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39:鬼


鬼を撒いて東谷城まで戻りアリア達と合流する、すぐに主だった者達を集めて話を始めた。


「皆、ひとまずはご苦労だった。だがオヅマはさして間を置かずに攻めてくるだろう……対策を立てる為にも聞きたいが鬼とはなんだ?」


鬼とはヒヅチに出現するオーガの類だと思っていたが俺に襲い掛かったのは魔物には見えなかった。するとヒノワはゆっくりと答えた。


「鬼とはヒヅチに存在したとされる伝説の種族です、多様な肌の色に角を持ち、怪力を有する獰猛な者達だったと云われています」


ですが、と前置きをしてからヒノワは続けた。


「鬼族は遥か昔に滅んだのです……此度の戦場に現れたのはとある剣を手にして鬼と呼ばれるに到った者の事を指します」


「鬼に到った者……」


俺の呟きが部屋の中に消えていく、ヒノワは静かに体を震わせながらその正体を話した。


「かの者が持つのは殲剣“錆不離(さびはなれず)”……大業物の一振であり、使い手を鬼に変え死ぬまで戦わせ続けるとされています」







―――――


曰く、その剣は一人の刀匠が最後に造った一振だとされる。


その刀匠は武器の殺傷力を高める事だけを考えた、命を奪う事こそ武器の最大の意味だと捉えてひたすらに試行錯誤を繰り返しては刀だけに留まらず様々な武器を造っていった。


そして刀匠は造り上げた、剣の如く斬り、斧の如く叩き、槌の如く潰し、槍の如く貫き、鉤の如く引き落とし、どれだけ振るおうと敵を滅ぼすまで壊れない大きく重い一振を……。


おおよそ人に振るえるとは思えないその大剣に名を付ける前に刀匠は死んだ、大剣は振るえる豪傑の手に渡っていき手にした者全てが闘争の中で果てていった。


大剣を手にした者の生涯は血と闘争しか残らなかった。刃が血と脂で汚れようと落とす間もなく次の戦いが起こり、錆が大剣を覆っても戦が途切れる事はなかった。


いつしか大剣には名が付けられた、手にした者は錆を落とす事も出来ないほど戦い続けなければならない修羅の道に堕とす剣。


錆不離(さびはなれず)、と……。







―――――


「錆不離を持つ者は戦場に現れては両軍の兵を皆殺しにしたそうです……ですが十年前に姿を消してから一切現れなくなり、おそらく人知れず死んだのだろうと云われたのです」


「それが生きていたと……」


「私も死んだという話を鵜呑みにしていました。申し訳ありません……」


謝るヒノワに気にするなと返しながら考える、今回の戦で得た情報から次に勝つ為に。


……アリアやラクルの動きを止められる者が向こうにはいる、更には敵の兵は未だに数で勝り練度も高い、真正面からぶつかればこちらの被害が大きくなるのは明白だった。


更に総大将のシオンはかなりの実力者だ、これまで会ってきた中では一番ロウドに近いと断言できる。


そして鬼と呼ばれるあの子供……。


「……それだ」


頭の中で過った閃きに思わず立ち上がる、全員の視線がこちらに向くのも構わずイルマに聞いた。


「イルマ、向こうが軍を再編するのにどれくらい掛かるか分かるか?」


「む? ……あの規模なら通常なら五日は掛かるだろうがシオン殿ならば三日で終えると思うが」


「ライゴウ殿、こちらの軍はどうです?」


「正確な数は申せませんが……城の兵を合わせれば戦えるのは四千といったところですな」


「なら……急ぐ必要があるか」


「何をする気なの?」


アリアの問いに俺は思いついた案を話した。


「奴等が来る前に鬼をこっちに引き込む」

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