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68:生命の到達点


それはあらゆる生物の頂に座する者。


大地を駆ける為に強大な骨肉を得た。


海原を泳ぐ為に強靭な鱗と尾を得た。


天空を翔ぶ為に巨大な翼を得た。


隠れ潜む命を見つける為の鋭敏な五感を得た。


あらゆる命を喰らう為に強靭な顎と爪牙を得た。


全ての頂点に立つ為に深い智恵と魔力を得た。


吐き出す息すら武器となした我こそ生命の到達点(ハイエンド)、即ち竜なれば…。










―――――


黒剣を受け止めたロウドが纏ったのは白亜の鎧だった、竜を模した兜の赤く輝く眼と牙が並んだ面頬は本能的な恐怖を煽る。


全身を覆う重厚でありながら鈍重さを感じさせない白亜の装甲は己こそ至高の存在だと誇示するかの如く輝いていた。


鍔迫り合いから互いに後ろに跳ぶと街の中央へと向かいながら剣をぶつけ合わせる、地面を蹴って建物の壁を跳躍して距離を取ろうとするとロウドの剣の柄が伸びて槍となり、薙ぎ払いが放たれた。


薙ぎ払いの衝撃は足場にした建物を破壊し、俺はすぐに跳躍して逃げるがロウドも俺に向けて跳躍しながら槍を振りかぶる。


半月斧(バルディッシュ)を手にしてロウドに振り下ろす、振るわれた槍の穂先と半月斧の斧刃が衝突した衝撃で互いに弾き飛ばされた。


互いに剣を手にして斬り掛かる、俺達が剣をぶつけ合いながら動く度に余波で建物が壊れていき瓦礫と土煙が舞い上がった。


街の中央広場まで到達したところで再び鍔迫り合う、互いに刃を鳴らしながら押し合っているとロウドが話し掛けてきた。


「カオスクルセイダー…幾多もの魂を力に変えるレアドロップか、素晴らしい…これまで戦った戦士や魔物達とは格が違うな」


鍔迫り合いを解いて互いに距離を取る、ロウドは歓喜に体を震わせながら俺を見ていた。


「運命よ、貴様には感謝しなければならんな!これほどの者と巡り合わせた事を!フィフスの思惑に乗ってやった甲斐があったというものだ!」


「フィフスとは何者だ?レアドロップを集めて、お前等はなにを企んでいる!?」


「知りたいのならば力ずくでだ、力のみが俺を動かす唯一の手段…貴様の様な強者と戦う為に俺はこの道を選んだ」


「…それが伝説の冒険者の成れの果てか!?」


剣が軋むのではないかというほど握りしめながら叫ぶ、ごちゃ混ぜになった感情のままに。


「アンタの伝説を誰もが耳にした!アンタは冒険者の憧れだったんだ!!それがこんな…」


「ふ…」


俺の叫びをロウドは一笑に付すと白亜の光を帯びながら剣を構える、俺も魂達を励起させて剣を構えた。


漆黒と白亜の刃が火花を散らす、互いの位置を何度も入れ替える様に動きながら刃が交差する度に激しい金属音が鳴り響いた。


下から振るわれた剣を蹴りで弾く、即座に繰り出した突きが鎧の表面で受け流されると続けざまにタックルでふき飛ばされる。


間を置かず振り下ろされた剣を手甲で受け止める、こちらもお返しとばかりに剣を振るうが同じ様に手甲で受け止められた。


互いに剣を放すと斧槍(ハルバード)を手にして薙ぎ払う、剣を槍に変えたロウドが穂先を下から弾く様に逸らした。


ロウドはそのまま槍を回転させながら迫る、斧槍から手斧と小剣へと変化させて幾度も迫る槍を弾き、受け止める。


槍を小剣で防ぎながら反撃で振るった手斧が持ち上げられた柄で防がれる、するとロウドは槍を蹴り上げて槍と共に小剣と手斧が宙を舞った。


すぐさま別の武器を出そうとした瞬間にロウドが俺の首を掴む、首を掴んだまま走って壁に叩きつけられる。


「がっ…」


「クハハ!」


そのまま幾つもの建物をぶち抜きながら叩きつけられ、上へと跳躍すると広場の方へと放り投げられる。


地面を転がりながら崩れた像の前で倒れる、ロウドは少し距離を取った場所に降りると鎧の一部を剣へと変えながら語りかけてきた。


「ベルク、お前もこちらへと来い…常人が抱くくだらぬものに執着せず本能のままに、自らの本性を露に力を求めればお前はもっと強くなれる、より大きな力を手にできる」


「それが…なんになる!」


立ち上がりながら言い返す、カオスクルセイダーに込められた思いはそんなものじゃない。


「この力は…例え裏切られたとしても、報われなかったとしても!それでも戦う力がない人達を守る名誉の為に!己が誇れる戦いをする為に託された力だ!

ただ自分の為だけに力を手にして使ったところで…なんの意味もない!!」


「それがくだらぬものだと言っている」


俺の言葉をロウドは一瞬で切り捨てる。


「名誉、栄光…所詮は弱者が強者の力を利用する為に綺麗事で飾り立てた仮面に過ぎん、そして多くの者がその仮面によって己の本性を晒す事を…己が為に力を求める事を出来ずにいる」


ロウドの体から白亜の光が溢れ出す、光は圧倒的な力を内包しながら輝きを増していった。


「ベルク、お前に付けられた仮面…俺が剥ぎ取ってやろう」


ロウドの背から翼が拡がって飛翔する、剣へと集約された光は太陽が間近に迫ったかの如く輝きながら落ちてきた。


「くっ!?」


すぐさまその場を飛び退いた瞬間、光が広場へと落ちた。


光は広場を中心に地面を走っていく、そして内包された力は地を砕き、建物を破壊していき、魔物に寄生された者も逃げ遅れた者達も等しく呑み込んでいった。


ハインルベリエの居住区を破壊の光が迸った…。

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