表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/367

84:終わりなき襲撃(バドルside)


ベルガ王国王都付近。


魔術によって構築された防壁を境に兵士達と魔物達が争っていた。


盾を並べた兵士達に向けてと獣と人が合わさったかの様な魔物達が跳び掛かる。


「来たぞ!備えろ!」


魔物達の太い腕が盾を破壊する、盾を破壊されながらも兵士達は槍を一斉に突き出した。


魔物達は槍に貫かれながらも再び兵士達に向けて迫ろうとした瞬間に後方から一斉に放たれた魔術が魔物達をふき飛ばした。


「第一陣後退!第二陣は前へ!」


すかさず武具が壊された部隊が後退すると後続の部隊が前に出て盾を並べて陣を構築する、そして先程の様に襲い掛かる魔物達を撃退しては交替を繰り返していたが。


「くっ!?またデカいのが…」


魔物達の背後から二階建ての家屋に匹敵する巨体を持つ魔物が姿を現す、皮膚が剥がれて筋肉が剥き出しになった狼の様な魔物は虚ろな眼で兵士達を捉えると口から唾液を垂らしながら吠える。


魔力を伴った咆哮は兵士達の体のすくませるが後方からひとつの影…バドルが飛び出して魔物の前に立った。


「“炎嵐(ファイアストーム)”…」


バドルの右手から炎の嵐が噴き出して巨狼を焼く、だが巨狼は肉の焼ける臭いを撒き散らしながら牙の並んだ顎を開いてバドルに突進してきた瞬間…。


「“五連(ファイブ)”」


炎の嵐が()()()()()()()した。


爆風と炎が巨狼の口内を通って内部を焼き、続けざまに放たれた炎は体の半分を炭化させて巨狼をふき飛ばした。


…魔術を発動するには詠唱が必要になる、そして規模が大きかったり複雑な構成になるほど詠唱や魔力の消費は増えていく。


だがバドルは独自の研究と研鑽の果てにひとつの詠唱で発動する魔術はひとつだけという常識を覆す方法を編み出した。


「“炎の雨(ファイアレイン)一点集中(ポイント)”!」


離れた位置にいた大型の魔物に炎の雨が襲い掛かる、本来なら広範囲に火の玉を降らせる魔術だが生み出された火の玉は全て魔物へと向かって降り注いだ。


状況に応じて詠唱を追加する事で魔術の連続起動や構成や効果を変化させて発動する技術。


改変詠唱(アドリブスペル)”、これこそがバドルをベルガ王国最強の魔術師にして怪物と称されるほどの才を形にしたものだ。


「くっ…」


「バドル様!」


護衛の騎士がバドルの横に駆け寄る、ふらついた体を支えると肩を貸して一緒に歩く。


「バドル様、少しでも休んでください!これ以上戦えば貴方の体が保ちません!」


「そういう訳にはいかないよ、大型は現状私にしか対応できない…有効な手段が見つかるまでは私が頑張らなければ」


「そう言って二週間以上ろくに休まずに戦っておられます!これ以上戦うならば縛ってでも休んで頂きますぞ!」


騎士に半ば担がれる様に運ばれながらもバドルは思考を止めない、この状況を打破できる手段はあるか…それとも王都を放棄して少しでも多くの人が逃げれる可能性に賭けるか、どれが最善かを疲弊した体に鞭打って考えていると…。


「ようやく弱ってきたな」


「っ!?バドル様!」


悪意を多分に滲ませた声が響いた瞬間、騎士はバドルを突き飛ばす、顔を上げたバドルの視界に入ったのは肩から腰まで斬り裂かれた騎士の姿だった。


騎士を斬ったのはボサボサの髪に元は高級だったのだろうぼろぼろの服を着た男だった。


手には鍔に妖しく輝く水晶がある異形の剣を手にしており、淀んだ眼でバドルを睨む。


「…まさか、グレブなのか?」


「そうさ、万年二位の俺を覚えてくれて光栄だよ神童君!!」


グレブと呼ばれた男は狂気を孕ませながらそう叫んだ…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ