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第2話 セツの過去(1)

 ――とある村にて…


「ゴラァ!待て!誰が女男(おんなおとこ)じゃー!」


「みんな、逃げろー!ニールがキレたぞー!」


「うわぁー!」




「はぁ…はぁ…くっそ…アイツら…次会ったらタダじゃおかないぞ…はぁ…」


「全くもう…みんなこんなくだらないことやめればいいのに。ね?ニール」


「そんなこと言ってくれるのはお前ぐらいだよ、アテナス」


「そんなことよりさ!見て見てニール!」


 そう言うと彼女の華奢(きゃしゃ)な手から小さな炎が立ち上がる。


「うおー!すげー!どうやってやんだ!?」


「へへ!すごいでしょ。先月からさ、お父さんに魔術を教えてもらっててずっと練習してたんだ!」


「魔術かー、いいなぁー、俺も使いたいなー」


「ニールも一緒に練習しようよ!そしたらできるようになるって!」


「そうだな、やり方教えてくれよ!アテナス」


「うん!えっとね、まずは……」


 心地の良い風と共に、なんの変哲もない日常は過ぎ去ってゆく。僕は今日も例外なく、アテナスと共に遊んでいた。


 アテナスはこの小さな村のマドンナ的存在であり、僕の見た目も相まって、アテナスによく絡まれる僕は村の他の男子たちから(うと)まれているのだろう。だが、どうでもいい。アテナスと過ごすこの日常がたまらなく好きなのだから。いや、きっと僕はアテナスのことが好きなんだ。

 そりゃ仕方がないだろう。なんせ昔から構ってくれる子なんてアテナスただ一人だったのだから。



 ――アテナスは僕のことをどう思っているだろうか。



「……ル、二ール!ちゃんと私の話聞いてた?」


「ん?あ!う、うん聞いてた、聞いてたよ」


「そう?まぁそれでね、ここは………ん?ニール今あっちから、何かすごい音しなかった?」


 そう言ってアテナスが指をさした先には、何やら黒い煙のようなものが立ち上がっていた。…なにか嫌な予感がする。


「見に行こう、ニール」


「あぁ」


 そうして僕たちが駆けつけた先に見たものは、僕たちの平穏に終止符を打つものだった。


「なに……これ……」


 アテナスはその場に立ち尽くしていて動けない。辺りは血だらけで何かに抵抗した跡のある大人たちが倒れていた。


「……!あそこにまだ生きてるヤツがいる!……おい!大丈夫か!ここで何があった!」


「逃げ……ろ…ヤツ…らが……来……る…」


 そう言い残すと、僅かに息のあったこの男も静かに息を引き取った。


「一体…何が…何が起こったって言うんだよ!」


 パニックで何も考えられない。怖い。今まで平和だったのにどうして急にこんなことになってしまったのだ。そんなことを考えていると、そこに2人の黒いローブに身を包んだ男が現れた。


「そっちは終わったか?」


「ああ、残りはこのガキどもだけだ」


「了解、速やかに行動する」


 男たちが何を言っているのか理解できない。そうだ、アテナス、アテナスだけは守らなくては。そう思い彼女がいる方へ目を向けると、彼女は意識を失い、別の黒ローブの男に捕まっていた。


「アテナス!…くそっお前!アテナスを返せ!」


 そう言って立ち向かっていったのを最後に僕の記憶は途絶えた。








 ――どのくらい時間が経ったのだろう。目を覚ますとそこは薄暗い檻の中だった。身体を起こそうとしてみるが、全身が張り裂けるような激痛に襲われる。


「…うぅ…痛い……ここは…どこだ…」


 だんだん視界がハッキリしてきて、周りを見渡してみると、自分と同じ村の人たちが檻に収容されていた。全員意識は無いが息はありそうであった。だがそこには、いつも見慣れた明るい笑顔の少女の姿が見当たらない。


「…そうだ、アテナス…アテナスは…?」


 すると、檻の外から2人組の男がこちらにやって来る。聞き耳を立てると、どうやらその2人は看守らしい。


「しかし、()()()()()()様があのようなことをされていたとは」


「そうだな、この檻の中にいるやつらはどうするんだ?」


「ああ、そいつらは()()したから奴隷商に売るんだとよ」


「なるほど…まあ売れるかも怪しいがな」


「まあ最悪、バカな奴隷商見つけて吹っ掛ければいいんじゃないか?ハハハ」



「…!!?」


(奴隷だと?本当に言っているのか?ついさっきまで村で平穏に過ごしていたのに、奴隷?なんで?とりあえず早く逃げ…ない……と………)


 悲鳴を上げていた身体に限界が来たのか、僕の意識はそこで再び闇に落ちていった。



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