序章 まぶしい目覚め
重厚なお姫様ベッドに、寝息をたてているメイトが眠っている。
もうすぐ夜が明けようとしている頃合い、メイトを揺さぶる者、現る。
夢見心地、メイトはその手の持ち主が、オジのケビンであるような錯覚を起こした。
事前の気配がなぜかなかったその者は、メイトの妹であるジェイミーだった。
「お姉ちゃん、お姉ちゃん」
「ん・・・ん~・・・なに?何かあったの?」
「あったの」
身じろぎからすぐに身体を起こす体勢になるネグリジェ姿のメイト。
「どうしたの?」
ジェイミーはさきほどと発音に変化もなく、姉の顔を見ている。
「お姉ちゃん・・・・・・どんぐり、一個とらなかった?」
「・・・とらなかったよ」
「どう数えても、一個足りないから、お姉ちゃん知らないかな?」
「知らないなぁ」
「じゃあ、いいや・・・どんぐりを求めて、部屋を探すから眠ってて」
「ああ、うん。おやすみ」
「もう、おはようだよ」
情景はもう白み始めて、稜線から朝日が輝きだしていた。
妖精の羽根を背中に持つジェイミーは、カーテンを勝手に開けた。
その光を浴びて、まだ眠いメイトは溜息を吐く頃合い、まくらに勢いよく顔をうずめた。