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91:将のけじめ


 着くと傷だらけの二人と首を落とされたドウゲンの死体があった。セレナに二人の治療をしてもらうとヒノワがアメリの傍に行く。


 ヒノワが手を振り上げアメリの頬を打つ。乾いた音が響かせるとヒノワはアメリを抱き締めた。


「馬鹿! 本当に馬鹿! ……こんな無茶をして……本当に……」


「……ごめんなさい」


 ヒノワに嗚咽を漏らしながら抱き締められてアメリは抵抗もせずに受け入れる。俺はひとまずラクルと話す事にした。


「強敵だった様だな」


「ああ、腐っても大将を任されてる男だけはあって相当な実力の持ち主だった。俺一人だったらやられていたかも知れない」


「……アメリか」


 俺が視線を向けるとアメリはヒノワを離して俺と向き直る。その眼にはもう激情は宿っておらず危うい気配はなくなっていた。


「クノウの教えを理解できた様だな」


「はい」


「戦士として成長した様で何よりだ……だが、それと独断専行は別の話だ」


 アメリに向けて殺気を放つ。離れていたヒノワが身体を震わせる程の重圧を受けたアメリには黒い騎士達に剣を突きつけられ、間近で竜に睨みつけられている錯覚をしているだろう。


「万が一にとラクルを付けていたが、間に合わなかったらどうするつもりだった? 当主の娘であるお前が人質になれば助けるにせよ見捨てるにせよどれだけの影響を及ぼすか分かっていたのか?」


 一歩ずつ歩み寄りながら問う。アメリは身体を震わせながら俺の言葉を噛み締める様に聞いていた。


「お前の行動はゴモンの戦士達を、民をどれだけ危険に晒したかを理解しているか? ドウゲンを討つのにこの様な危険を犯す必要はなかった」


 ラクル達は黙って成り行きを見守っている。ラクルは騎士としてアメリの行動の危うさを理解しているからこそ口出しをしなかった。


「今一度聞くぞ。お前の行動がどれだけ軍を危険に晒したか分かっているのか?」


 俺の問いかけにアメリは口を引き結ぶ。そして震える身体を押さえながら座り頭を下げた。


「返す言葉も申し開きもございません。私の浅慮な行い、言葉だけの謝罪で済むものではないと理解しています」


 アメリは土下座をしたまま続ける。自らの行動を心底悔いている事が伝わってきた。


「どんな処罰も甘んじて受け入れます。腹を切れと言うのならば従います。本当に申し訳ございません」


「……」


 アメリの言葉を聞いて俺は殺気を解く。そしてドウゲンの死体と屍骨喰を回収しながら告げた。


「オヅマとの戦が終わり次第、アマネ殿と話し合って沙汰を下す。それまではラクルの下につけ……二度目は俺が斬る」


 そう告げるとアメリは顔を上げる。そして再び頭を下げて答えた。


「寛大な心遣い、ありがとうございます」


 その場を収まるとそれぞれ戦車に乗って戻る。俺が息を吐くとアリアが労ってくれた。


「ひとまずはお疲れ様」


「ああ……やっぱり怒るのは疲れるな」


 将としてやらなきゃならないとは言え、改めてその重さを実感するのだった。

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