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37:火は風を受けて(アリアside)


「くぅ!」


「きゃっ!?」


フィリア姉さんを狙って迫る触手を斬り払う、その隙をつくかの様に背後から迫る触手を魔術の炎で遮る。


姉さんも魔道具を使って援護しようとしてくれるが実戦経験や戦場に立った事がない姉さんを狙い打ちにされて私も守るので精一杯になっていた。


こちらから攻撃すべきか考えたが俊敏さはブラックウィドウの方が優れてる、倒そうと姉さんと離れた瞬間に姉さんが殺されるだろう。


今の自分が持てる手段ではブラックウィドウを捉えられない、かといって姉さんを守りながらではジリ貧だった。


「アリアちゃん、私は良いから…」


「絶対に嫌!」


姉さんの言葉を遮りながらブラックウィドウの攻撃を弾く、警戒しながらもどうやって切り抜けるか必死で考えを巡らせた。


(ブラックウィドウの動きより早く攻撃できれば…)


…ひとつだけ手段が思い浮かぶ、だけどそれはまだ試した事のないものでまだ私一人ではできないものだった。


(でも…)


ブラックウィドウの脚を受け止めながら頭の中に浮かぶのはベルクの後ろ姿だった、圧倒的な強さを持っていたカオスクルセイダーにたった一人で…真正面から打ち破ったベルクの姿…。


それは自分の中で僅かに生まれていた諦観を吹き飛ばすものだった、約束を果たせず、姉さん達の様に優れたものがあるとは言えなかった私にはベルクは衝撃的な存在だった。


私には努力を認めて教えてくれる人達がいた、会えなくても助けたいと思える大切な親友がいた、それでも剣も魔術も中途半端で誇れるものがない私は力を求めて外へ出た。


ベルクは独りだった、家出する前も家出した後もずっと独りで戦い続け…歩み続けた。


どれだけ辛い道だったかなんて想像できない、あの過酷な場所で心の支えすらなく戦い続ける事の険しさなど言葉にするまでもない。


それでもベルクは戦い続けて揺るぎない強さと自分を手にしていた。


「私も…私だって…」


一度は折れかけたとしても諦めたくない、ベルクの様な才能が強さがないのだとしても…諦めて膝をつくような事はしたくない!


「姉さん!私が合図したら…」


「…!?そんな事したらアリアちゃんが」


「お願い、私を信じて」


私の眼を見た姉さんは逡巡するも頷いて備える、私は再び襲い掛かってきたブラックウィドウを炎魔術と身体強化でふき飛ばした。


「姉さん!」


「分かった!“炎嵐(ファイアストーム)”!」


姉さんの魔術が()()()()に向けて放たれる、同時に私はルスクディーテに意識を向ける。


…魔術とはイメージ、それはレアドロップも例外ではない。


どれだけ強力なレアドロップもその能力とかけ離れた事や拙いイメージでは真価を発揮できない、今までの私はそれが出来てなかった。


だからイメージする、ルスクディーテを手にしてから形になっていなかったものを今ここで形にする。


思い浮かべるのはベルクの戦う姿、風を纏い吹き荒ぶ嵐の様に戦う憧れすら抱かせる強さ。


例えまだ届かないのだとしても私だってあんな風に…!


「ルスクディーテ!」


私の声に反応してルスクディーテが輝く、同時に私に迫った炎は私を覆い尽くす様に渦巻いた。


渦巻く炎を身に纏う、燃え盛る炎を背中と脚に翼の様に展開すると地面を踏みしめた。


地面を蹴ると炎の翼が燃え上がる、脚から噴き出した炎は地面を焦がし、背中の翼は周囲の空気を焼いて私を一条の流星に変えた。


地面に潜ろうとしていたブラックウィドウの八つ眼の顔に炎を纏った刃が入り込む、勢いのままに刃はそのままブラックウィドウの体を斬り裂き、燃やし尽くした。


ブラックウィドウが魔石となった事で緊張の糸が切れた瞬間に体から力が抜ける、すると魔物の姿になったルスクディーテが私を支えてくれた。


「ふふ、己の力のみでここまで我を使いこなせる様になったか」


「ルスクディーテ…」


「その褒美という訳ではないが後は我に任せるが良い、貴様の姉と目についた人間くらいは助けてやる」


「…お願い」


そう言い残して私は意識を失った…。








―――――


「ええーと…貴女はー?」


「アリアと契約した者だ、貴様等はレアドロップと呼ぶ存在よ」


「レアドロップが自らの意思と身体をー?」

 

「我はベルクやあの皇帝とやらの様に倒された訳ではないからな…む?」


突然放たれた力の気配にそちらの方を向く、ひとつはあの皇帝とやらの獅子の気配、そしてもうひとつは…。


「…もはや埒外の域よな、ベルク」


そう言いながらもその口元は笑みが浮かんでいた…。

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