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50:信仰の国


ミルドレアを出発してから一週間後…。


「おっとっと…」


手綱を引いて速度を緩めさせる、普通の馬とは比べ物にならない速さと疲れ知らずなガルマのお陰で普通なら十日は掛かる道のりを三日も早く進められた。


「お疲れ様、ガルマ」


鞍から降りてアリアが撫でるとガルマは鼻を鳴らして頭を下げる、どうやらガルマは他人が触れても暴れたり拒絶したりはしないみたいだ。


「ありがとな」


礼を告げるとガルマの姿は溶けて消えていく、それを確認すると目の前の景色へと視界を移した。


山々に囲まれた窪地に八角形の白い防壁に囲まれた街があった、防壁の中には白い石材で建てられた家や教会と中心に帝城に勝るとも劣らない大聖堂が鎮座している。


「あれがラウナス正教の総本山、ハインルベリエか」


一見すれば聖地と呼ばれるのも納得がいく美しい街だ、だがそれだけではない事はアリア達の話と王国にいた時から伝わっていた噂が物語っている。


「…行きましょう」


アリアが強い決意を込めた眼で促す、それに頷いてハインルベリエへと向かった。








―――――


「止まれ」


門の前で番兵に引き止められる、今の俺とアリアはフードを被った旅装に身を包んでおり端から見たらただの旅人にしか見えないだろう。


「この地はラウナス正教の聖地、信仰を示さねば立ち入る事は叶わぬ」


「信仰とは?」


「一人につき金貨一枚…またはそれだけの価値があるもの布施として捧げよ」


「ぼったくり…」とアリアが俺にだけ聞こえる声量で呟く、正直同意したかったがここで争っても仕方ないので金貨二枚を渡した。


「これで良いか?」


「まだだ、所持品を確認させてもらう」


「信仰は示した筈だが?」


「治安の為だ、身分が不確かな者を素通りさせる訳にはいかん」


「…これでもか?」


このままだと身ぐるみを剥がされそうなのでヴィクトリアから貰った短剣を見せる。


「それは…ミルドレア帝国の紋章!?しかも称号騎士にしか与えられない金印の短剣!?」


「今回は俺の個人的な巡礼の為に来た、馬や馬車を使わないのは不要な目線に晒されない為だ」


事前に決めておいた理由を話す、少しでも今回の目的…セレナの保護を悟られない為にアリアの名前は出来るだけ出さない様にしておきたかった。


「も、申し訳ございません!どうぞお通りください!」


威圧的な態度から一転して頭を下げて門の先を示す、ヴィクトリアの言う通りラウナス教国は身分の高い者に対しては弱いようだ。


門を潜りながら防壁を見る、近くで見ると見た目だけでなく相当な強度と魔術耐性があるのが分かる…仮に壊そうとすれば俺でも苦労するだろう。


門を潜るとそこには整備された街道に三階建てが基本なのか高い建物が並んでいる、その中でも教会関連は造りも高さも他より良いのは教国故だろう。


「まずは宿を取ってから散策だな、思ったよりも複雑な造りみたいだ」


「そうね、作戦を立てるにも地形を把握しないといけないし…怪しまれない様に地図をメモしたりは出来ないから二人の方が怪しまれないかも」


街道を歩きながら宿の看板が出ている建物を見つけて入る、部屋は清潔感のあるシンプルなもので壁には正教のシンボルである小さな十字架が飾られていた。


「ベルク、さっき受付で貰った地図なんだけど…」


「…やっぱり大聖堂周辺は描かれてないか」


ハインルベリエは外の防壁ともうひとつ大聖堂周辺を囲う形で防壁が造られている。


そこは教会でも上位の役職に就く者達…司教や正教騎士といった者以外は正式に招かれた者しか入れないとされている。


「…ひとまずは見て回るか」


俺の言葉にアリアが頷いて共に部屋を後にする、宿を出ると正教騎士達が巡回していた。


「…」


「どうしたの?」


「いや、なんでもない」


アリアに答えながら腰のカオスクルセイダーに手を触れる、するとどことなく脈打った様に思えた。


カオスクルセイダーと同化した魂…その中にいる正教の騎士や信徒達がざわつくかの如く…。

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