3:噴出
「え……な、なんで?」
一人を除いて誰もが抱いた疑問に一人が喉を震わせる。何かしらの異変が起きているか別の冒険者達がいるとは思ったがこれは誰もが想定していなかった。
目の前にいるのは自分達よりも遥かに先を行き、ただ一人で誰も攻略不可能と謳われた“天へ挑んだ塔”を攻略した生きる伝説……そんな存在とダンジョンで鉢合わせるなど誰が予想出来るだろうか。
「おい」
仲間達が動揺する中、エイクはずかずかとロウドとの距離を詰める。握った棍が届く距離まで近付くと不機嫌さを顕にしながら言葉を投げ掛けた。
「何してくれてんだ? こっちは依頼を受けてオーガロードの魔石を取りに来たんだ。なのにテメェが倒しちまったら俺達が食いっぱぐれるだろうが」
エイクの物言いに仲間達の血の気が引く。ダンジョンのボスは再び出現するまでかなりの時間が掛かる。ダンジョンで手に入ったものは手に入れた者に所有権があるという共通のルールがある以上エイク達のここまでの苦労が無駄になる。
「……」
ロウドはエイクには目も向けず魔石を放り出して踵を返す。そして転がったオーガロードの魔石を示しながら抑揚のない声で呟いた。
「好きにすれば良い」
「あぁ?」
「その魔石も、ここにある魔道具もお前の好きにしろ。ギルドに俺が持っていくか、お前が持っていくかの違いでしかない」
ロウドはそう言ってエイク達を一瞥する事もなく歩き始めた。
「俺にはどうでも良い事だ」
ロウドとエイクがすれ違う。
大気を貫く音が響く。間を置かず甲高い衝突音と共にロウドが吹き飛んだ。
「なぁ!?」
エイクの仲間達が棍を振り切った体勢のエイクに驚愕しながらも制止の声を掛けようとするがエイクの全身から魔力と共に放たれる怒気に言葉を詰まらせた。
「……ざけんな」
エイクが怒気と共に呟く。視線の先には先ほどの一撃を受け止めたロウドがいた。
「テメェが捨てたもんを拾え? そんな乞食みてえな真似をしろだと? 目に映す価値もねえ俺にはそれがお似合いってか!? ふざけんじゃねえぞ!!」
火山の如く怒りが噴出する。棍を中心に漏れ出る魔力がエイクの全身を包んで常人なら膝をつくほどの重圧を生み出した。
「俺を……見やがれクソ野郎が―――――!!」
高速の突進と共に突き出された棍がロウドに迫る。剣の腹で受けたロウドは勢い良くふき飛ばされて壁に打ちつけられた。
エイクの仲間達は突然の事態に頭を混乱させる。止めようにも今まで見た事がないほど激昂しているエイクに近付く事すら出来そうにない。
壁に打ちつけられたロウドが地面を踏みしめる。首を鳴らし、手を握り直して体の具合を確かめると顔を上げた。
「……ほう」
ロウドの眼にエイクの姿が映った……。




