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87:屍骨喰(ラクルside)


 全ての命には等しく死がある。


 全ての命にとって死とは恐ろしく辛いものだ。どれほど力を持った者もどれだけの叡智を得た者も死からは逃れられない。


 傷を負った者はその大小を問わず死を意識する。その恐怖は祈りにも似たものになって一振の刃を生み落とした。


 その刃の銘を“屍骨喰(しこつくらい)”、手にした者を死に近づけ死を振り撒く魔剣である。






―――――


 その姿は黄泉兵に似たものだった。髪は幽鬼のように白く染まり肌は死人の如く青くなって屍骨喰は右腕と融合した禍々しい姿となっていた。


「さぁ、本気でやろうじゃねえか!」


 壊れた鎧を引き千切ってドウゲンは笑う。傷だらけの上半身から屍骨喰と似た刀身が生えてきた。


「……嶽装展開“甲嶽王(ザンマ)”」


 鎧を纏って斬馬刀を握り直す。ドウゲンはこちらに向かいながら体から生やした刃が飛んできた。


 周囲に土壁を生成して刃を受ける。刃が刺さった土壁は砕け散るが砕けた土壁を潜り抜けて斬馬刀を振るう。ドウゲンは右腕の屍骨喰で受けると周囲の木々が揺れた。


「一瞬で対策しやがったか! おまけにその刀は斬れねえみてえだな!」


 口角を上げながらドウゲンは傷から新たな刃を生み出して手に取る。左手に握られた刃が振るわれるが手首を狙って手甲で止めた。


 ドウゲンの胸の傷から刃が飛び出す。身を捻るが刃が鎧の脇腹を掠めた瞬間に亀裂が広がって血が舞った。


 脇腹に鋭い痛みが走るが右手を握ってドウゲンの頬を打ち抜く。地面を削りながら下がったドウゲンが顔を上げた瞬間に前蹴りを腹に叩き込んだ。


「ご……ほおっ!?」


 メキメキと音を立てて入った蹴りの衝撃でドウゲンはふき飛ぶ。脇腹の亀裂に手を添えて鎧を修復するとドウゲンはふらふらと立ち上がった。


(この男……自分が死なないギリギリを狙って攻撃を受けているのか)


 恐らくは屍骨喰の力をより引き出す為だろう。ベルクやシオンとは違う死の淵の綱渡りを嬉々と行う狂人……。


「やるなぁ……刃の生えてねえ所を的確に狙ってきやがる」


 ドウゲンはそう言うと刃で全身を斬りつける。腹に背中とあらゆるところが裂けて血が流れると同時に刃が生まれてくる。


「これでどうだ?」


 全身から生やした刃が再び射出される。下がって斬馬刀を振るい刃を叩き落とす。刃が木々や地面に刺さる度に木々が裂けて倒れ地面が抉れる。


「こんな時までガキのお守りかぁ!?」


 ドウゲンが更に加速して右腕を振るう。斬馬刀で受けて鍔迫り合いとなるが膂力が増した刃を押し込まれて地面に跡をつけながら下がっていく。


 重心を落として踏ん張ると同時に斬馬刀を逸らして押し込まれる力を流すと同時に頭突きを叩き込んだ。


「俺の前で……命を奪えると思うな!」


 握りしめた左手でドウゲンの顎を殴りつける。だが殴った際に刃に触れて籠手が裂けて血が舞うのも構わず魔術で構築した岩の腕を叩きつけた。


「は! だったら守ってみろや!」


 岩の腕を斬り裂いたドウゲンが全身から刃を射出する。その全てがアメリに向かって放たれていた。

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