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36:劣勢


(アリアside)


「はっ!」


高速で放たれる水蛇を掻い潜ってルスクディーテを真一文字に払う、ヒルコは地面を滑る様に下がって避けると再び水蛇を放ってきた。


水蛇は曲線を描き大気を貫いて迫る、周囲の焔を貫くそれは防御しなければ体に穴が開くであろう威力を有していた。


(この男……)


派手な事や技は一切しないが無視は出来ない、のらりくらりと攻撃を避けられるがかといって大技を放とうとすればその隙を間違いなく突かれるという確信がある。


戦いが強いのではなく()()、これまで会ってきた事のない相手と戦い方だった。


「君の剣は神器だろ? 凄いねえ……若いのに一騎当千の力もそれを使いこなす君も大したものだよ」


ヒルコは気だるげな声でそう告げた。


「この業物……“蛟”は水を操れるけど君の剣の様に何百何千を相手取れる様な力はない、私自身もシオン様みたいな火力やフドウの剛剣みたいなものもない、言ってしまえば私は弱い駒だ」


矛を構えながらヒルコは話す、やはりこれまでの様に進んで攻めようとはしない。


「だからね……倒せなくとも君みたいな強い駒を抑えられれば、私には充分な戦果なんだよ」








―――――


(ラクルside)


「ぬん!」


「ふっ!」


振り下ろしたザンマをフドウは剣で受け止める、重量を増加させた一撃と拮抗されるが互いに距離を取ると左右の土砂を操作して土壁にしながら挟み込む。


「かぁっ!」


フドウが剣を振るうと土壁が崩れ落ちる、その隙に距離を詰めてザンマを振り下ろした。


フドウが片腕を出して籠手でザンマを受ける、腕の籠手ごと斬り落とそうとした瞬間に僅かな動きと動作だけで受け流された。


ザンマを振り下ろした体勢の状態で剣が迫る、刃に宿る何かを感じ取って自分の重さを極限まで軽くして自分から吹き飛ばされる様にして避ける。


体勢を直して再びフドウと相対する、フドウも再び剣を構えてこちらを見据えた。


「……ただの剣ではないな」


「然り、“金剛夜叉”は業物の一振……魔を断ち邪を祓う明王の利剣だ」


フドウの言葉で魔術が無力化された理由を理解する、あの剣はおそらく魔術の類を斬る事で無効化する力があるのだろう。


更に先程のザンマを受け流した技術、相手の攻撃を見極める眼と力の流れを最小の動作で逸らす技はフドウの戦士としての実力と経験してきた戦場の数を物語っていた。


「ラクル、貴様は強い……だが」


フドウはそう言いながら低く跳んで迫る。


「場数が足りん」








―――――


(ベルクside)


(アリア達が止められたか)


左右で起きる焔と土煙を見ながら歯噛みする、可能性として考えてはいたがやはりシオンの配下には業物の使い手がいたという事だろう。


だが左右で起きた事がきっかけで後方の術師達の注意が弛んだ、今なら全力で飛べば本陣まで突っ切れる。


「お前の相手は俺だ」


そう考えて翼を展開しようとした瞬間に上空から炎雷を宿した刃が襲い掛かる。咄嗟に後ろに跳ぶとさっきまで立っていた場所が十字に断たれた。


目の前に一人の男が降り立つ、兵達よりも更に頑強で金の意匠が施された鎧を纏い双刀を手にした男の眼は闘争で輝いていた。


「こうして話すのは初めて故に名乗らせてもらおう……俺はシオン=フワ、此度の総大将を務めるものだ」


「……ベルク=リーシュ=ミルドレア、故あってゴモンに助力している」


俺の名を聞いてシオンは笑みを深める、炎雷を宿した双刀を構えながら話し始めた。


「お前の狙いは分かっているとも……全軍に告ぐ!俺がどうなろうとゴモン軍を追撃せよ!」


シオンがそう叫ぶと周囲の兵が実行しようとする者と伝令の者に別れて動く、伝令を止めようとするがシオンが斬り掛かってきた事で止められる。


「ゴモンは兵も物資も余裕がある訳ではない、対してオヅマ(こちら)は軍を立て直して再度戦える……つまりお前達が勝つには俺という総大将(あたま)を短期決戦で潰さなければならん」


シオンは鍔迫り合いとなりながら語り掛けてくる、俺を見定める様な眼で見ながら語ってきた。


「しかし、お前がどれだけ強かろうと……兵達がなければゴモンは戦えんな?」


「アンタは……」


こちらの意図は読まれているらしい、俺は短期決戦を仕掛けて被害を極力減らし、次の戦で戦える最低限の戦力を残そうとしていた。


シオンはそれを見据えて兵達を減らす方を選んだ、例えこの場でシオンを倒せたとしても軍が壊滅すれば負け戦だ。


(やるしかないか……)


身体強化を全開にしてシオンを弾き飛ばすとゴモン軍を攻撃しようとすれオヅマ軍を止める為に軍勢を喚んで……。
























「強い奴、見―つけた」


場違いとすら思える声音と共に進んでいたオヅマの兵がふき飛んだ。

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