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54:コンマの攻防(シオンside)


(シオンside)


巨大な刃を手にするベルクから天を染めるのではないかと思えるほどの闇が溢れ出す。


久しく感じていなかった死の気配に背筋が震える、俺の半生を生きたかどうかという若者がこれほどまでの強さを手にするなどどれだけ過酷で濃密な時を過ごしてきたのか……。


掲げた雷顎焔嘴の力を極限まで高める、力の全てを溢れる事なく刃に宿し凝縮していく。


双極閃(そうきょくせん)”、極限まで高めた雷火の力を宿した刃を振り下ろすだけの奥義というには単純明快な技だ。


だが全てを焼き斬るふたつの灼刃を雷の速さで振るうこの技は防御も回避も許さない、例え一振を凌いだとしても続けて振るわれる二の刃が確実に相手を斬る。


俺が放てる最強の技を以てベルクの一撃を防ぎ次の手を許さずに切り捨てる、あの剣が如何なる威力を持とうと捌いてみせる。


ベルクが抜刀術の様な構えを取りながら闇を凝縮していく、時間の流れが遅くなった様な感覚の中でベルクは漆黒の雷の如く迫った。


(まだだ……)


奴の剣の間合いに入った瞬間に俺も踏み込んで奴の一撃を防ぐ、瞬きの間に奴はそこに到達するだろう。


(まだ……)


全身の闇を焔の如く揺らめかせながら迫るベルクを捉える、あと一歩で剣の間合いに入る。


(今だ!)


剣の間合いに入ったと同時に俺も踏み出す、そして右の焔嘴を振り下ろし……。
















闇が弾けた。


「っ!?」


闇が爆風と共に周囲に拡散する、爆風は俺に襲い掛かり振り下ろそうとしていた腕を止めた。


(くっ!? だが!)


不意を突かれたが位置は分かる、右腕に力を込めて爆風を押し退けると焔嘴を振り下ろした。


「竜装展開」


だが爆風によって生じた隙、本来は一言すら許されぬ速さで振るわれる刃が振るえなかった事で生まれた空白はその言葉を発するには充分だった。


「“生命の到達点(ハイエンド)”」


闇を突き破って白亜の鎧を纏ったベルクが姿を現す、振り下ろされた焔嘴が奴に迫るが奴が手にした刀がそれを超える速さで抜き放たれた。


俺の右腕が斬り落とされて焔嘴はあらぬ方へと飛んでいく、抜き放たれた白亜の刃は眩いばかりの光を宿していた。


(……まだだ!)


左手の雷顎を刀を抜き放った体勢のベルクに振るう、音を置き去りにする一閃は奴の胴を斬り裂かんと迫った。


だがベルクが手にしていた鞘が雷顎を握る手を叩き、打ち上げた。


(……読んでいたのか)


抜刀の勢いを止めず鞘を叩きつけて二の刃を防ぐ、普通のものならば勢いを止められず砕けていただろうが光を宿した白亜の鞘はそれを可能にした。


刀の刃がこちらを向く、俺は砕けた指に力を込めて雷顎を振るうと同時に雷火を吐こうと息を吸った。


だがそれよりも早く白亜に輝く刃が振り下ろされ、俺の心臓が寸分の狂いなく断ち斬られた。

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