20:最後の獲物
「ロウド、これはどういう事か……説明してもらえるかい?」
エルフォードが俺から眼を逸らさず問い掛けてくる。興が削がれた俺は竜装を解除して剣を納めるとダンジョンを出る事にした。
「ロウド!」
「……奴等をそのままにしていいのか?」
俺の言葉にエルフォードはフレア達の方を見る。フレアはティガレイジが消えた場所で膝をつきながら俺を見た。
「……あれだけ殺そうとしておいて、今になって心変わりかい?」
「殺すつもりだったがティガレイジはお前を守る為に死ぬと分かっていながら立ち向かってきた。その行動と意志に敬意を表したまでだ」
「……クソ、チクショウ……チクショウ!!」
フレアが涙を流しながら床を叩く。その叫びにフレアの仲間とエルフォードは痛ましいものみ見る表情を浮かべた。
フレア達を一瞥する事もなく部屋を出ようとする。エルフォードが再び俺に視線を向けて問い掛けようとしてきた。
「ロウド……」
「俺は今気分が良い。だからこの場では剣は納める……それとも、やるか?」
魔力と共に殺気を解き放つ。沈痛な空気が漂っていた空間を瞬く間に塗り替えて全てを押し潰す重圧を放ちながら問い掛けた。
「今、この場で、俺とやるか? 奴等を巻き込む事になっても俺は構わんが?」
「……」
エルフォードがフレア達を見る。全員が消耗して動けない状態となっている状況で俺達が戦えば戦いの余波で奴等は死ぬだろう。
「“天へ挑んだ塔”に来い。何かを言いたければそこで待っていてやる……どちらにせよお前で最後だからな」
「……分かった」
エルフォードが頷いたのを確認すると俺はダンジョンを後にした……。
◆◆◆
(エルフォードSide)
ロウドがその場を去った後、フレア達を守りながらダンジョンを出て町へと戻ると上位魔術に匹敵する威力の雷を受けた斥候とロウドに左手を斬り落とされた壁役はすぐに治療院へと運ばれた。
回復術師の手当てが適切だったのもあり命に別状はなかったが壁役の男は左手を失い冒険者を続けるのは難しくなり、フレアは自身のレアドロップを失った事で精神的に弱っていた。
無事だった回復術師から詳しい話を聞く。聞き終えた私は礼を言ってフレア達をギルドに任せると既に出た結論を考える。
……酒や作用の強い薬等に依存する者は多い。だが希にだが物にではなく“状況”に依存する者がいる。
これまでの調査結果からロウドは自らの命を脅かす強者との戦い……“死闘”に依存している状態となっている。だからこそ普通の冒険者ではなくレアドロップの担い手を狙っていた。
「止めなければ……」
もうすぐロウドのやってきた事はギルドにバレる。このまま何もしないでいればロウドは更に襲撃を繰り返し、ギルドもいずれ腰を上げてロウドを殺そうとするだろう……そうなればどれだけの被害が出るか想像もつかない。
「だが……」
ダンジョンでぶつけられた殺気を思い出す。かつてとは比べ物にならない強さを手にしたロウドと戦って止められるとは思えない。
「あれほどの力を、独りで……」
どれだけ壮絶な戦いを繰り返してきたのだろう。どれほどの経験をしてきたのだろう。誰も頼らないまま先に進む辛さなど追うのをやめた私には分かる筈がない。
だが、だからこそ止めなければならない。彼が積み上げてきたものを、彼のお陰で築かれたものを自ら壊させる様な事をさせたくはない。
「私も、覚悟を決めなければならないか」
例え、己の命を失う事になったとしても……かつての友に手を掛ける事になったとしても。




