68:神降ろしの一族
「カミシロ?」
俺がそう聞くとヒノワは頷きながらも話してくれた。
「カミシロの一族はゴモンやヒジマに分かれる前の時代に存在したとされる術師の一族です。ある者はその身に神を宿すほど強靭な肉体を持ち、またある者は与えた名に力を宿すといった特殊な能力を生まれ持つ者がいたそうですが代を重ねるに連れて衰退したと……」
「与えた名に力を……」
思い出すのは闇の中で見た母さんの記憶だった。俺が無事に生まれるようにと願いを込めて名前をくれた事で俺は特殊な体質となった。
そして俺の魔力に反応して開いた岩戸、親父から聞いた話をまとめればその答えが自ずと出た。
「……母さんはカミシロの一族で俺にもその血が流れているのか?」
「信じがたい事ですがそう考えると辻褄が合います。それにベルクさんの御母様の力を考えますと先祖返りによってカミシロの血が強く顕れていたかも知れません」
「先祖返り……」
「はい、それほどの方が命と引き換えになるほどの呪いを与えて生まれたベルクさんにもカミシロの血が顕れてるのだと思います」
話を聞き終わると思わず眩暈がする。まさかこんなところで母さんのルーツを知ることになったのもそうだが自分の中にヒヅチの古い血があると考えると様々な思いが浮かんでくる。
(というかもしかしなくても俺とヒノワ達は遠縁の親戚になるのか!?)
知らなかったとは言え親戚の子を抱くとか色々とアウトではないかという考えが浮かび今はもっと重要な事があるだろと浮かんでは消える。
自分が混乱してるというのが嫌でも分かる。深呼吸してひとまず頭を落ち着かせると全員を見ながら提案した。
「ひとまず今日はここまでにしよう。この後は上に戻っえ野営の準備を終おら休んで詳しい調査は明日にしよう」
俺の言葉に反対する者は居らず再び階段を登って外に出ると陽が沈みかけており、岩戸の前で急いで野営の準備を終わらせた。
気を使われている先に休んでくれというお言葉に甘えて横になる。だが中々眠気が来ないので珍しくボーッと手を眺めながら横になっていた。
「神を降ろす一族……か」
なんとなしに呟いた一言に改めて自分がとんでもない事の渦中にいるのだと感じる。これが偶然なのか、それとも必然だったのかと自分でも珍しい事を考えていたら自然と瞼が重くなっていった……。