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44:教国へ


「なんでこうなる…!?」


五人が横になっても余裕のあるベッドの上で頭を抱える、こうなった原因は間違いなくルスクディーテから口移しされた強い酒なのだろうがそれでも酔いが急激に回るのはどう考えてもおかしい。


「なんじゃ起きたのか」


頭を抱えているとルスクディーテがあくびをしながら起き上がる、朝日に照らされた姿は絵になるがそんな場合ではない。


「ルスクディーテ、俺になにをした?」


「昨日の事か?貴様が早々に寝入ろうとしておったから酒精と共に昂らせてやったまでよ、情欲の焔たる我なら造作もないわ」


「いやなに考えてんだ!?アリアだけならまだしもこの二人は不味いだろうが!」


現皇帝と宮廷魔術師とまで一夜の仲になるとか洒落にならない、バレれば三人の皇族を穢した者として歴史に刻まれるか真実を隠す為に存在を抹消されたっておかしくはなかった。


「うるさいのぅ、美しい雌を四人も抱けたのだから雄ならば本懐であろうが」


「そういう問題じゃないんだよ…」


「そもそも交われる状況にも関わらず四日間も我は我慢させられたのだぞ?我慢した分の精を求めてなにが悪い」


悪びれる事もなく話すルスクディーテに再び頭を抱える、こんな事になるならアリアと前日にでもするべきだったか?…いや誰が見てるかも分からない中でするのは流石に抵抗がある。


「うぅん…」


「むぅ…」


「ふわーあ…」


葛藤している途中で寝ていたアリア達が目を覚ます、そして俺と目が合うと三人で顔を見合わせた。


「…ひとまずはおはようと言うべきか?」


凛とした雰囲気を出そうとするヴィクトリアの頬は朱に染まっていた。







―――――


「まあ昨日も言った通り制度的に問題はない」


私室に備え付けてあるシャワーで身を清めたヴィクトリアが開口一番にそう告げた。


「しかし皇族の三人が同じ男に昨日の今日で情を交わしたとなれば反感を抱く者や妬心に駆られる者が現れるのは必然…私としても今はそれは避けておきたい」


ヴィクトリアの言う事は尤もだろう、自分の事だがやんごとなき身分の一人を嫁にするだけでもそれなりに思うところがあるだろうに三人まとめてとなればふざけるなとなるだろう。


「故に今はこの件は伏しておく事にする、公開するかどうかはお前達がセレナを連れ出して一通りの問題を片付けてからだ」


「…ありがとうございます」


「謝るな、酒の席とはいえお前に抱かれるのを選んだのは私の意思だ」


「あははー、聞くのと実際にするのはやっぱり違うねー、アリアちゃんの大変さが理解できたよー」


「ね、姉さん…」


本来なら晒し首でもおかしくない不敬なのに受け入れられている事にこれは現実なのかと疑ってしまう、だが四人の乱れた姿が鮮明に思い出されて逃避という手段は瞬く間に潰された。


「それでベルク、教国にはいつ向かうつもりだ?」


「…元々そのまま向かうつもりだったので出れるならすぐにでも」


「そうか、ならばこれを持っていけ」


そう言ってヴィクトリアは書状を入れた筒と紅を基調とした短剣を渡してきた、短剣には金で象った獅子の飾りが施されている。


「お前を“黒嵐(こくらん)騎士(きし)”と証明する任命書と我とジャスティレオンの魔力が込められた短剣だ、偽造は不可能な代物ゆえ身分の証明に使うが良い」


「ありがとうございます」


「他に必要なものはあるか?馬が必要ならば手配するが」


「それに関しては大丈夫です、当てが出来たので」


俺がその当てに関して説明するとヴィクトリアはほうと頷き、フィリアは目を輝かせ、アリアはもう驚かないとばかりに肩を竦めた。









―――――


「アリア、準備は良いか?」


「うん、ばっちり」


俺がそう問うと旅装に身を包んだアリアが答える、人払いされた帝城の裏門で俺は剣の姿のカオスクルセイダーを構えて意識を集中する。


「来い、ガルマ」


俺の声に答える様にカオスクルセイダーから闇が噴き出す、闇はすぐさま形を成していき漆黒の鎧に身を包んだ巨大な軍馬へと姿を変えた。


「凄い凄い凄い…武具だけじゃなくて生命体まで…いや馬も武具としてカウントされてるからこそ?…それとも出せるのは別のカテゴリに分けられてるのかなー?」


見送りに来たフィリアが凄い勢いで紙に何かを書いている、その姿は皇女というよりヤバい目をした職人を彷彿とさせた。


「アリア、敵は未知数の存在だ…大丈夫だとは思うが無理はするなよ」


「うん、行ってきますヴィクトリア姉さん」


ヴィクトリアと別れを済ましたアリアと共にガルマに跨がる、ガルマの手綱を掴んで命じると嘶きを上げて駆け出した。


「良いのか、フィリアに何も言わないで」


「あはは、ああなったフィリア姉さんは何も聞こえないから…」


「…というかアリアは良いのか?俺がアリアの姉達とそういう事をするのは…」


「うーん…思うところがない訳じゃないけど私一人じゃベルクを満足させられないのは事実だし、姉さん達には助けられたし…それにベルクは何人抱いても私を粗末にしたりしないでしょ?」


「当たり前だ」


「ならそれで良いの、でも私の事を粗末にしたら許さないからね?」


「…肝に命じよう」


自分の為にもアリアは大事にしよう、教国への道を駆けながら俺は心からそう誓った…。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ヴィクトリア陛下…実力は認めてたとはいえ、夫でも婚約者でもない男と(自主規制)する羽目になったのに、割り切りが凄いというかさっぱりとした女性ですなぁ。 美貌や皇帝という地位や権力は諸々抜き…
[一言] ゆうべはおたのしみでしたね
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