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44:染まった手


目を覚ました少女はムクリと起きるとまだ半覚醒といった感じで辺りを見回すと俺の方……正確には作っていた飯の方を見た。


「……お腹空いた」







―――――


焚き火越しに少女は流し込む様に干し肉を入れ塩胡椒で整えた雑炊をかき込んでいく、鍋一杯に作っていた雑炊はみるみる内になくなって底が見え始めていた。


(明日の朝の分が……)


起きた時の事を考えて多めに作っていたが予想外の健啖ぶりだった。少女は鍋を空にすると一息ついた。


「……良く食べるな」


「転身してから何も食べてなかったから、ごちそうさまでした」


「転身?」


「大業物の力を体に宿して変身する方法、錆不離を手にしてからずっと使ってたと思う」


「……詳しく聞いても良いか?」


俺の問いに少女は頷くとぽつぽつと自身の身の上を話し始めた。


(とと)は術師だった、僕は父に拾われて十年くらいの時に錆不離を封じている事を教えてもらった」


「封じていた?」


「父は錆不離の前の使い手を呪力と片腕と引き換えに倒した、それから霊地で錆不離を封印して宿る魂達を鎮め浄化しようとしてた」


「お前の父親はかなりの腕前みたいだな……だが状況からしてその封印が解けたという事か?」


俺が聞くと少女は口を引き結ぶ、だがすぐに意を決した様に話し始めた。


「父と一緒に稽古してた時に嫌な風と一緒に封印が壊れる音がした。父と一緒に封印した祠を見に行ったら錆不離から出た黒い影が僕を覆った」


「……」


「気が付いたら錆不離を握ってて……父を貫いてた」


少女の頬を雫が伝う、自身の手で父親を殺めたという罪の意識が涙となって。


「父は死ぬ前に言ってた、封印が解けたのは誰かが黄泉の門を開けたからからだって……これは僕のせいじゃないって……そう言って父が死んだら僕は錆不離に呑まれてた。」


少女は嗚咽と共に涙を流す、俺には掛ける言葉も見つからず顔を伏せる少女の背を撫でてやる事しか出来なかった。


「……ねえ」


少女はひとしきり泣き終えると赤く腫れた眼で俺を見た。


「誰が黄泉の門を開けたか分かる?」


「……ああ」


少女は立ち上がって錆不離を手に取る、巨大な刃を手にした少女はじっと刃を見て一言告げた。


「錆不離に魂を戻して」


「……大丈夫なのか?」


少女は無言で頷き肯定を示す、俺は吸収した魂を錆不離に戻すと刃に荒ぶる力が戻った。


「僕は負けた、だから言う事は聞く」


でも、と付け加えて少女は俺を見上げた。


「黄泉の門を開けた奴を倒したい、それが出来るなら僕が立ち塞がる全てを壊す、僕の持ってる全てをあげても良い……だから」


少女が言い終わる前に頭に手を置く、そして眼を合わせながら伝えた。


「約束する……だから、力を貸してくれ」


俺の言葉に少女は頷いた。


「そういえば名前を聞いてなかったな、俺はベルクだ」


「僕はセツラ、歳は十八くらいだって父が言ってた」


「……同い年なのか」


何はともあれ鬼……セツラを味方には出来た様だ。

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