129:黄泉の加護
「黄泉の力?」
「はい、ベルク殿の中に私達が対峙した神と同じ力が感じ取れます」
アマネは居住まいを正すと俺に宿ったものがどういうものかを説明してくれる。
「ベルク殿はヒヅチの神々がどういうものかを知っていますか?」
「確か……ヒューム大陸とは違い神々はこの世界の全てに宿り存在するものだと」
ヒューム大陸では神はラウナス一柱だけだがヒヅチは様々な神がいる。共有したのもあれば土着神という地方それぞれで信仰されているものもある。
まさしく八百万とでも言うべき神がおり、ヒヅチ独特の信仰体系であった。
「そうです、例えば“死”でも病を司る神や水害を司る神などに分かれているものです……ですが私達が対峙した神は様々な言霊を使っていました」
「ああ、それが……」
聞き返そうとしたところで気付く。アマネが言った死でも司るものが分かれてるというのなら複数の死因を言霊に使っていた奴はとんでもない存在なのではないか?
「あらゆるものを内包した概念を司る存在、私達は大御神と呼んでいます」
「大御神……」
「はい、そしてベルク殿の中にあるのはその大御神の中でも死を司る最上位の神の力です」
アマネの言葉に眩暈を起こしそうになる。対峙した存在がそれほどの大物だった事もそうだがよりにもよってその力が自分の中にあるというのだ。
「何か不調や変わった事はありませんか? 例えば声が聞こえたり今までと違う考えが浮かんだりとか」
「いや、そういった類は今はない」
「そうですか……」
アマネは難しい表情を浮かべる。しばらく考え唸っていたがやがて頭を振って答えた。
「申し訳ございません。今の段階では確信を以て答える事が出来ません」
「推察は出来ているのですか?」
「……恐らくですが加護、ヒューム大陸で言うならば祝福だと思います」
「加護?」
「ベルク殿の体調や精神に変化が見られない事や黄泉の気配を探知出来る様になったという点……一番近い事例ですと神が気に入った者や必要と判断して与える加護ではないかと」
アマネ曰く、加護は神が司るものの力が宿るそうだ。火の神の加護ならば火の術だけでなく鍛冶などの火を使う技術も上手くなり、水の神なら漁などそれぞれ通じるもので上手くいく様になる。
俺の中には死の神、それも最上位の神の力が宿って何もないのはそれしか考えられないとの事だ。
「とは言っても大御神が加護を与える……それも死の神の加護など初めて聞きますし、今は大丈夫でも……」
アマネが呟きながら再び思案の海に沈む、やがて顔を上げると俺に問いかけた。
「ベルク殿は帝国に戻らねばなりませんよね?」
「はい、事が落ち着いたら戻らなければなりません」
俺がそう答えるとアマネは静かに告げた。
「でしたらヒノワを一緒に連れていってもらえないでしょうか?」




