け取ったシゲルは、ようやく口を開く。


「――いいか」


 指摘が、ここから始まることを告げるように。

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