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バハムート宇宙を行く  作者: 珈琲ノミマス
お掃除開始。クロの清掃大作戦!

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リストレイント

 アヤコの宣告にシゲルが膝から崩れ落ち、情けない叫び声が作業場に響き渡る中、その騒ぎをよそに、ウェンが両手で段ボール箱を抱え、勢いよく戻ってきた。


 そのタイミングを見計らったように、アヤコが動く。解析を終えたオートマンをドローンで持ち上げ、作業台の上から静かに退かすと、空いたスペースの端へと適当に着地させた。


「よし、ここ空いたね」


 作業台が片付いたのを確認し、ウェンが段ボールをその中央に置く。


 スミスは自然な動きでウェンの隣へ移動し、残りの面々は、いつの間にかクロを中心に集まっていた。


 そして――先ほどまで絶叫していたシゲルも、しれっと何事もなかったかのように立ち上がり、当然の顔でクロの横に陣取る。


 あまりにも急な切り替えに、周囲は呆れた視線を向けるが、ウェンだけは気にする様子もない。


 段ボールの蓋を開け、次々と中身を取り出していく。


 作業台の上に並べられたのは、小型の銃が二丁。マガジンが十本。そして、用途の異なる取り付けパーツが数点。


 銃身は黒く、鈍い光を放っている。洗練された現代武器とは違い、どこか古めかしい――それでいて、妙に完成度の高いレトロな意匠。今の時代では不要なはずの撃鉄まで、あえて再現されていた。


「クロの要望を、全部詰め込んだんだ」


 ウェンは胸を張り、満面の笑みで言う。


「スラコン拘束ガン――その名も『リストレイント』!」


 そう言って、作業台に広げられた二丁の銃へ向け、両手を大きく広げる。


「クロのリボルバーに合わせてさ。旧時代の装備を模したデザインにしてみたんだ!」


 誇らしげな声。それは“渡す”というより、“お披露目”だった。


 作業場の視線が、一斉にその銃へと集まる。ただの武器ではない。クロのために作られた、特別な一丁――いや、二丁だった。


「クロの要望どおり、スラコンを撃ち込んで、命中した瞬間に硬化させて拘束できるよ」


 説明を受けながら、クロは一丁を手に取る。見た目よりも軽い。グリップには滑り止めのためのざらついたラバーが施されており、自然に指が収まる。


 握った瞬間、違和感がない。むしろ、最初から自分の手の一部だったかのように馴染む。


 クロは驚いたように、何度も構える角度を変えたり力の入れ具合を確かめるもズレは生じない。


 その様子を見て、スミスが少し誇らしげに言葉を添えた。


「以前、お前の手の癖は把握していたからな。調整はしておいたが……違和感はあるか?」


 クロは首を横に振り、率直な感想を零す。


「しっくりき過ぎて、正直怖いですね。握ることに違和感が全くない。何度持ち替えてもズレないです。すごい」


「本当は私が最終調整したかったんだけどね」


 ウェンが少し悔しそうに言いながらも、完成品のお披露目で気分が高揚しているのか、楽しげな笑みを浮かべる。


「クロの癖を正確に知ってるのは、リボルバーをクロ用に調整した父さんだけだからさ。今度、ちゃんと確認させてね」


 そう言いながら、もう一丁を手に取り、説明を続ける。リストレイントの左側面を見せるように構えた。


「まず、本体外装。宇宙空間や水中、その他の過酷な環境でも使えるように、量子合成カーボンを採用してる」


 軽く本体を叩き、続ける。


「軽くて丈夫。高温でも低温でも変形しない。耐久性と取り回しを両立させた素材だよ」


 さらに指先で細部を示しながら、構造や機構の解説を始める。ウェンの表情は、説明を重ねるごとに一層輝きを増していった。


 聞き手たちの反応は、それぞれだ。


 アヤコは、開発されたリストレイントの出来に満足そうな表情を浮かべつつ、クロの反応をどこか面白そうに眺めている。


 シゲルは黙って話を聞いているが、その目は品定めするように細められ、口元にはニヤついた笑みが浮かんでいた。


 エルデは細かい理屈はほとんど理解していない様子だが、ただただ目を輝かせ、ウェンが説明するたびに感嘆の声を漏らす。


 クレアはクロの肩の上から興味深そうに様子を見ていたが、クロがリストレイントを手に取った瞬間、作業台の上へと移動する。至近距離でクロの手元を見つめ、満足そうに尻尾を振っていた。


 それらとは対照的に、ジュンは終始無言だった。初めて目にする「拘束」に特化した銃と、それを形にした技術力。その異質さと完成度に驚愕しながらも、口を挟むことなく説明に耳を傾けている。


 そして――レッド君は少し離れた位置から、その一部始終を黙って見つめていた。言葉も感情も表に出さず、ただ静かに、作業場の空気を観察するように。

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