23:魔法の領域
触手が一斉に動く。エルフォードを中心に左右に広がりながら詠唱を始めた。
「させん」
剣を上空へ放り投げて両手を左右に突き出す。指から光線を放って十本の触手を撃ち抜いた。
「「「“綺羅星の機雷”」」」
同時詠唱によって俺の周囲に幾つもの光の玉が浮かぶ。本来は十数程度しか展開されない筈だが同時に発動された事で百近くの光の玉が展開されていた。
「デタラメな使い方だ!」
光の玉に触れた瞬間、光の玉が爆発を起こす。ふき飛ばされた先にあった玉が爆発して更にふき飛ばされて爆発が更に連鎖する。
上空に打ち上げられた瞬間に翼を広げて体勢を直しながら剣を掴む。爆煙と光が消える前に左手から撃った光線で更に五本の触手を撃ち抜いた。
「「「“降天雷柱”」」」
空を覆っていた曇天が渦を巻く。俺を包み込んで余りある極大の雷は俺を落とすだけでなく大地に穴を穿って俺を穴底へと招いた。。
「同時詠唱とはここまでの威力を出すのか」
使われた魔術は本来はこれほどの威力は出せない。だが同時詠唱によって増幅させる事で本来の数十倍もの威力となっていた。
「「「“地創操成”」」」
穴底から出ようとした直後に地面が鳴動して左右から土壁が俺を挟む。本来ならそれで終わるが土壁は一回り大きくなっていきながら俺に圧力を掛けて重なっていき、収まった時には小山となっていた。
「……」
エルフォードは魔力を両の指に宿しながら空中に呪文を描く。燐光が灯された指が複雑な陣を描き術式を記していった。
「「「“衰退の呪鎖”」」」
触手が小山ごと呪詛を掛ける。呪いが宿った黒い影が幾重にも重なって小山を染め上げ中にいる者の力を奪おうとした。
小山の頂上から閃光が迸る。光の柱が噴火の如く昇って呪詛を消し飛ばすと小山から鋭い爪を備えた竜の手が突き破って出てきた。
突き破った箇所から罅が広がっていき腕が露になる。土煙を立てながら白亜に輝く鱗を纏った身体は竜のものへとなっていた。
顎を開き魔力を込める。口内に光が集束していき、それに伴って破壊の力が大気を焦がしながら宿っていった。
「「「“六属障壁”」」」
俺とエルフォードの間に地水火風光闇の力で構成された障壁が何十にも重なって出現すると同時にブレスを放つ。ブレスは轟音を放ちながら障壁を貫いていき、最後の障壁を貫いて彼方へと消えていった。
貫かれた障壁が霧散していく。ブレスは障壁によって逸らされたがそれでもエルフォードの触手を消し飛ばして残り八本となっていた。
「悪くない……だが次はどうする!」
翼を拡げてエルフォードに真っ直ぐ飛翔する。触手を半分以上失った今、同時詠唱を行おうと力ずくで突破する事は不可能ではない。
「術式構築完了……“神秘を記す者”起動」
エルフォードの周囲に浮かんでいた術式が奴の全身に纏わりついていく。光り輝く紋様が身体を巡ると共に感じた事のない力の気配に背筋が震え、破壊の力を込めた爪を振り下ろした。
「っ!?」
爪がエルフォードに触れる直前で指が翳される。胸部に爆発が起きてその威力は竜と化した巨体をふき飛ばし、鱗を破壊した。




