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41:私室にて


襲撃から三日後、時間としてはそれだけしか経っていないが帝国の状況は随分と変わったと思える。


ヴィクトリア皇帝陛下は夜が明けるとフルドの一族郎党を国家転覆を図った反逆者として処刑した、更には称号騎士達に命じて以前から秘密裏に調べていた不審な動きをしていた者達も捕えた。


皇帝の命を狙った者の魔力を解析した結果、捕えられた者達はそいつが作ったであろう魔道具と多額の金を渡していた事が明らかになり同じく反逆の意思ありとして厳罰を下した。


皇帝の暗殺未遂並びに城を襲撃するという大事になった事で皇帝の判決に異を唱えられる者は居らず、結果として皇帝の派閥と権勢はより強固なものとなったらしい。


「どちらにせよ無関係のお前を利用したという事実は変わらぬがな」


激務をこなした筈なのに凛とした雰囲気を崩さず皇帝陛下は椅子に座って優雅に杯を傾ける、テーブルには高級酒とつまみが並べられており、左右にはフィリアとアリアが座り向かいの席に俺は座っていた。


「あの、皇帝陛下」


「ヴィクトリアだ」


「え?」


「今ここにいるのはお前と妹達だけだ、公の場ならばともかくここは私室…故に名前で呼べ、それと酒の席ゆえ礼儀も敬称もいらんからな?」


「は…はぁ」


何故かアリアと共に侍女に案内された先ではヴィクトリアとフィリアが待っており、今のこの状況になっていた。


「それで何故俺を呼んだんでしょうか?」


俺がそう切り出すとヴィクトリアは杯を置いて真っ直ぐと俺を見た。


「理由は多々あるがまずは礼を言いたい、良くフルドを倒してくれた、お前が奴を倒さなければより多くの騎士が犠牲になっていた…お前は私の大事な臣下を助けてくれたのだ」


「…黙って見てる訳にはいかなかったので」


少し照れ臭くなってそう答えると三者三様の笑みで見てくる、だがヴィクトリアはすぐに表情を戻した。


「次に謝罪をしたい、私が到らぬ故に帝国の事情に巻き込み危険な目に合わせた、そして利用する形となってしまい申し訳ない」


「いえ、お気になさらず…」


これに関しては本心からの言葉だった、俺がムカついたのはフルドだけだったし、そのフルドを倒した事でカオスクルセイダーを使いこなせる様になれたから皇帝…ひいては帝国に対して嫌悪といったのは抱いてはいなかった。


「寛大な心に感謝する…そしてここからは内密にしてもらいたいのだが、私を暗殺しようとした者について分かった事がある」


ヴィクトリアはそう言ってフィリアへと目線をやるとフィリアはこくりと頷いた。


「あれが使ってた兜を調べたんだんだけど…あの兜を作った人はかなり頭がおかしいねー」


「作った?レアドロップじゃないのか?」


「んー…専門的な話になるけどねー」


フィリアはそう言うと指先に魔術の光を灯して宙に図を描き始めた。


「普通魔道具を作る時は魔力を通す“(ライン)”と術式である“(ポイント)”を刻むの、普通なら“線”は素体…例えば武器に刻んで“点”は魔石に刻んでそのふたつを合わせる事で魔道具になる…ってここまではベルク君も分かってるねー」


フィリアが言っているのは基本的な魔道具の作り方だ、本来であればふたつを合わせたら更なる加工を施して術式が半永久的に使える様にするが俺の場合は魔石に術式を刻んだだけだから使い捨てになる。


「それでレアドロップの構造はどちらかというと人間に近いんだー、“線”に該当するところはあるけど“点”に該当するところがない…そして“線”が魔道具と比べられないくらい複雑かつ多いんだよー」


「…人間に近い」


「人間は意思によって魔術を発動するけど魔道具は魔石に刻んだ術式によって発動する、対してレアドロップは所有者の意思に呼応してその能力を発動する…だから私はレアドロップには意思や魂があると仮説を立ててた訳」


「なるほどな…」


「…で、話をあの兜に戻すんだけどねー」


フィリアはそう言うと更に新しく図を描き始めた。


「これはそのどれとも全く違う構成…強いて言うならあの兜は最悪の魔道具といえるかなー」


それはどこか怒りを帯びた冷たい声だった…。

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