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27:土足


フルドの言葉に皇帝と称号を持つ騎士を除いてどよめきが起きる、どよめきが収まるのも待たずにフルドは言葉を続けた。


「貴様の悪評はこの国にまで届いているぞ!兄のバドル=グラントスに全てを押しつけて逃げ出した無責任な男だとな!そんな者がアルセリア様を助けただけでなく皇器に匹敵するものを手にしているだと!?その様なみすぼらしい剣で良くそんな嘘を吐けたものだな!!」


「…私のくだらない噂はこの際置いておきますが」


心が急速に冷えていく、自分でも分かるくらい無機質な声で目の前の不快な存在に問いかけた。


「貴方はアルセリアの話を真っ向から否定するという事ですか?」


俺の問いにフルドが眉間の皺をより深めて睨んでくる。


「アルセリア様は優しいお方だ、大方その魔物と戦って追い詰めていたのを貴様が横取りしたのだろう!それをアルセリア様は加勢してくれたと思われたに違いない!」


フルドの言葉にアリアが思わず立ち上がろうとしたのを手で制した。


「…言いたい事はそれだけですか?」


「なに?」


「どちらにせよアルセリアの話を否定し、一方的に私を罵倒するのは終わりかと聞いています」


フルドが行った事を簡潔にまとめて言葉にすると言葉に詰まる気配が伝わる。


「ミルドレア帝国の騎士が皇帝陛下の話に割って入ってするのが招待した者への罵倒…騎士どころか人としてどうなのですか?」


「だ、黙れ!自国から逃げ出した恥知らずの貴様にそのような事を言われる筋合いはない!」


「ならば手本を見せて頂きたい、少なくとも今の貴方は自らの考えを押しつけて皇帝陛下の信を揺らがせている姿は見るに堪えない」


「き、貴様…!」


フルドが声を上げようとした瞬間、フルドの足下が空を斬る音と共に裂けた。


「黙るのは貴様だフルド」


皇帝の声が響く、先程のものなど比較にならない凄まじい圧が放ちながらフルドを見下ろしていた。


「この者を客人として迎えたのは余だ、その客人に対する貴様の態度はミルドレアの品位を落としている…すなわち余の顔に泥を塗るというのを理解した上での行いか?」


「し、しかし…」


「返答を間違えるなよ?それ次第では貴様の首と胴が別れる事になるぞ」


「で、出過ぎた言動をしてしまい申し訳ありません!」


フルドはその場でひれ伏して謝罪する、先ほどまで意気揚々としていたとは思えない姿だった。


「…貴様の処罰は追って下す、捕えろ」


他の騎士によってその場で拘束されたフルドは憎悪の篭った眼で睨みつけてくる、どうやら考えを改める気はないらしい。


(そっちがその気なら…)


「皇帝陛下、発言をしても良いでしょうか」


「許す、なんだ?」


「先ほどお話しました礼を今すぐに用意していただいてもよろしいでしょうか」


俺の言葉に皇帝がぴくりと眉を動かす、アリアが困惑した顔でこちらを見ているが構わず皇帝に目を向けた。


「…用意できるかは内容次第だ、申してみよ」


「はい、私とこの武器の力を証明する舞台を整えて頂きたく存じます」


「…舞台だと?」


俺の申し出が予想外だったのか一瞬だけ沈黙した皇帝はすぐに無言で続きを促す。


「どれだけ言葉を重ねようと私の力と功績が偽りでないという証明にはなりません、ならば力を示す場を頂き真実だと証明した方が良いと具申いたします」


「なるほどな、ならば内容を決めねばならんが」


「先ほどの…あの騎士と私による一騎討ちはどうでしょうか?この大勢の前であれだけの啖呵を切れるのだからその腕前も相当なものでは?」


「ふむ…ではフルド、この一騎討ちを受けよ、受けぬのならば余自ら貴様の首を落とすぞ」


「か、かしこまりました!一騎討ちを受けます!」


「では今より半刻(六十分)の時間を与える、双方はその間に一騎討ちの準備をせよ、他の者は場所の準備に取り掛かれ」


皇帝の発言に「はっ!」と応えて周囲にいた者達が部屋から出ていく、俺は騎士の一人に準備の為の部屋へと案内された…。

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