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17:多対一


 気配を感じて振り返ると橙の脚甲をした女を中心とした冒険者達がいた。感じる取れる脚甲からの気配と全員の練度からして“暁の踏破者”で間違いないだろう。


「ロ、ロウド=ソリタス? 本物?」


 斥候の男が俺を見て呟く。俺は剣を握り直すと重心を奴等に傾けながら告げた。


「構えろ」


 告げると同時に距離を詰めて先頭にいた大盾を持つ壁役に斬り掛かる。大盾を持つ手の反対側から首を狙って剣を薙ぐ。


 炎を纏った蹴りが剣を弾く。斥候が小型の(クロスボウ)を撃つ直前に後ろに跳ぶがすぐさま狙い直して矢が眉間に目掛けて撃たれた。


 飛来してきた矢を掴み取る。矢を捨てながら立ち上がるとフレアがいつでも動ける様に前傾姿勢のまま口を開いた。


「どういうつもりだい? 今の……本気だったね?」


「ああ」


「……正気を失ったって訳じゃなさそうだね。だけど理由も分からず戦う訳にはいかないね」


「なら死ぬだけだ。お前も、仲間もな」


 フレアは一瞬だけ黙るとすぐに魔力を全身に巡らせながら殺気を放つ。そして仲間達に声を掛けた。


「あんた達! やるよ!」


 フレアの掛け声に仲間達が一斉に動く。壁役が仕掛けてきた盾突撃(シールドバッシュ)を左手で受けた。


「ふむ」


 床を削りながら下がるが勢いが落ちると同時に横からフレアが飛び蹴りを放つ。剣で受けるが炎を纏った蹴りの威力を殺しきれずにふき飛んだところを斥候が針を投げてきた。


「“轟雷雨(サンダーレイン)”」


「“水障壁(ウォーターバリア)”!」


 地面に向けて雷を放つ事で雷が俺を中心に広がる。針が弾け飛びフレア達に迫る直前で水の障壁が防いだ。


(俺が使う魔術を瞬時に見抜いたか)


 壁役が手にした戦斧を振るってくる。剣で流しながら大盾の下に爪先を潜り込ませて蹴り上げた。


「なっ!?」


 がら空きの胴に左肘を打ち込む。たたらを踏んだ壁役に追撃しようとすると右腕に鋼糸(ワイヤー)が巻きついた。


 すかさずフレアが蹴り込んでくる。竜化した左腕で繰り出される炎の蹴撃を受け止めながら詠唱する。


「ぐぎっ!?」


 右腕に纏った雷が鋼糸を伝って斥候を痺れさせる。指から光線を放って下がらせた瞬間に右腕を大きく振りかぶってワイヤーを引っ張り、斥候をフレアに向けて投げ飛ばした。


「っ!? 馬鹿力め!」


 フレアが脚甲から火炎弾を放ちながら斥候を受け止める。放たれた火炎弾を斬り裂くと横から大盾がぶつかってきた。


「うおおおおおっ!!」


 壁役が気合いの声を上げながら身体強化を全開にして走る。壁に叩きつけられるが盾の勢いは止まらず俺を押し潰そうとしてきた。


「竜装展開“生命の到達点(ハイエンド)”」 


 白亜の輝きを纏いながら大盾を押す。少しずつ押し返しながら空間が空いた瞬間に大盾ごと壁役を蹴り飛ばした。


「良い連携だ。使う武具も、技術も、申し分ない」


 回復術師が斥候と壁役をすぐに回復させる。フレアが歯を噛み締めながら立ち塞った。


「……あんた達、下がってな」


 フレアの言葉に回復術師は頷くと二人を連れて距離を取る。そして俺の前に一人で立った。


「あたしはあんたを尊敬してるよ。たった一人であたし達の遥か先を行って戦ってきたんだからね……だけどどんな奴だろうと仲間を殺そうってんなら、容赦はしない!」


 フレアの脚甲から炎が噴き出す。周囲に煤が広がり、灰塵が舞ってフレアを覆い尽くしていった。


「燃装展開“灰纏激虎(ティガレイジ)”!」


 猛虎の咆哮が熱風となって届いた……。

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