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66:情欲の麗焔(アリアside)


「はああああっ!!」


炎の刃を振り下ろす、男は左手で払う様にして刃を弾くが弾かれた勢いを乗せて回転しながら逆側に斬りつけたが剣で防がれる。


脚にも炎を纏って男の背後に回り込む、振り返りもせずに後ろに回された剣で受け止められた。


「くっ!はあ!」


周囲を跳び回って四方八方から斬り掛かる、だけど一撃一撃を剣で防がれ手甲で弾かれ僅かに体を逸らすだけで無力化される。


「筋は悪くないが…青いな」


男は剣でいなしながら逆手に持ち変えると柄頭で腹を突く、軽く小突かれた程度のものなのに鈍い痛みが走って私は綿の様にふき飛ばされた。


「かはっ!?」


「アリア!…“聖涙矢弾(ティアーズボルト)”!」


セレナの傍まで転がった瞬間、セレナは複数の水の矢を生み出して高速で発射した。


男は白亜の剣に魔力を込めると迫る全ての水の矢を斬り裂き霧散させてしまった。


「そんな、魔術を斬るなんて…」


「魔術は所詮魔力による事象に過ぎん、この程度の魔術なら同じ量の魔力をぶつけてやれば打ち消せる」


男の言葉に二人して唖然とする、男の言う事は確かに理論上は可能だが現実的に不可能な技術だからだ。


確かに魔術を構築している魔力と同じ量の魔力をぶつければ対消滅を起こす事が出来る、だがそれは全く同じ量の魔力をぶつける事で起こる現象なのだ。


この男は高速で飛来する魔術を見切り、必要なだけの魔力を込めて斬り落とすという神業といっても差し支えない技を事も無げにやってみせたのだ。


「この程度か?まだあるのならば全てを引き出せ、お前達の全力を見せてみろ」


男は再び棒立ちになって手招きする、今私達が無事でいるのはこの男の気まぐれだと如実に物語っていた。


だからこそ…。


「セレナ、私が前に出たら下がって結界を貼って」


「アリア、そんな事…」


「お願い、私を信じて」


セレナは私の本気を感じ取ってくれたらしく少しして頷いた、私は立ち上がって息を整えると男に向けて駆け出す。


男が興味を失ったかの様な顔を浮かべた瞬間…。


「焔装展開、情欲の麗焔(ルスクディーテ)!」


力を込めた言葉と共に私の体を焔が包む、焔は身を包む紅蓮のドレスへと変わり、手足には鳳の脚の様な紅蓮の具足が装着された。


足の爪で地面を掴むと同時に溢れ出しそうになる力を紅剣へと集約させる、紅剣から紅蓮の焔が噴き出して火柱の様になると熱風が周囲に拡散した。


「“紅炎閃刃(プロミネンススラスト)”!」


自分の持てる全ての力を込めて振り下ろす、火柱と化した焔は凄まじい衝撃と共に熱波を撒き散らして瓦礫と土煙を巻き上げた。


「…展開まで至っていたか」


土煙の向こうから声が耳に入る、土煙が晴れるとコートの端が少し焦げた程度で私の一撃を受け止めた体勢の男が立っていた。


「中々の威力だが無駄がありすぎる…未熟だ」


男はそう言うと一瞬で距離を詰めて私の腹に拳を打ち込む、あまりの威力と展開の急激な消耗によって焔装が解除される。


「アリア!」


首を掴まれて宙吊りにされる、それでもこちらに来ようとするセレナを手で制した。


「まだそのレアドロップの力を完全に使いこなせてはいない様だな、この大陸の騎士や並大抵の魔物は屠れるだろうが俺には届かん」


「…そんなの、分かってる」


「…?」


「私が弱いだなんて、分かってる…」


展開に至ったといってもベルクの様に制御できてる訳じゃない、ルスクディーテの力を使いこなせるだけの技術や経験が今の私にはない、だから…。


「私は、今の私にやれる事をやるだけよ…」


彼が来る迄にこの場を繋げれば良い…。













曇天に一騎の影が現れたのがアリアの瞳に映る、賭けに勝った事への安堵が笑みになった。


「軍装展開…」


漆黒の軍馬から跳び降りた影が黒い嵐を纏う、嵐は鎧となって漆黒の騎士を呼び覚ます。


黒纏う聖軍(カオスクルセイダー)!」


漆黒の騎士が男へと斬り掛かった…。

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