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25:ミルドレアの三姉妹


用意された馬車に乗り込んで座席に座る、隣にアリアが座り緋色の騎士が向かいに座ると馬車のドアが閉まって出発した。


魔術によって速度を高めているのに内部の広さ揺れをほとんど感じないのは馬車自体に高度な魔術が付与されてるのだと分かった。


「アリア、“獅子”というのはやはりレアドロップの隠語なのか?」


「うん、一応国家機密に類する事だから外では“獅子”って呼んでるの」


「“獅子”の隠語を知っているのは皇族と重鎮、そして我等ぐらいです」


緋色の騎士はアリアの説明を補填する様に言葉を発する、緋色の騎士の方へ向き直ると彼は兜を外してこちらを見た。


「ひとまずは自己紹介をさせて頂く、私はボルガ=フレメイル、先代皇帝陛下より“灼刃(しゃくじん)騎士(きし)”の称号を与えられております」


皺と傷が刻まれた壮年だが威厳ある顔をしたボルガが頭を下げる、応える為に向き直って胸に手を当てながら頭を下げる。


「名乗りもせず失礼しました、冒険者のベルクと申します、かの高名な灼刃騎士ボルガ卿に会えて光栄です」


ミルドレア帝国において称号を与えられた騎士は帝国に多大な貢献や功績を認められた者を示し今は五人のみだと聞く、なかでもボルガと言えば長年に渡って帝国内の魔物や盗賊の討伐し続けた武勇を知られた騎士だ。


帝国騎士団の最古参にして第一騎士団団長、老いれどその技倆は曇りなしと謳われている。


「ベルク殿…ですな、この度は城へ同行して頂き感謝する、そしてアルセリア様が話してる以上必要はないと思いますが今の話は内密にして頂きたい」


「分かりました、決して他言しないと約束します」


俺の答えにボルガは顎髭を撫でながら思案するがすぐに顔を上げて頷いた。


「その言葉を信じよう…最もアルセリア様はベルク殿を信頼されているご様子、要らぬ心配だったかも知れませぬな」


「ちょっ、ボルガ!?」


「お許しを、あのアルセリア様がここまで信を置いてる所を見れば軽口のひとつも言いたくなるものです」


ボルガが破顔しながら言えばアリアが顔を赤くして猫の様に唸る、そのやりとりはまるで祖父と孫の様だった。


「…なんだか家族の様ですね」


「おや、そう見えますかな?アルセリア様を始め姫様達は赤ん坊の頃から知っておりますからな、剣の手解き等も少々…」


「稽古凄い厳しかったけどね」


どこか拗ねた様子でアリアが付け足す、あまり掘り下げると更に拗ねてしまいそうなので気になっていた事を聞く事にした。


「姫様達…とは先程の魔術で話した人が?」


「ええ、フィルネリア第二皇女…我が国の宮廷魔術師にして一流の魔道具職人であられる、そして…」


ボルガはアリアをちらりと見ながら告げた。


「ヴィクトリア皇帝陛下、これからベルク殿が謁見するお方こそお二人の姉君なのです」










―――――


馬車が止まって降りると巨大かつ堅固な城壁に囲まれたミルドレア城が眼に映る、ボルガと別れるとまずは互いに服を着替えさせられた。


俺は一般的な礼服だったがアリアは赤を基調としたドレスだった、黒い手袋も相まって彼女の金髪が良く映えている。


「似合ってるな」


「あはは、これでも皇女だからね」


騎士に案内されながら城の中を案内されると城内で魔道具越しに会話した女性が手を振っていた。


「アリアちゃーん、さっきぶりだねー」


顔立ちはアリアに似てるがアリアよりも線が細く髪は肩口で切り揃えており、アリアが快活な雰囲気なのに対してこちらは柔和な雰囲気を漂わせていた。


「いやー大きくなったねー色々と」


「えっと…ただいまフィリア姉さん」


「うんうん、お帰りなさい…それと君が“獅子”を持ってる子かー」


フィルネリアがひとしきりアリアを撫でるとこちらに目を向ける、観察する様な視線をしていたがすぐに途切れさせて柔和な笑みを浮かべた。


「まあ積もる話は後にねー、お姉ちゃ…皇帝陛下も準備終えてる頃だと思うよー」


間延びした声で告げられた内容に多少の緊張が生まれる、先導されて着いたのは一際大きく装飾が施された扉の前だった。


「アルセリア第三王女、並びに白銀級冒険者ベルクをお連れしました」


「入れ」


扉が開くと中に入る様に促される、部屋の中は赤を基調として豪奢に整えられており、奥から五色の異なる鎧を纏った騎士達を先頭にして配下であろう騎士と文官が並んでいた。


一番奥で深紅の皇衣を纏い、玉座に頬杖をつきながら座る女性の傍らには武骨な大剣が立て掛けられていた…。

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