表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
280/367

73:求める理由


「カカカカ、意表を突かれて思わずバラけてしまったわい」


 八雷神は浮き上がりながら話し出す。戦う意思はなくなったようで俺も拳を下ろして向き合った。


「見事、実に見事じゃ、我等が雷を超えるどころか一撃を喰らわされたとあっては認めざるを得まい」


「なら……」


「うむ、じゃがひとつだけ問わせてもらおうか」


 八雷神はそう言うと俺を向き直る。眼窩に宿る鬼火が俺を試すように揺らめいた。


「何故力を求める? それだけの力を宿しながら更なる力を求めて何を成そうとしている? 世界を統べる覇者にでもなろうと言うのか?」


 八雷神の問いに俺は一瞬だけ沈黙する。自分の心臓に手を当てながら意を決して言葉を紡いだ。


「確かに俺は強くなった。世界を敵に回しても勝てる算段を立てれるくらいにはな……だけどそれで満足して立ち止まる訳にはいかない」


「……」


「今の強さに満足してもう充分だなんて言えるほど俺はまだ生きていない。俺より強い奴なんていないなんて言えるほど俺は全てを知ってる訳じゃない」


 自分の中にある想いを言葉にする。八雷神だけでなくセレナ達も結界を解除して聞き入っていた。


「今の強さに満足して立ち止まったら……俺より強い奴が現れた時にどうなる? 俺がこれまで手に入れてきたものも、得てきた大切な繋がりもなくなってしまうかも知れないのに立ち止まって驕る馬鹿にはなりたくない」


 なによりも……。


「託されたものを、譲れないものを貫き通す道を他でもない自分で選んだ。それには力も強さもどれだけあっても足らないものなんだよ」


 俺は死ぬまでその道を歩き続ける。憧れに別れを告げたあの日にそう誓ったから……。


「クク……やはり違うな」


 俺の答えを聞いた八雷神は笑いながらそう告げる。そして一斉に笑い声が響いた。


「カカカカ! 世界を滅ぼせるだけの力を得てまだ足りないと言うか!? なんという強欲! 己の大切なものを護れるだけの力があれば良いと言っていたタケトとはまるで違うのう!」


「そうじゃそうじゃ! あやつと比べれば利己的で欲望に忠実じゃな!」


「だがそれが良い! 誰かの為になど上辺だけの綺麗事を吐く阿呆よりはずっと良いわ!」


「お主の欲の果て! お主の道の道中は面白そうじゃのう!」


 八雷神は再びひとつとなって目の前に立つ。鬼面の口を吊り上げさも楽しみだと言わんばかりに告げた。


「良いじゃろう! 我等八雷神、お主に使われてやろうではないか!」


 言うや否や八雷神の身体は一条の雷となって石に突き刺さった小刀に向かう。刀身に吸い込まれる様に入ると雷光と共に小刀が剣へと姿を変えていく。


 姿を変えた剣が飛んできて思わず掴みとる。それは軸となる剣身に枝のような刃が七つついた……七支刀に似た異形の剣だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ