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9:狩りの始まり


 街を出て深層に戻ると早々にダンジョンに潜ってボスを倒す。他の魔物と違ってボスは倒せばしばらくは再出現しないから考え事をするには適している。


「さて……」


 頭の中で目を通した資料を思い出しながら思案する。資料に載っていたのは白銀級と黄金級だったが恐らく俺やエイクと同じレアドロップを持っているのはその中でも一握りだろう。


 まず……。


「“双牙”のエデス」


 単独(ソロ)の冒険者で双剣を操る剣士。冒険者としての力量は当然として剣の腕は冒険者の中でも三指に入る実力者とあった。潜ったダンジョンと実績、そして深層に挑み始めた期間から考えてレアドロップ持ちの可能性が高い。


 次は……。


「“灰脚”のフレア」


 足技を中心とした格闘術と火の魔術を得意とする女冒険者。“暁の踏破者”のリーダーであり身に纏った脚甲は灰を纏う度に威力を増すという……脚甲の特殊性からして並の魔道具ではない筈だ。


 次は……。


「“深淵”のエルフォード、か……」


 記憶の中に僅かに残していた名を口にする。ダンジョンで手に入れたという魔杖を手に高次元の魔術を駆使して俺以外で“天に挑んだ塔”に挑めると噂されている。


「まあ、どうでも良いか……」


 荷を整理して立ち上がる。資料から冒険者達の動向を推察するとその冒険者が向かうであろうダンジョンへと行く事にした。


 資料と冒険者の行動から察するにまず戦う事になるのは……。


「“双牙”のエデスか」


 無意識に俺の口角は上がっていた。






 ◆◆◆


「あ、エルフォードさん」


「すまない、ロウドが戻っていると聞いたんだが……」


「エルフォードか」


 ギルドマスターが皺の寄った顔で顔を出す。どことなく沈んだ表情をしているのが少しばかり気に掛かった。


「立ち話もなんだ。ついてきてくれ」


 ギルドマスターと共に部屋に入るとそこには机に投げ出された資料がそのままとなっており自分の前に誰かが来ていたと察せた。


「……さっきまでロウドと話していた」


 ギルドマスターは眉間を揉みほぐしながら呟く。その雰囲気からして良い結果にならなかったのは一目瞭然だった。


「儂等では求めているものは用意は出来ないと……後ろにいる者ではなく前に立つ者にしか持ち得ないと言っていた。一体何を……」


「……ロウドとはしばらく会えていませんでした。最後に会ったのはロウドが“天に挑んだ塔”を攻略する前でした」


 ロウドが見ていた資料を手に取る。そこに載っている資料を見ながらこれからの事を考える。


「ギルドマスター、私はこれからロウドの後を追います」


「……頼んでも良いか?」


「頼まれなくてもやりますよ……友人だったのですから」

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