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14:死闘の充足


 エデスの亡骸を抱えてダンジョンを出る。しばらくしてとある湖に着いた。


 深層はダンジョンでなくとも魔物が徘徊しているが一定の場所には魔物が出現しない。原理は分からず数は少ないが休むには最適な場所だった。


 湖の畔に穴を掘り、エデスを横たえて土を被せていく。盛り上がった土に俺が使っていた剣の一本を突き立ててエデスの冒険者タグを掛けた。


「らしくはない、が……お前という戦士へ示す敬意を他に知らんのでな」


 墓の前で呟きながらエデスとの戦いを思い出す。獣の如き攻撃の鋭さと俊敏さは一瞬でも判断を間違えれば死んでいたのは俺だっただろう。


 しばらく貫かれた箇所に触れながら刻まれた感覚に身を奮わせる。互いの力を、積み重ねてきた全てをぶつけ合う瞬間……死闘がもたらす炎は俺の中で未だに揺らめいていた。


 踵を返して湖を後にする。この炎はもはや消える事はない。己を焼き尽くすと分かっていても、この炎が導く先が世界を敵に回すものだとしても抗うつもりはない。


 この炎が……死闘がもたらす充足は他で満たす事など出来ないのだから。


「次は……」


 再び冒険者とダンジョンの情報を思い出しながら思考を巡らせる。そして行き先を決めて歩き出した。


 “灰脚”のフレア……次の相手が来るであろうダンジョンに向かって……。






 ◆◆◆


(エルフォードSide)


「ダンジョンでこれ程の傷跡が残るとは……」


 “悪鬼の根城”の最深層に着いた私は周囲を見渡す。ロウドとエイクが戦った最深層には未だにその跡が残っており、二人の戦いの苛烈さを物語っていた。


「アビスコード」


 自身のレアドロップに語りかけながら魔力の網を広げて調査を始める。魔力の網から残留した魔力を探知し、解析をしていった。


「……やはりこれはロウドのレアドロップの魔力か」


 エイクの亡骸を調べた際に死因となった傷からはロウドの魔力と別の魔力が検出された。


 魔力に宿る想念はそう簡単に消えるものではない。アビスコードの能力と私の魔術を組み合わせて魔力に宿る想念を読み取る術を得た事で誰の魔力かだけでなくどんな魔術に用いられたかまで出来る様になっていた。


 だが、エイクの亡骸から読み取った魔力に驚愕し、こうして現場に来て確かめても信じられなかった。


「破壊……物理的な事象だけでなく魂や存在、概念を滅ぼし消し去る……本当にそんな力が」


 これまでの常識や術理を覆すかの如き力、本来は担い手が死んでも滅びないレアドロップを滅ぼすなど有り得ないと断じたいが調査を進め調べれば調べるほどその力の存在が浮き彫りになっていく。


 その片鱗が宿る魔力だけでどれだけ強力なレアドロップか想定できる。下手すれば世界すら滅ぼせる力を秘めたレアドロップをロウドは手にしてエイクを殺し、ビコウオウを滅ぼしたのだ。


「ロウド、君はこの力を手にして……何を求めている? 何をしようとしているんだ?」


 私の呟きに答えは返ってこない。かつて共に酒を飲み、冒険をしていた友だったロウドの事が分からなくなっていた自分への情けなさが湧いてくるだけだった……。

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