11:剣士として
甲高い音を響かせながら剣が交差する。走るエデスを追いかけながら幾度も剣の応酬を続けた。
「ふっ！」
踵を返したエデスが俺に斬り掛かる。首を狙った一閃を剣で受けるとすかさずもうひとつの剣が迫り、身体を捻って避ける。
「はあああああっ！」
流れる様な動作で真一文字に振るわれる左剣を籠手で受ける。続けて迫る右剣をしゃがんで避けながら脚払いを放った。
エデスは脚を払われる直前に自ら体重を傾ける。脚を払われると空中で身体を回転させて倒れる事なく着地した。
着地した直後のエデスにしゃがんだ体勢から斬り上げる。脚を狙った一撃はいつの間にか逆手に握られた右剣に阻まれた。
「流石だな！」
剣の背を殴って剣ごと押し込む。エデスは支えきれずにふき飛ぶがその直前に左剣を振るった。
「っ！？」
ぞくりとした感覚に思わず首を逸らす。その直後に右の頬が避けて血が舞った。
(斬撃を飛ばした？ ……いや違うな)
すぐさま距離を詰めるとエデスは左の剣をこちらに向ける。すると剣身が射出されて矢の如く迫った。
剣で弾くとエデスは上段から右剣を振り下ろしてくる。竜鱗へと変じた籠手で受けるが刃が肩を浅く斬った。
「しっ！」
エデスが柄だけとなった左剣を振るう。すると振るっている途中で剣身が生えてきて俺の脇腹へと迫った。
「……なるほど」
「なっ！？」
肘と膝で左剣を挟む様にして止める。剣を逆手に変えて弾くとエデスを蹴り飛ばす。
「不安定な体勢から斬撃を飛ばしたかと思ったが、それの能力は剣身……牙の操作といったところだな」
「っ！」
「普段から伸縮させるのではなく攻撃の瞬間だけ伸ばして戻し、構えでも正眼を崩さない事でそれに気付かせないか……単純だが種が分かったとしても脅威だな」
「……流石はロウド=ソリタスか」
エデスは双剣を構えながら答える。その表情は高揚しているのがありありと伝わる笑みを浮かべていた。
「戦う理由がない……さっきはそう言ったがアンタとは一度戦いたいとは思っていた」
「ほう？」
「白金という唯一の階級、英雄という言葉だけでは足りぬほどの功績、そして最強と言われるほどの強さ……一人の剣士として、冒険者としてアンタは常に上にいた」
エデスは双剣を頭上に掲げる。双剣から凄まじい圧が放たれ、風を生み出した。
「だからこそ俺は知りたい！ 俺の強さがどこまで届くのか！ 最強という称号にどこまで近付いたのか！ 今こそその答えを！ 俺が手にしたこの力で知る時だ！」
エデスの叫びに呼応するかの如く双剣が輝き姿を変えていく。そして力ある言葉が響き渡った。
「裂装展開！ “爪牙の園”！」
空間に牙が突き立つ音が轟いた……。
