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9:決闘


(女だったのか…)


件の剣士であろう少女を背に庇いながら小剣を地面に刺す、今回の異常事態の原因であろう魔物に手斧を向けながら回復薬(ポーション)を少女の口へと押し込んだ。


「んぐっ!?…んっ…ぷは!」


「おい、あの魔物が何か分かるか?」


「…分からない、とりあえずボスメイルって呼んでるのと泥や剣を出す魔術を使うくらい」


「充分だ、後は俺がやる」


小剣を再び手にしてボスメイルと対峙する、ボスメイルは剣の鋒をこちらに向けてから構える。


直後に距離を詰めて振り下ろされた剣を手斧と小剣を交差させて受け止める、ただ頭の中ではさっきの動作に疑問が浮かんでいた。


「なんで魔物が一騎討ちの礼を?」


剣を相手に向けるのと先程の構えは古い時代の騎士が行う決闘の作法だ、今でも騎士がいる国では御前試合や模擬戦で行われている。


頭に浮かんだ疑問は押し込まれる剣を前に頭の片隅へと放り投げる、魔力を滾らせて身体と武器を強化して一気に弾き返した。


「なんにせよ、受けてやるよ!」


小剣を逆手に持ち替えながら手斧を振るう、剣で防がれるがすかさず小剣で下から斬り上げると手斧を鍔元で受け止めながら剣を動かして小剣を止められる。


(並の剣と腕じゃないな)


息つく間もなく両腕を振るって猛攻に入る、だがボスメイルは剣で受け止め、鎧の表面で受け流してこちらの攻撃を的確に捌いてくる。


一見すると俺が攻めてる様に見えるが実際のところはこのままでは疲弊したところで斬られるだけだろう。


「なら、“風の加護(フォローウィンド)”!」


詠唱して全身に風を纏う、魔術の気配にボスメイルが警戒を強めるのも構わず小剣を突き出す、ボスメイルはこれまでの様に剣で防ごうとするが。


纏う風が軌道を変化させて腹へと刺さった。


「っ!」


「まだだ!」


素早く小剣を戻すと風で加速させた手斧を叩き込む、続けざまに風による加速と減速でタイミングをずらしたりフェイントを入れる事で着実に攻撃を当てていく。


不意に足下が沈む感触が伝わる、足の甲まで泥に沈んで動きが止まったところをボスメイルは剣を真一文字に振るってきた。


風跳(ウィンドステップ)”で泥を撥ね飛ばし跳躍して剣を避けると風を纏った足で兜に蹴りつける、風を纏った蹴りの威力にボスメイルは数歩後退するが即座に体勢を直して剣を構える。


(かってぇ…だが通じてる!)


これが冒険者として辿り着いた戦い方だった、兄貴は全属性の上級魔術を使えたが俺はどれだけ努力しても中級までしか使えず、しかも威力や効果も兄貴と比べれば拙いものだった。


だから魔術の威力を上げるのではなく、発動の速度と安定性をひたすら高めて自身の強化と補助に徹底させて自分のアドバンテージを活かす形に変えた。


これがあの窮屈な世界にいたら、見出だせなかったであろう俺らしい戦い方だった。


「らぁっ!!」


風を纏った手斧を振り下ろす、しかしボスメイルは剣で受け流すとそのままこっちに斬り掛かってくる。


小剣で防ぐが伝わる衝撃の重さに自分から跳んで衝撃を逃がしながら転がる、起き上がるとボスメイルは剣を構えたままゆっくりとこちらに近付いてきた。


(下手に攻撃するのはやめて魔力切れを狙ってきたか…それにあれだけ攻撃したのに動きが鈍くなった様子もない)


良く見れば傷が少しずつであるが小さくなってる様にも見える、時間経過で治るのだとしたら長期戦は消耗するこちらの方が不利だ。


(ポーションはさっきので最後だしな…次で勝負に出てみるか)


小剣をしまうと手斧を両手で持つ、そしてお互いにジリジリと距離を詰めていった。


あと一歩でボスメイルの間合いに入る、ボスメイルの剣と俺の手斧ではリーチに差がある以上こっちが踏み込んでもボスメイルには届かない。


永劫の様に思えた睨み合いはボスメイルが剣を上段に構えた事で終わりを告げる、そして一拍の間を置いて踏み込みと同時に剣を振り下ろしてきた。


(ここだ!)


こちらに迫る剣に手斧をあてがう様に振るう、そして剣が手斧の刃元の内側に当たった瞬間、全身を捻る様にして手斧を回転させて剣を巻き上げ、弾き飛ばした。


「オォォォラァァァァッ!!!」


弾かれてがら空きになった胴に風と火を付与して限界まで振りかぶった手斧を叩きつける、鼓膜が破れるのではないかと思うほど凄まじい音が部屋に響き、ボスメイルの腹に突き刺さった…。

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