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49:鉾を納めるには


「ようやく対等に話す事が出来るな」


「話す、だと?」


俺の言葉にシオンは怪訝な表情を浮かべる、互いに警戒を解かないまま俺は続けた。


「交渉がしたい、応じてくれるならセツラ……鬼の戦闘行動を止めよう」


「交渉だと?」


「帝国がゴモンに助力する理由、オヅマが使用している黄泉呪法の代償……それによって起こり得る厄災に関する情報を提供する。

仕切り直して戦うか手を取るかはその後で決めてもらいたい」


「応じると思っているのか?」


「応じれば今助かる兵がいる」


俺の言葉にシオンは一瞬黙る、だが息を吐いて顔を上げると言葉を紡いだ。


「ゼン、全軍に今すぐ戦闘を止める様に通達しろ」


「……承知しました」


法衣の男がすぐさま術を使って全軍に伝えていく、周囲の将兵達も武器を納めた。


(後はこの男を説得できれば……)


戦いの流れを一気に傾けられる、そんな事を考えながら俺達も武器を納めた。







―――――


互いの軍に分かれて向き合いながらシオン達と相対する。


こちらはアリア達にライゴウ、イルマが後ろに控え、シオンの後ろにはゼン、ヒルコ、フドウが控えた状況で交渉は始まった。


「成る程な」


俺の話を聞いたシオンは頷く、そして自らの意見を口にした。


「ベルク、お前の話には思い当たるところもある……以前からこちらで調べていた事とも一致している。つまりこの戦いはムドウの思惑の範疇であるという事だ」


「なら……」


「だが、それでもこの戦は決着をつけねばならん」


シオンはそう言って俺に向けて殺気を放ちながら告げた。


「我等は互いに血を流し過ぎた、命を奪い過ぎた……もはや俺と貴様どちらかの命がなくらなければ鉾を納める事は叶わぬ段階にまで来ている」


故に、と区切ってシオンは俺に告げた。


「俺と貴様の一騎討ちで決めようではないか、敗者の軍は勝者に従うという条件でな」


シオンの提案にこちらはおろか控えていた将達も驚愕を浮かべる、俺は僅かに悩んでから問いを投げた。


「……どうあっても手を取り合う事は出来ないか」


「此度の戦で俺は多くの兵を死なせた、その結果がこれまで信じていたものへの翻意となれば兵達は納得など出来ん」


俺を見ながらシオンは語る、まるで諭すかの様に。


「覚えておくが良い、将とは配下の兵の死を無意味にする事だけは決してしてはならない。それが命と引き換えになっても通さねばならない将の責であり、その責を全うする事からこそ兵も戦うのだ」


腰の双刀に触れながらシオンは漲る闘気を全身から放った。


「将とは命を懸けた思いには命を懸けて応えねばならんのだ」


「……分かった」


俺はそう言うとアリア達に手出しをしない様に告げて下がらせる。シオンもゼン達に先程の条件を告げて下がらせた。


小剣と手斧を出して構える、シオンも双刀を引き抜いて構えた。


戦場に風が吹く音だけが響き渡る、互いの視線が交差し、どちらからともなく動いた。


黒刃と白刃の打ち合う音が風の音を搔き消した。

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