表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/367

89:落陽


「こちらが王都周辺の地形図に防壁構築箇所、それと軍の残存戦力と物資の数でございます」


渡された資料を卓上に広げて確認していく、アリア達と騎士団長もそれを見ながら思案していった。


「…物資は問題なさそうだけど問題は兵士ね、大型への対処が出来ないのは致命的だわ」


「ヒューム大陸では見かけないからな、それに大型でなくとも魔物達は中規模の深層に出る位の強さだ」


グルシオ大陸と違いヒューム大陸は地上に出現する魔物は言ってしまえば弱い、グルシオ大陸は内地に進むにつれてオーガといった強い魔物が現れるがヒューム大陸では相当な奥地かダンジョンにでも行かない限りは強い魔物と出会す事はない。


厳しい鍛練を積んで常日頃から魔物と戦ってる騎士はともかく一般兵達では荷が重いだろう、だがなによりも問題なのは…。


「兄貴が倒れたって聞いて兵達の士気が下がってるのが問題だ」


兄貴の影響力は大きいがそれ故に今回の事は兵士の士気に影を落としている、一度考えが悪い方向に傾いてしまえばそれを上げるのは並大抵の事ではない。


(兄貴ならどうする…いや)


「報告です!魔物の群れが迫ってきました!」


そう考えてるうちに兵士が駆け込んで来る、場に緊張が走るが俺は兵士の方へ向いて声を掛ける。


「魔物達はどれくらいで着く?」


「距離と移動速度から三十分ほどかと!」


「分かった」


それを聞いてから騎士団長の方へと向き直った。


「騎士団長、全軍を集めてもらえますか?」


「構いませぬが…総出で迎え打つのですかな?」


「いえ…ただ少しばかり良いでしょうか」


俺はそうして騎士団長に考えついた方法を伝えた…。










―――――


防壁の外で俺は剣を手に一人で歩いていた。


集まった兵士達は防衛から後ろに集めて貰っていた、これからする事を見てもらう為に。


アリア達には他に魔物の群れが現れないか警戒してもらっている、もし現れたら対応して貰える様に見晴らしの良い場所に待機していた。


目の前に魔物の群れが現れる、そこには俺の三倍はあるんじゃないかという巨人の魔物を筆頭として雄叫びを上げながら迫ってきた。


「…すまない」


魔物達の胸にはあの水晶がある、おそらく彼等は魔物にされて戦わされているのだろうが現状では殺す事でしか止める事は不可能だった。


…だから。


「軍装展開“黒纏う聖軍(カオスクルセイダー)”」


俺に出来るのは一瞬で終わらせてやるくらいだ。










―――――


魔物達を全滅させて戻ると防壁から見ていた兵士達は一様に畏怖の眼差しで俺を見ていたが同時に期待する輝きがあった。


…悪くない反応だがこれではまだ足りない、兄貴がいた位置に俺が代わるだけでは意味がない。


跳躍して防壁の上に登ると鎧を解除する、そしてなるべく傲慢に見える様に兵士達を見下ろした。


「情けないな」


風の魔術で全員に聞こえる様に響き渡らせる、兵士達は一部を除き呆然とした表情を浮かべていた。


「大の大人が揃いも揃って兄貴一人に死にかけるくらい戦わせて、いざ兄貴が倒れたらもう無理だと思って諦めようとしている…そして今度は見下してた俺に縋る気か?」


少しだけ抱いていた感情を乗せながら口にする。


「俺はこの国を救おうだなんて思ってない、理由は分かってるだろ?俺がお前等に、お前等の家族に、この国にされた事は随分有名になったみたいだからな」


それを聞いて何人かは眼を逸らしたり顔を俯かせる、心当たりがあるのだろう。


「だが国王はそんなお前等を守る為に俺に身を切って助けてくれと頭を下げてきた…だから、仕方ないから守ってやるよ…で」


魔力を放出して威圧しながら句切る、そして。


「お前等はそれでいいのか?」


そう問いかけた…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ