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75:骸将(オヅマside)


 ベルクがヒジマの里に向かう数日前……。


 天堂城にてムドウが宙に印を描く。赤黒い光が尾を引いて禍々しい瘴気が現れると一体の黄泉兵に向かった。


 黄泉兵に瘴気が入り込んでいくとその姿が変わっていく。瘴気を取り込んだ黄泉兵は強大な体に血肉から造られたと見紛うおぞましい鎧を纏った戦士となって片膝をついていた。


「行け」


 ムドウの言葉に黄泉兵は従って暗闇へと消えていく。再び術を使おうとしたところで足音に気付き動きを止め振り返らず口を開いた。


「何の用だ」


「おいおいつれないじゃないの? いつも無表情無感動なアンタがそんなに苛立ってるなんて珍しくてつい見ちまうんだって」


 ムドウに馴れ馴れしく話すのは紫色の鎧に身を包んだ長身の男だった。鍛えているのは分かるが長身と相まって線が細い印象を抱かせる。


 だが見る者が見ればその立ち振舞いと腰に差した禍々しい刀が只者ではないと気付くだろう。


「私は黄泉兵の召喚と強化で忙しい。貴様と遊んでいる暇はないぞ、ドウゲン」


「いつにも増してつれねえなー、そんなにあのベルクってガキを殺してえの?」


 男……ドウゲンの言葉にムドウが動きを止める。ドウゲンはニタリと笑いながら聞き続けた。


「シオンのおっさんが死んでからだよなぁ? アンタが不機嫌になったのって? 自分の思うようにいかなくて苛ついてる?


……それともあのガキがアンタがたまに言ってるカミシロとやらに関係あんの……かと!?」


 ドウゲンが後ろに下がった直後に炎の柱が現れる。ドウゲンが顔を上げるとムドウが見た者の魂を凍てつかせるような眼で捉えていた。


「余計な言動で私を苛つかせるな。貴様をこの場で始末してやろうか?」


「へえ……? それも面白そうだな?」


 一触即発を表すかのような空気が二人の間を満たしていく。だがムドウは冷気のごとき殺気を消すと踵を返した。


「あと数日で準備が終わる。貴様には三万の兵を与えるから準備が整い次第ゴモンに侵攻しろ」


「……そりゃ大盤振る舞いだな。好きにして良いのかい?」


「皆殺しにしろ。後は好きにして構わん」


 ムドウは感情の込もらない声で告げると奥へと姿を消す。ドウゲンはそれを見送ると反対の方へと歩きだしながら呟いた。


「やれやれ……あのおっさん何を考えてるのかねえ? まあ、どうでもいいか」


 ドウゲンは浮かんだ疑問を頭の片隅に追いやると笑みを浮かべる。それは寒気を感じさせる嗜虐的な笑みだった。


「ゴモンの奴等、仇の俺が来るって知ったらどんな面するんだろうな」


 ドウゲン=グロウ、最高にして最強の武人と謳われたシオンに対し、その残虐にして冷酷な戦い方から最悪にして最狂の骸将と呼ばれる男である。

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― 新着の感想 ―
[一言] フレイザードやデスマスク等様な勝つ事だけを考えている卑劣漢ですね
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