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76:骸将と呼ばれる由縁


 半日ガルマとソウガを走らせて戻るとアリア達が出迎えてくれた。俺とラクルはともかくセレナ達は強行軍で疲れており休んでもらった。


 ライゴウを始めフドウやヒルコ達が集まってすぐに軍議を始めた。


「オヅマの軍はどこだ?」


「進軍速度に変化はないからあと一日半で東谷城に到達するわ。ただ……」


 アリアが苦虫を噛み潰したような顔をする。するとライゴウがアリアと交代するように答えた。


「ドウゲンは道中の近くの村を襲撃し滅ぼしながら進軍しているのです」


「な……」


 ライゴウの言葉にラクルが絶句する。俺も一瞬唖然としたがすぐにその理由を考えた。


「……焦土戦法か? それともこちらの兵糧を減らす為に?」


「いえ、それもあるでしょうがおそらくは盾にする為かと」


「盾?」


「ドウゲンが良く使う戦法です。捕えた人質を盾にして進ませる事で相手側の攻撃を止めさせたところを本隊で人質ごと踏み潰す……あの男は相手の戦意を挫いたり士気を下げる手腕は異様に上手い」


「……骸将、か」

        

 ライゴウの話を聞いて改めてドウゲンがどんな奴かを認識する。シオンは戦い方を選んでむやみやたらに村を襲撃などしなかったがドウゲンは手段を選びなどしない。


 後の事を考えれば禍根や被害が残るのは避けなければならないがドウゲンは気にもせず骸を積み上げる……骸将とは良く言ったものだ。


「厄介だな」


 この手の奴は文字通りどんな手段も使ってくる。そこに圧倒的な数の力を持たせればこっちの考えの外を突いた方法を使ってきても不思議ではない。


 この男は今回の戦でなんとしても倒しておかなければならない。そんな気がした……。


「ひとまずは奴等が人質を使ってきた時の対処からだな」


 その後もフドウやヒルコから得た情報を元に軍議を進めていく。具体的な方針が決まった頃には日付は既に変わっていた。







―――――


(アメリside)


 月夜が照らす中、城の近くにある林で刀を強く握り締める。息を吐いて脱力すると呼吸を整えて刀を構えた。


「ふぅ……ふっ!」


 呼気と共に鞘から刀を抜く。振るった刀は自分の胴と同じ太さの木を斬り裂いた直後に鞘に納める。


 それを何度も繰り返し刃が風を切る音と鞘に納める音がその場に響く。いつもはこれを繰り返すと心が落ち着くのにまだ荒立っているのが分かる。


“それがクノウの教えか?”


 ……分かっている。父様が今の私を見たらどう思うか、どんな言葉を掛けるかなんて。


 それでも……。


「ドウゲン、お前だけは……!」


 この荒れ狂う心を静める事は出来なかった……。

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