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28:狭量


案内された部屋で準備しているとアリアが訪ねてきた。


「どうした?」


「ごめんなさい、まさかこんな事になるなんて…」


「ああ…気にするな、それにこの状況は俺のせいだからな」


「…やっぱりあれに怒ってる?」


アリアが言っているのはフルドの事だろう、あの状況を見ていれば当然と言えるが。


「まあな」


「はぁ…一年前から本当に変わってない」


アリアが頭を抑えながら項垂れる、その様子からしてアリアが家出する前からあの性格だったようだ。


「あれはどういう奴なんだ?」


「フルドは帝国に長く仕えてる騎士の家系よ、何代か前が称号を与えられたらしくてそれなりに影響力がある家なの」


「強いのか?」


「騎士の中ではそれなりに…って感じかしら、弱くはないけど副将になれたのも半分くらいは家の力だと思うわ」


アリアの言う事に頷く、確かに立ち姿からそれなりに強くはあるがボルガや他の称号を持つ騎士には届いてないと感じた。


「それに何度も婚約を申し込んできたりしたのよね、全部断ったけど」


「あれがか?」


「私こんなでも皇族だからね、地固めの為にってのが丸分かりだったわ」


「…そうか」


あの男が向けてきた眼には俺への嫌悪だけでなく別のものもある様に見えたが…まぁ、やる事は変わらない。


「もう行っても大丈夫なのか?」


「ええ、案内するわ…あ、ちょっと待って」


立ち上がって部屋を出ようとした所で振り返ると口に柔らかい感触が重なる、少しして顔を赤くしたアリアが一歩離れてこちらを見上げた。


「心配はしてないけど、おまじない…」


アリアはそう言って部屋を出ていき一瞬だけ遅れて後をついていく、口に残った感触に我ながら単純だなと思うと自然と口角が上がった。











―――――


案内された場所は普段は騎士達の鍛練場として使われているという場所だった、御前試合等にも使われるからか闘技場の様な造りで四方を囲む壁の上は観客席が作られていて席は既に玉座の間にいた者達を含めて多くの騎士達で埋まっていた。


闘技場の中央には斧槍(ハルバード)を手に全身鎧を纏ったフルドが立っており、鋭い眼でこちらを睨んでいた。


「今回は逃げずに来たか、恥知らずめ」


敵意と悪意を込めた罵倒が投げ掛けられる、もはや隠す気はない様だった。


「貴様の思惑通りに行くとは思わん事だ、この場には陛下を始め称号騎士達がいるのだ、貴様がどんな卑怯な手段を持とうと使えると思うな」


「…」


「アルセリア様は貴様の様な者が傍にいて良い方ではない、この場で貴様を叩き潰してアルセリア様の目を覚まさしてくれる」


あぁ、やはりそういう事か。


こいつはアリアに惚れているのだろう、何度も求婚するほど欲していた女の横に別の男がいるのが気に食わなかった。


玉座の間で向けてきたのは嫌悪だけでなくアリアと共にいた俺への嫉妬もあった訳だ。


「双方、準備は良いか」


皇帝の声が響き渡る、ざわめいていた観客席もピタリと静かになった。


「今回の戦いにおいては各々が持つ武具を使え、勝敗に関しては片方が降参、又は戦う事が不可能な状態になったら負けだ…異論はあるか?」


「「ありません」」


「良し、では…はじめよ」


皇帝が合図を出す、互いに武器を相手に向けて構えた瞬間にフルドは駆け出して斧槍を振りかぶる、そして真上から斧槍を振り下ろしてきた。


「おおおおおおっ!」


曲がりなりにも騎士だけあって鍛えているのが分かる動きだ、が…。


黒剣で振り下ろしてきた斧槍の穂先を横から叩いて弾く、そのまま勢いを殺さずに身体を回転させて体勢を崩したフルドの兜に回し蹴りを叩き込んだ。


「ごがぁっっ!!?」


留め金が壊れ外れた兜が転がる音を響かせながらフルドが倒れる、地面に手を付いて立ち上がろうとするのを見下ろしながらフルドにだけ聞こえる様に呟く。


「悪いが俺は思った以上に狭量だったみたいでな…お前が俺に言った事を水に流す事は出来そうにない」


何が起きたかを上手く理解できないままこちらを見上げるフルドに冷たい声で告げた。


「立てよ、完膚なきまで叩き潰してやる」


歯を食い縛ったフルドはすぐさま立ち上がって斧槍を振るってきた…。

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― 新着の感想 ―
[一言] >弱くはないけど副将になれたのも半分くらいは家の力だと思うわ 実力最重視な地位にコネ優先するとねぇ 雑魚では無いから一応面目保てるけどいざとなると、というか現在進行系で国の面目潰してるな
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