72:貴方なら
「やっちまった…」
両脇で眠るアリアとセレナを見ながら頭を押さえる、今回は酔った訳ではなく自分の意思で行ったから言い訳もできない状況だった…。
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上層部を片付けてからも問題は山積みだった、民達の寝泊まりする場所を確保する為に騎士団の兵舎を解放したり救援が来るまでの食料や水の確保等といった様々な対応をしなければならなかった。
幸いにも食料や物資の保管庫といったのはこちらの区画にあったお陰でそこまで逼迫しなかったが今度は防壁の壊れた箇所を塞いだり生存者の救助や瓦礫を撤去して使えるものを集めさせる為の人員配置と三日程は休む暇もなく働いていた。
「ベルクよ、そろそろ精を寄越せ」
ようやく状況に余裕ができたところでルスクディーテが催促してきた、あまりに直接的な物言いに同じ部屋で三人がやっていた作業の手が止まる。
「…もう少し言い方をなんとかできないのか?」
「交わる事を風情なく遠回しに言う趣味はないのでな、それに大体は片付いたのだろう?
ならば我等を抱く時間くらいはあるであろう」
「…分かった、今夜そっちに行くから今はこっちをやらせてくれ」
ルスクディーテは満足そうに微笑みながら剣の姿になる、戻るならこの微妙な空気をなんとかしてからにして欲しかった。
「えっと、交わるというのは…」
「…アリア、俺は外の巡回に行ってくるから説明は任せた」
「え?」
アリアが返事する前に部屋を後にする、流石に聖女相手に親友とその契約相手を暇があれば抱いていると言うのは抵抗があった。
(まあ、うん…二人で話す時間も必要だろうしな)
自分にそう言い聞かせながら外へと向かう、現場の状況を見るのも必要な事だ。
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夜になってからアリアが使っている部屋に向かう、ノックをすると返事があったのでドアを開けると伸びてきた手に掴まれて引き込まれた。
「待ちわびたぞベルク」
ベッドに倒されて覆い被さる様にルスクディーテが迫ってくる、蠱惑的な輝きを宿す瞳が一層輝いていた。
部屋を見渡すと壁側にアリアとセレナがいた、アリアはふいと目を逸らしてセレナは顔を赤くしながらもこちらを見ていた。
「…アリア、状況を教えて欲しいんだが」
「私に説明全部押しつけた誰かさんは少し搾られた方が良いんじゃないって言っただけよ」
どうやら昼間の事を根に持たれたらしい、それは分かったが何故セレナまでいるのか聞きたいのだが…。
「安心するが良い、二人の分は残してやる」
聞くのは後になりそうだ…。
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「それで、なんでセレナがいるんだ?」
満足気な表情を浮かべながら横になるルスクディーテを置いて問いかける。
「セレナもこれから加わる事になったの、初めてなんだから優しくしてあげてね?」
「な…」
「大丈夫だとは思うけどまだ激しくなりそうならまず私が相手するから」
「いや待て!セレナは親友なんだろ!?親友が俺とそういう事するのはどうなんだ!?」
「…姉さん達も抱いてるのに今更過ぎない?」
アリアが呟いた言葉に思わず喉が詰まる、言い返す言葉が出る訳なかった。
「…それにベルクの相手が私とルスクディーテだけだと壊されちゃいそうだし、満たされなくて見知らぬ誰かとされるよりはセレナの方が良いもの」
「人を盛った獣みたいに言うな…」
「あの…私じゃ駄目でしょうか?」
セレナが今にも泣きそうな顔をして聞いてきたので首を横に振りながら答える。
「抱けるなら抱きたいが君は良いのか?アリアから聞いたとは思うが俺はアリアの姉達にも手を出す様な男だぞ」
俺の問いかけにセレナは頷く、顔を赤くしながらか細い声で答えた。
「貴方なら良いです…いえ、貴方でないと嫌です」
セレナはそう言って潤んだ瞳で見上げてきた。
「私の純潔、奪ってもらえないでしょうか?」
これ以上言い募るのは余りにも野暮だろう…。
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「くはは、やはりお主の精が一番良いわ」
頭を抱えているとルスクディーテが話し掛けてくる、いやらしい笑みすら絵になるが今はイラっと来る気持ちの方が勝る。
「しかしより搾り取るならもう一人くらい増えても…」
「増やしてたまるか!」
皇家だけでなく聖女にまで手を出してしまったのだ、これ以上増えたら俺の体と心が持たない。
「仲が良いですね」
ルスクディーテと言い合っているとセレナが声を掛けてくる、うるさくしてしまった様だ。
「あ…すまない、起こしたか」
「いえ、それよりも昨日はありがとうございます」
「いや、礼を言うのは良い思いをした俺の方だと思うが」
「ふふ…アリアの言ってた通りですね、ベルクさんは目付きは鋭いけど懐に入れたら優しいって」
「…さん付けと敬語はやめてくれ、むず痒い」
顔を逸らしながら言うとセレナは微笑みながら身を寄せてきた。
「ええ、よろしくねベルク」
ひとまずセレナを助けるという目的は果たせたと思って良いだろう。