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バハムート宇宙を行く  作者: 珈琲ノミマス
お掃除開始。クロの清掃大作戦!

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解析完了と新たな標的

「騒がしっすね」


 店舗側で店番をしていたエルデが、作業場の方から聞こえてくる声に気づき、ひょいと顔を覗かせる。その視線の先に、見慣れた二人の姿を見つけた瞬間、ぱっと笑顔が咲いた。


「お、スミスさんにウェンの姉さん。もう来てたっすね」


「ああ、お邪魔している」


「久しぶりだね、エルデ」


「お久しぶりっす」


 そう返しながら、そのまま作業場へ足を踏み入れる。挨拶を交わしつつ視線を巡らせると、クロがアヤコとジュンの二人に挟まれるように責められている状況が目に入った。


「……ところでクロねぇ、また何かやったっすか?」


 率直すぎる疑問に、場の空気が一瞬だけ緩む。


「いつものことだ」


 短く言い切って、シゲルが手を振った。


「お前ら、そこまでだ。アヤコ、端末が鳴ってるぞ」


 その一言で、クロへの集中砲火は強制終了となる。


 ジュンは素直に一歩引き、

 アヤコは納得いかない様子で口を尖らせたものの、観念したように作業台へ戻った。


 端末を手に取り、着信を確認する。繋いでいたケーブルを手早く抜きながら、クロを振り返る。


「もう! また後でね」


 そう言ってアヤコは軽く息を吐き、気持ちを切り替えるように端末を操作した。直後、空中にホロディスプレイが展開される。


 映し出されたのは、かつてクチグロだったオートマンが、どこから、どの経路を通じて制御されていたのかを示す詳細なログだった。


「これを見ると、発信元はマルティラだね」


 指先でログをなぞりながら、アヤコが続ける。


「マルティラ!? まさか……」


 ジュンが思わず目を見開く。だが、その反応を遮るように、アヤコはすぐ言葉を重ねた。


「ジュンさん、まだ早いよ。これ、どうもおかしい」


 表示がログ画面から宙域図へ切り替わる。星系間の通信ポイントが立体的に浮かび上がり、複数の経路と発信元、同時アクセスの痕跡が一目で分かる形で示された。


「一つの発信元じゃない。見て、全部同時」


 指が次々と光点を示す。


「しかも通常の通信網じゃない。星系間量子通信を使ってる。遅延を消してるんだ」


 場が静かになる。アヤコの説明に合わせ、ホロディスプレイの表示が切り替わり、通信量と更新間隔が数値で示されていく。


「それと、この送られてくる情報量」


 アヤコは表示を切り替え、複数の数値を並べて見せる。


「ほとんど同じ量なんだよね。質も、更新間隔も、ほぼ誤差の範囲」


 指先が一つ一つの値をなぞる。どれも均一で、意図的に揃えられていることが一目で分かる。


「つまり……ここに映っている複数の場所はダミーじゃない。同じデータを、途切れないように同時送信してるの」


 淡々と、しかし確信を持って続ける。


「たとえば一つを残して、他が全部潰れても問題ない。その一つが生きていれば、制御は続くから」


 一つでも十分な構成。それを、あえて複数用意している。だからこそ――。


「これら全部が中継地点。そう考えた方が自然だね」


 アヤコは小さく肩をすくめる。


「悔しいけど……ここは中継だね。その奥に、本体がいそう」


 ホロディスプレイを眺めたまま、クロが問いかける。


「その先は……今の時点では分からない、ということですか」


「うん、残念ながらね」


 アヤコは即答し、少しだけ悪戯っぽく笑う。


「ここから先は、その場所に行かないと確認できない。でも――クロなら余裕でしょ」


 確信に満ちた視線が向けられる。


 クロはそれを受け、口元をわずかに歪めた。


「ええ。楽しみが増えました」


 視線が、再びホロディスプレイへ向く。その瞳の色が、はっきりと変わった。


「後で、詳しい座標を下さい」


 獲物を定めるかのように、浮かぶ光点を静かに睨み据える。


「遊びは、まだ続きますね。――簡単に捕まえられては困ります」


「クロ、悪い顔してる」


 アヤコが苦笑しながら指摘する。


 その言葉に、クロは否定もせず、ただ静かに笑った。獲物を見定めた眼のまま、余裕を崩さない笑みだ。


 会話がひと段落したのを見計らい、スミスが一歩前に出る。


「さて……次は、こちらからクロに話がある」


 そう言いながらサングラスを押し上げ、ウェンへと視線を向ける。


「エアカーから荷物を取ってこい」


 顎をしゃくるような仕草。それを見たウェンは、はっと思い出したように目を見開き、勢いよく頷いた。


「そうだね! 今、持ってくるよ!」


 そう言い残し、作業場を出ていった。


「……まったく。落ち着きがないな」


 呆れたように呟くスミスに、すぐさま別の声が被さる。


「アヤコもだ」


 シゲルが、わざとらしくニヤつきながらスミスの肩に肘を置く。


「お互い苦労するな、スミス。そう思わないか、ジュン?」


 同意を求められ、ジュンは一瞬だけ考える素振りを見せた後、首を横に振った。


「私は、アヤコは落ち着いていると思いますが」


 即答だった。


「そうだよね」


 すかさずアヤコが頷き、腕を組んでシゲルを睨む。


「じいちゃん、ビール禁止」


 ぴしゃりと告げるその一言に、場の空気が少しだけ軽くなっていった。

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