82:復讐
戻ってきた七支刀を手に取る。見渡すとセツラも残っていた黄泉兵を片付けたようで人に戻っていた。
オヅマ軍の本陣は崩壊しており調べなければ分からないが生きてる兵がどれだけいるかは分からなかった。
振り返ると飛空兵も討滅したようでクルセイダーズは闇となって還っていく。それと同時に強い疲労感がのし掛かった。
(やはり軍勢は負担が大きいな……)
本来ならば歴史に名を刻むほどの英傑達を呼び出し軍にするこの力は強力だが展開してる間は身体に負荷が掛かり続ける。文字通り早々には切れない奥の手と言えるものだ。
ドウゲンの実力は未知数な上に本陣で起きた事をちゃんと片付けて置かなければならない。俺が今すぐ追うのは厳しかった。
「ベルク大丈夫?」
「ああ、こっちもなんとかなったようだな」
「ベルクが援軍を出してくれたからね」
本陣に戻るとアリア達が迎えてくれる。答えながら周囲を見渡すと兵達はかなり疲弊していた。
本陣で起きた事を改めて聞くとクルセイダーズを向かわせたのは正解だったのとドウゲンの手段を選ばないやり方に不快さを感じる。
セレナによって兵も民達の呪詛も解かれているが他に異常がないか診る必要がある。それにオヅマ軍の生き残った者達も捕虜にしなければならない以上は軍をオヅマ軍の追撃はできない。
「ベルクさん!」
考えているとヒノワが焦った様子で駆けつけてきた。
「どうした?」
「そ、それが……アメリがいないんです!」
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(ドウゲンside)
時は少し遡り……。
戦場を離れたドウゲンは馬を走らせながら思案を続けていた。
「ありゃ正面からじゃ無理だな……やるなら他と引き離した上で周到に潰さなきゃな」
一人呟きながらもドウゲンは次の策を考える。従えていた黄泉兵や部下の安否なと気にせず既になくなったものと考えていた。
「ああ、いっそムドウのおっさんにもやってもらうか。あのおっさん奴の事を知ってるぽかったし……どうせ俺が負けるのも想定してんだろ」
一度決めたらどんな手を使っても殺す。ドウゲンの執着とも言えるものがベルクを殺す為の思考を巡らせていた。
ひとつの影が飛び出す。影が放つ殺気を感じ取ったドウゲンは手綱を引いて馬を立たせて盾にすると同時に飛び降りる。
「なんだぁ……?」
振るわれた刃が馬の首を断つ。馬の身体が倒れるて影……アメリは鋭い眼光でドウゲンを捉えると一気に距離を詰めて刀を振るった。
ドウゲンは屍骨喰を抜いて受け止める。アメリは鍔迫り合いとなりながらも目の前にいる仇を睨みつけた。
「殺してやる、ドウゲン!」